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二條若狭屋のゴールドくり82歳和菓子職人の製作秘話京都土産のスピンオフ

二條若狭屋の栗菓子、ゴールドくり。やき栗、ふく栗と並ぶロングセラーになると確信している私です。栗菓子3兄弟(勝手に命名)のいずれも生みの親は3代目・藤田實さん。前回に続いて話をうかがいます。
前回の話はこちら

81歳で新作栗菓子に挑む

数年前に4代目を長男の茂明さんに譲られましたが、82歳の3代目も現役です!

——ゴールドくりというネーミングの発想はどこから? とぼけているようで、一度聞いたら忘れられない響きです。

藤田さん(以下藤田) 栗といったら、山の黄金と昔から言うでしょう? くりにそのままゴールドをつけたらどないやろ? って思ったんです。

——その単純さが…失礼を承知で言えば80歳越えの余裕ですよね

藤田 ははは。これでいっぺん登録商標を取ってみようと調べたら、どこにもなかったんです。それならこれでいこか、と。

——商品名のロゴを見たら、濁点が栗のイラストになっていますね。これを見たときにキュンときたような、吹き出したような。これも3代目のセンスですか?

二條若狭屋のゴールドくり82歳和菓子職人の製作秘話京都土産のスピンオフ文字のトメ、ハネも手描きならではの味わいがありますね

藤田 菓子名も、栗のイラストを描いたのも私。お菓子だけでなく全部自分で考えました。

——ひとり! さらに驚いたのはゴールドの名前にふさわしい、栗の渋皮煮が一粒入る贅沢感です。前回、3つの栗菓子を並べてみたら、ゴールドくりは引き算の味わいであることがよくわかりました。ミニマムにして贅沢というのが今を感じさせます。

藤田 この年齢になったら、質のいい材料を使ったおいしいものを口にしたい。量は少なくていいし、ちょっと高値がついても心から満足できるお菓子を、というのが今、求められていることかなとも思いました。箱に2個入りで勝負しよう、そこから始まりましたね。

つくるならインスタ映えを狙います

——金箔がついているのは、やっぱり写真映えを考えて?

漆黒のあんに金箔。地味派手の塩梅がさすがです

藤田 もちろんそれも頭にありました。京菓子というのは、お茶室にあって映えるもの。お軸やうつわがあって、初めて成り立つものという考えは今も頭にありますし、目的に合わせたお菓子もつくっています。ただし今はいろいろな場面でお菓子が食べられるのだから、根本から発想を変えてつくらないとあかんね。

——その感覚からゴールドくりが生まれたんですね。

藤田 ふふっ、正月に金箔の入ったお酒をいただいたときに気がついたんです。金箔は季節を問わず使えるな、と。

——(笑)

藤田 でもこのぐらい品よくまとめられたのは、やっぱりこの年齢だからかもしれんね。若いときにはもっと派手に金箔を散らしていたかなぁ。

エコロジーな箱に夢中です

——ゴールドくりは、箱も斬新でした。箱を引っ張るとへぎ板のように使えますね。

二條若狭屋のゴールドくり82歳和菓子職人の製作秘話京都土産のスピンオフ箱いっぱいに描かれた栗のいがもカワイイ

藤田 手を汚さずに開けられるのもいいし、お皿代わりになるのでどこでも食べることができるでしょう? セロハンテープもいらないし、最小限の包装で済むんです。

——環境のことまで考えて!

藤田 この箱が気に入ったので、次はこれを使ってお菓子を展開できないかな、と思っているんです。試作を終えて、この夏に販売するのがこれです。

二條若狭屋のゴールドくり82歳和菓子職人の製作秘話京都土産のスピンオフ箱の色が抹茶色に変わりました。左上から白小豆と求肥の入った抹茶羹、黒豆入り濃茶羹、栗渋皮煮入り抹茶水羊羹

——羊羹ですか! 確かに、今の時代は羊羹1本を食べ切るには家族の人数も少なくなってきていますしね。

藤田 季節が変わればこの中を違うものにできるしね。それを考えているのが今、楽しくて。

ものづくりは休むな、ひとりでせよ

——前回、栗3兄弟の変遷を紹介しました。やき栗、ふく栗からゴールドくりが生まれるまでに30年ほど時間が空きましたが、その間も栗のお菓子のことは頭にあったんですよね?

藤田 はい、その間にもいろいろやってます。お陰様でやき栗、ふく栗はうちの人気のお菓子として定着しましたが、初代のつくった不老泉や家喜芋に比べたらまだまだ。代表銘菓と呼ばれるようになるには、少なくとも50年、まぁ100年経ってからだと僕は思っているんです。なんとか自分の代でも代表銘菓を残したい。そのためにはね、つくり続けるしかないんです。

——ところで新商品をつくるときは、息子さんの4代目をはじめ、みなさんで考えられるのですか?

藤田 ひとりやります。人に相談したらものづくりは進まない。

——極意ですね

藤田 意見を聞くならものを出してから。バーンと出して、それを見てもらった方が人の反応は早いよ。それにね、先に口にしてそれをゴリ押しして通すのは面白くないでしょ?(ニヤリ)。

——はぁー

藤田 うちの店には、趣味の菓匠というキャッチコピーが付いているんです。文化人の方などいろいろな方との交流からアイディアをいただいて、手の込んだ人の印象に残るお菓子を手でつくってきたんです。そういうお菓子をひとつでも残したいと思いますね。

二條若狭屋のゴールドくり82歳和菓子職人の製作秘話京都土産のスピンオフ掛け紙は神坂雪佳、小箱の版画は徳力富吉郎作。掛け紙の屋号の横に趣味の菓匠のキャッチを発見。葛湯の味はプレーン、善哉、抹茶の3種類。

初代が考案した不老泉がこちら。葛湯をお見舞いや手土産に携帯できるよう小箱に詰めたという発想が明治の時代には画期的だったことでしょう。これからも胸キュンのおいしさを楽しみにしています。

二條若狭屋のサイトはこちら 
二條若狭屋寺町店のサイトはこちら

次回は京都の7月の風物詩のうまいもの、ご紹介します。

写真・文/藤田 優
フリー編集者。和樂の食い気担当。職人の手からうまれるもの、創意工夫を追いかけて日本を旅している。著書に「Aritsugu 京都・有次の庖丁案内」(小学館)。

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