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2017.04.04

京都の観月の名所といえばここ!多くの歌が詠まれた広沢池で雅なる風情を堪能

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観月の名所で王朝人に思いを馳せる

-文/和樂スタッフ渡辺倫明(通称、和樂の日本美術部長。白洲正子、伊藤若冲の記事は毎回担当)-

「やどしもつ 月の光の大沢は いかにいつとも広沢の池」

この西行法師による歌に代表されるように、平安時代には観月の名所として多くの歌が詠まれた広沢池。日本最古の林泉とされる大覚寺の名勝・大沢池の東側に位置するこの池は、日本三池のひとつにも数えられ、周囲約1.3㎞ほどの灌漑(かんがい)用の溜池として989(永祚元)年に宇多天皇の孫、寛朝僧正(かんちょうそうじょう)が開削したものだ。

寛朝が遍照寺(へんじょうじ)を建立した際につくられたこともあり、遍照寺池とも呼ばれている。訪れてみればよくわかるが、別名「嵯峨富士」と呼ばれる遍照寺山を映し出す水面の長閑な風景は、これぞ平安雅の景勝地と呼ぶべき雰囲気に溢れており、郷愁を誘う。
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随筆家・白洲正子さんは、京都を訪れるとほぼ決まってこの池の畔を訪れては、池の南東にある「池の茶屋」で茶を喫していたことが懐かしく思い出される。かくいう私も、白洲さんのお供としてドライバー役を仰せつかった際には、よくご一緒したものだ。夏には、この茶店でかき氷を所望し、御歳80を超えているというのに、かき氷のお代わりをされる白洲さんを見て驚愕したことが、昨日のことのように思えて感慨深い。

池の北西には御宇多(ごうだ)天皇の陵があり、池からの散策路も失われつつある嵯峨の古の風情が色濃く残るので、訪れることをおすすめしたい。

広沢池(ひろさわのいけ)

住所/京都市右京区嵯峨広沢町 地図
市バス「山越」より徒歩約6分

私有地ではないので見学自由。夏なら空全体がピンクになる明け方と、雲も水面も藍に染まる日没後の景が格別。