しびれる辛みがくせになる!恵比寿「マサズキッチン」の冷やし担々麺の作り方

しびれる辛みがくせになる!恵比寿「マサズキッチン」の冷やし担々麺の作り方

目次

麻味と辣味の合わせ技で、しびれるうまさをつくりだす

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夏になれば思い出す、冷たい麺ののどごしのよさ。こくのある胡麻だれにピリリと辛いアクセントが効いて、さわやかな涼風にも似た食べ物、それが冷やし担々麺です。日本の夏にはかかせないものになっています。舌がしびれる辛み『麻』と汗の出る辛み『辣』が混然一体となった味を、恵比寿の人気店『マサズキッチン』で教わりました。

中国にはない冷やした担々麺、これは日本の発明です

「冷たい担々麺って、中国にはないですよ」と、東京・恵比寿にある『マサズキッチン』のご主人鯰江真仁(なまずえまさひと)さんはまず言いました。「そもそも中国では、体に悪いといって冷たい食べ物を食べないですからね。いまだにビールがあまり冷えていないのは、そのせいかもしれません」
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『マサズキッチン』はオープンキッチンのモダンな内装で、東京中華とでも呼びたい洗練された味わいの料理を提供する店。ここでは、例年暑くなってくると、冷やし担々麺の注文が増えます。たっぷりと入った胡麻だれスープと肉味噌が特徴のシンプルな麺です。

本家本元の担々麺が生まれたのは中国四川省の成都市といわれています。担いで売られていたのでこの名前がつきました。麺を肉味噌で和える汁なし麺が本来のかたちですが、うどんのように汁のある麺や、そばのように汁につける麺に慣れている日本では、汁のない麺になじみがあまりありません。そのため、担々麺も汁のあるタイプのものが広まりました。
スクリーンショット 2017-07-07 11.39.45麺をごしごし洗って、ぬめりを取るのがコツ

「四川って、すごく湿気の多い所なんです。山椒のしびれる辛さはすっきりしますし、唐辛子の辛さで汗を出すと、そのあと涼しく感じる」一方、冷やし担々麺は、日出ずる冷やし中華の国・日本生まれ。冷やし担々麺の先祖とでもいうべき冷やし中華も、中華という名前はあれど日本生まれです。ハムや錦糸卵、きゅうりと、具がにぎやかにのって、甘酸っぱいたれで食べる冷やし中華に対して、冷やし担々麺の辛さは、大人のものに思えます。

「やはり日本人は汁麺が好きなんですよ。冷やし担々麺は、冷やし中華に飽きた人に何を出すかということで始まったものだと思います」

冷やし担々麺にのっている具は、ひき肉と胡麻のたれがお約束です。『マサズキッチン』では、胡麻だれスープの上に、点々とラー油がたらされていて、抽象画家ジャクソン・ポロックもびっくりするような美しさ。甘辛の肉味噌とねぎ、麺、たれが一緒になって、複雑な辛いうまみが広がり、だんだん舌がしびれてきます。
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「気候にもよりますが、毎年5月末くらいから頼む人が増えますね」と鯰江さん。暑くなると無性に食べたくなる味、できました。

冷やし担々麺をつくってみましょう

1.胡麻だれをつくる

スクリーンショット 2017-07-18 11.42.42胡麻、豆板醬、白味噌、にんにく、しょうがをフードプロセッサーに入れて回し、ペースト状にする。鶏ガラスープを入れてさらに回し、ゆるめの胡麻だれ、というより胡麻スープに仕上げる。白味噌は甘みの強い西京味噌を使っている。このたれを冷蔵庫でしっかり冷やしておく。麺だけでなくスープも冷やすのがコツ。

2.肉味噌をつくる

スクリーンショット 2017-07-18 11.42.57豚ひき肉を、甜麺醬(てんめんじゃん)と鶏ガラからとったスープで炒め煮にする。カラカラに炒り上げず、とろみのあるくらいで火を止める。肉味噌の上に盛るねぎを切る。ねぎの白い部分を7㎝の長さに切り、縦に包丁目を入れ、平たく切り開いてせん切りにする。水にさらして、苦み、ぬめりを取る。水をよく切っておく。

3.やわらかめに麺をゆでる

スクリーンショット 2017-07-18 11.43.28麺をゆでる。ゆで時間は2分程度。ほぐしながら沸騰した湯に入れ、絶えずかき混ぜる。湯が沸きすぎないようにひんぱんに差し水をしながらゆでる。冷麺にするときのゆで具合は、少しやわらかめがよい。このあと、冷水で締めるので、硬めにゆでてしまうと仕上がりが硬くなりすぎるおそれがある。

