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2019.09.03

長野県上田市、別所温泉へ。美肌効果で人気のおすすめ外湯とレトロ老舗旅館を紹介

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別所という地名は出てきませんが、「枕草子」にもここの温泉は日本で行くべき湯として挙げられているなど、その昔から評判だった別所の湯。気になる湯質は、pH値が8から9の弱アルカリ性温泉とのこと。石鹼のpH値が7から10ぐらいなので、別所の湯に入浴するだけで肌がツルツルに、新陳代謝も活発になるようです。

戦国武将にも愛された1400年前から話題の湯

DMA-170904 0394外湯は3つあり、それぞれの湯に慈覚大師円仁、木曽義仲、北条義政といったゆかりの人物の逸話が残る。写真は真田一族の隠し湯といわれている「石湯」

そういえば、街の中にある住民が共同で使う洗濯場で出会ったお母さんも、「汚れの落ち具合は、温泉水がいちばんいいの」と教えてくれたことを思い出します。そう話していたお母さんの肌も朝からピカピカに輝いていましたっけ。これは、期待が高まります。

DMA-170904 0613温泉を利用した住民専用の洗濯場があるのは日本でもここだけ!? 朝6時から洗濯に精を出すお母さん

天井高なお風呂で極楽愉楽

DMA-170904 0458花屋の創業年は大正6年。長野県で最初にできた旅館であり、建物の約8割が文化財指定に

現在、別所温泉には15軒の旅館とホテルがありますが、今回宿泊したのは創業101年目を迎える「花屋」。湯治場から始まり、長野で初めて旅館としての営業形態を確立したという、由緒ある旅館です。

DMA-170904 0325宿自慢の3種の風呂のひとつ、若草風呂。湧きたての温泉は、ほんのり硫黄の香り

源泉掛け流しの温泉が楽しめる湯殿は3つ。旅館が完成した大正時代、イタリアから輸入したという大理石でつくられた浴室に、湯冷めしにくい伊豆石を使用した浴室と、男女別の露天風呂がそろいます。透明でさらりと肌当たりのいいお湯が心地いい。天井が高く、光がふんだんに差し込むつくりなので、ぜひとも日中に一度は入浴することをおすすめします。

渡り廊下に吹く風も心地よい

DMA-170904 0268-0249左/2017年8月に完成した「桜御殿」は上田市に残る武家屋敷を移築した特別室。露天風呂が付き、最大4名まで宿泊可。右/武家屋敷特有の式台付玄関もそのまま再現

お風呂から上がると、「花屋」自慢の部屋をいくつか、案内していただきます。「今年の夏に武家屋敷を移築した貴賓室が加わりました。江戸時代からの歴史が重なり、一段と重厚さが増しました」とは、宿泊部長の竹内いおりさん。

DMA-170904 0231-0260左/建具は修繕を重ねて、昔のまま使っている。右/大正ロマンを感じるステンドグラスが風呂場を飾る

床柱や欄間にあしらわれた木彫りの彫刻や繊細な障子の桟といった宮大工の手わざが随所に見られる部屋もあれば、食堂はレトロチックな和洋折衷の空間になっています。

DMA-170904 0290-0201左/新潟にあった遊郭の天井絵が楽しめる21番の客室。右/地元ではおなじみ、蘇民将来の木彫り護符は毎年1月に信濃国分寺で授与されるもの。ロビーにて

趣の異なる部屋があるのは、「花屋の宮大工ならば、これらの建築資材を生かせるであろう」とそれぞれが集まってきたからなのだとか。「日本の旅館文化を継承していく覚悟がなくては、続けていけませんね」と竹内さん。浴室と部屋をつなぐ吹き抜けの回廊は、雨や風雪の影響も受けます。それでも、開放的なこのつくりにこだわっているのは、風呂上がりの体に吹く風の気持ちよさに代わるものはないから。このまま、100年先もこの建物が続いてほしいと願いながら、宿を後にしました。

DMA-170904 0566-0697左/夕食の一例から、八寸。メインの肉料理は信濃牛のしゃぶしゃぶやすき焼きを提供。右/塩田平産のコシヒカリの甘い香りにご飯が進む朝食。温泉卵も美味

さて、帰りの電車まで時間がまだ残っています。別所が誇る自慢の外湯を体験して、旅を終えることにしました。私たちが入ったのは、真田一族にゆかりのある「石湯」。ここの湯の温度は夏でも冬でも、43℃!石造りも相まって、別所に3つある外湯の中でも最も熱いのだとか。「さっぱりしていいじゃない。地元の人はほかの外湯に入った後にここでしめるの。ここでは赤ちゃんもこの温度で入るのよ」と番台のおかみさん。こんな話が聞けるのも、温泉地を巡る楽しみなのです。

旅館花屋

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