「きりたんぽ鍋」は冬の秋田で。発祥の地で美味しいこだわり発見しました!

「きりたんぽ鍋」は冬の秋田で。発祥の地で美味しいこだわり発見しました!

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鍋ものの中でも名前や見た目のキャラが立っているものといえば、秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」! ですが、県外の人から見れば、“きりたんぽ”という食べ物は謎だらけ。炊いたごはんをわざわざつぶして、ちくわ状にする意味って? あの古風な食べ物が長く支持されてきた理由は? そこで、きりたんぽ鍋発祥の地、秋田・鹿角へ向かい、鍋へのこだわりや欠かせない食材、きりたんぽを取材しました!

秋田県鹿角市は「きりたんぽ鍋」発祥の地

まずは、絶品きりたんぽ鍋を食べてみる!

最初に目ざすは鹿角随一のきりたんぽ鍋の店。訪れたのは、「サロン・ド・割烹 美ふじ」です。母親の始めた鹿角の郷土料理店を娘の加藤照子さんが引き継ぎ38年。全国からこの店の鍋を求めて人が訪れるそうです。

きりたんぽ鍋美ふじの女将、加藤照子さん

「たんぽの始まりは山子(山から木を切り出す人)の間食だったそうです。炊事担当は残り飯を串に握りつけて小屋の壁に刺し、風干ししていたとか。重労働の山子には米をすりつぶしたほうが消化はよかったのでしょう」と加藤さん。“たんぽ”と呼ぶのは省略ではない様子。切ったものが「きり(切)たんぽ」。地元の人はきっちりと使い分けます。

きりたんぽ鍋たんぽを焼いて味噌をつけた「味噌付けたんぽ」も鹿角のおやつとして親しまれている

鍋の中には比内地鶏、セリ、ネギ、ごぼう、きのこ、そして糸コンニャクが入ります。「鹿角には銅山があり、明治から昭和にかけては多くの人が集まりました。こんにゃくが入るようになったのは、“砂おろし”(解毒)のため。県内の店では鶏肉が硬くなるからこんにゃくを入れないところもあるそうですが、この地域の歴史を考えたら、鹿角の人間には外せない食材です」

きりたんぽ鍋

鍋ができあがりました! 比内地鶏のこっくりした脂の香りに鼻腔が広がります。濃厚なスープに身も心もポカポカ!「たんぽの“穴っこ”に入ったスープとごはんが一緒に口に入るのが美味しいの。雑炊にも、うどんにもない味」と誇らしげな加藤さん。スープを吸ってふくらんだたんぽは、むっちり適度な太さになっています。柳田さんがたんぽの細さにもこだわる理由が、ようやく腑に落ちました。

◆サロン・ド・割烹 美ふじ
住所 秋田県鹿角市花輪下花輪155-7
TEL 0186-23-5771
営業時間 18:00〜22:00
※ランチは月・火・水の11:00〜14:00
定休日 不定休

きりたんぽ鍋は、米の収穫を祝うハレの料理でした

きりたんぽ鍋

鹿角は山に囲まれた盆地で、街中のどこからも山が見えて、街の要所に湧き水の汲み場所があるところ。取材をした2018年10月中旬はお米の収穫時期で、市内は稲穂に輝いていました。こんなに水がきれいなら米も美味いし、当然きりたんぽの味にも違いが出るはずです。

きりたんぽ鍋柳田きりたんぽ店の店主・柳田亮子さん

「かつては近所のお母さんが寄りあって、収穫したての米でたんぽを握ったんです。今はたんぽを焼く囲炉裏もないから自分でつくる人はほぼいない。それでも鍋を囲んで今年も無事にお米ができました、と祝う習わしは残っていますね」とは、きりたんぽ専門店「柳田きりたんぽ店」の店主・柳田亮子さん。なんとこの地域では晩秋のハレの日の食事だったのです!

きりたんぽ鍋柳田きりたんぽ店は、機械に頼らず、手で握ることにこだわる

◆柳田きりたんぽ店
住所 秋田県鹿角市花輪堰向79
TEL 0186-23-4468
営業時間 8:00〜17:00
定休日 日曜祝日

透んだ水で育てたセリが美味しい鍋をつくる

きりたんぽ鍋小笠原良子さん(右)を手伝う斎藤イネさん(左)

セリの苦み、ほの甘さは、きりたんぽ鍋の中でもたんぽの次に重要な味の決め手。「雪が降るようになったら、セリの収穫も終わり」と言うのは鹿角から車で約50分離れた山すその集落でセリを育てる小笠原良子さん。小笠原さんのセリは鹿角の飲食店でも大人気です。

きりたんぽ鍋小笠原さんのセリ畑

その味の理由は、セリ畑に引き込む水が山の湧き水であることが大きな要因のようです。「川の水が入らないからね。今年は畑に虫も来なかったよ」。2019年の冬季までにハウスを設えたいと意欲に燃える姿が印象的でした。

きりたんぽ鍋市民のための湧き水給水地「おせど」

きりたんぽ鍋を食べるなら、入店前に要チェック!

きりたんぽ鍋は現在、鹿角市内の居酒屋・食堂などでも一年中食べることができます。ただし、気軽な店でもだしには命をかけているため、おだしが切れたら提供できない店が多いことに気をつけておいてください。

きりたんぽ鍋

そのため、「どんな店でも入店前にひと声かけたほうが安心」だと滞在先のホテルマンが教えてくれました。こんなエピソードからも、鹿角の人のきりたんぽ鍋への尽きない愛情が感じられます。

江戸時代から続く青空市で、鹿角の暮らしを身近に感じる

秋田県だけれど岩手に近く、南部藩の影響が強い鹿角市。藩政時代は城館が置かれ、鹿角街道に沿って発達した歴史があります。この街に電車が通るようになったのは大正12(1923)年、鹿角花輪駅の開設からなので、街にはまだ江戸時代の面影も強く残っているようです。

その象徴ともいえるのが、花輪で毎月3と8のつく日に開催される「市日」。これは江戸初期から続いている市だとか。料理上手のお母さん、キノコ狩りが得意なお父さんなど、セミプロ・プロの生産者が集まる青空市は朝から人で大にぎわい。市外近郊からの出店者も多いようで、地元の人は定期的に会えるのを楽しんでいる様子です。

きりたんぽ鍋

県外者には理解不能な方言が行き交うなかにひととき身を置く体験をしたいなら青空市が一番! 露店に並ぶ山のもの、海のものを見ていると「内陸地に暮らす地元客には干物が人気らしい」など山間に暮らす生活を身近に感じることができます。また庇が長く設計された雪よけ屋根「こもせ」も、この地ならではの生活の風景です。

「きりたんぽ鍋」を求めて訪れた鹿角では、食文化のみならず、北東北の長く続く冬を越すための豊かな知恵の教えを知ることができました。

※市日の開催日などの問い合わせは0186-23-7799

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