4.冷水にとり、よくもむ

スクリーンショット 2017-07-18 11.44.08麺がゆであがったら、すぐに氷が入った冷水に入れる。粗熱が取れたら、麺を両手でつかみ、表面のぬめりを取るようによくもみ洗いする。この間に麺が冷え、締まっていくので、やわらかめにゆでておくことが大切。麺はかん水の入ったものを使っている。コシがあり、水の中でもんでも、ちぎれることがない。

5.麺の水気をよくよく絞る

スクリーンショット 2017-07-18 11.44.42麺が引き締まったら、手早くざるにあげて水気を切る。ざるの上に置いておくだけではなく、麺をぎゅっとつかんで、しっかりと水気を絞り出すこと。麺に余計な水分が残っていると、胡麻だれスープと一緒に盛ったときに味が薄まって、ピントのぼけた味になってしまう。このひと手間が大切なポイント。

6.皿に盛り、肉味噌とねぎをのせる

スクリーンショット 2017-07-18 11.45.14冷やした胡麻スープを器に注ぎ入れ、その中にこんもりと麺を盛る。その上にひき肉味噌をのせ、せん切りのねぎを盛りつける。自家製のラー油を胡麻スープの上に、花椒(ホアジャオ)の粉は全体に散らす。ラー油は自分でつくるとなおよい。一度につくりすぎず、香りのある新しいものを使う。花椒は細かく挽いて使う。

『マサズキッチン』冷やし担々麺の秘密

「この冷やし担々麺は、スープも飲めるような味にしています。胡麻と西京味噌を合わせた、甘辛い味です。冷たいものに強い塩味は合わない。甘さがどこかに必要です。そこに辛さを入れる場合には、辛さと甘さのバランスが大切だと思うんですよね」と鯰江さんが言うとおりの、優しい味のスープが麺にからみます。

刺激的なのは、最後に振りかけられている花椒とラー油。花椒とは中国の山椒。日本の山椒とは同属異種で、香りも辛みも違います。漢方では健胃、鎮痛などの効果があるとされていて、前漢の時代(紀元前206~紀元後8年)にはすでに薬として使われていたといいます。
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香りが高く、透明感のある赤い色とともに印象的なラー油は、自家製です。唐辛子と花椒を生の胡麻を絞った白絞めの胡麻油に入れて熱を加え、ピリリとした唐辛子の辛さと花椒のしびれる辛さを抽出しています。辣味と麻味の合体です。「ラー油は毎日少しずつつくっています。一度につくりすぎないことが大事ですから。古いラー油は香りが飛んでしまうし、酸化しています。それで毎日少しずつつくって、注ぎ足すんです。このラー油は盛りつけの最後にかけます」

四川料理には、麻、甜、鹹、辣、酸、苦、香の七味があるといいます。それぞれ、しびれる辛さ、甘さ、塩味、汗の出る辛さ、酸味、苦み、香りのことです。特徴的なのは、辛さに麻と辣の2種類があること。四川省では、高温多湿な気候を乗り切るために、辛い味付けの料理が生まれたといいます。そんな四川料理が日本に入ってくると、辛さが控えめになり、汁ありの麺が多くなるなど、日本人の好みに変わってきました。その変化の中で、『冷麺』というバリエーションが生まれました。辛くて冷たいもの─それが、今の日本の夏に好かれている味覚なのです。
スクリーンショット 2017-07-07 11.40.02ご主人、鯰江真仁さん

辛い四川料理が受け入れられるようになり、日本での中華料理の食べ方そのものも変わってきています。「昔は中華料理といえば、大皿からみんなが取るものでした。ですから、大人数でないと、いろいろ食べられなかった。今はカップルでもひとりでも食べられるようなポーションのところが増えています」と鯰江さん。『マサズキッチン』では、白い器に1人前ずつ料理を盛っていますが、洋食にも合いそうなモダンなものです。

近年東京では、四川料理や湖南料理など、中国の各地方の料理を看板に掲げる店が増えています。上海や広東以外の場所にも日本の料理人が働きに行っているので、現地の味、センスをある程度日本で体験できるようになりました。中華料理といっても、地方によって味が違い、ひとつではないことが、実感としてわかるようになったということでもあります。
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コロッケやカレーが日本の食べ物になったように、新たに日本化していく中華料理があるとすると、冷やし担々麺はその筆頭なのかもしれません。

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