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2019.10.17

和歌山の古民家カフェ「黒江ぬりもの館」はランチやお土産にもおすすめスポット

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和歌山県海南市黒江は室町時代から続く紀州漆器の産地です。江戸時代には紀州藩の保護を受け、たくさんの職人を抱える町として栄えました。
現在もあちらこちらに迷路のような小路が見られ、のこぎりの歯のように軒がギザギザに並んだ町並みが残ります。
そんな町の一画にある「黒江ぬりもの館」。築約160年、江戸時代の塗師(ぬし)の家を改装し、カフェやギャラリースペース、ワークショップの場として活用されています。
古民家を利用している、というよりも、今も人々が集う場として、生きて呼吸をしている塗師の家です。

「黒江ぬりもの館」は当初、紀州漆器のギャラリースペースとして使われていましたが、本格的なリニューアルを経て、飲み物やランチをいただけるカフェとなりました。
名物は和歌山県紀美野町のぶどう山椒と食用の竹炭を使った黒い「黒江カレー」(¥1000 税別)。
そして、もう一つの人気メニューは「スタッフ気まま定食」(¥1000 税別)。その日スタッフが選んだ地元産の食材によって何が出てくるのかお楽しみ、というランチです。(店頭にはあらかじめメニューが表示されます。)
今回は「スタッフ気まま定食」のサンマの春巻きをいただきました。

器はすべて伝統的な漆器。茶碗はかなり大ぶりに見えますが、木の厚みを残しているためほどよい分量。そしてとても軽いです。黒漆の皿はサンマの春巻きの香ばしい色、サラダの彩りを引き立てます。
食材はできるだけ地元産を使用し、ごはんの上の佃煮も地元産の新ショウガと地元産シラスを使った自家製とのこと。新ショウガがなくなればおしまいとなるそうです。
「せっかく黒江にきてくださるのだから、地元で採れた野菜など、この土地のものを味わってもらいたいと思いました。中には生産者と顔の見える関係となっている食材もあって、作り手さんの思いも一緒にお伝えできればいいな、と」
そう話してくださった「黒江ぬりもの館」の店主さん。

「この、ミルで挽いて使うぶどう山椒(さんしょ)はあまり他では見られない赤山椒を使っています。赤い品種ではなくて、普通のぶどう山椒を樹上で完熟させ、赤くなってから収穫しているものです。実際、こうすると樹には負担がかかるらしいのですが、でも逆に言えば、それに耐えられる健全な強い樹を使っているということ。生産者さんが大切に育てているからこその風味を味わってください」
店主さんおすすめの赤山椒はフルーティで爽やかな辛み。従来の山椒とは違った味わいがありました。
パリッとしたサンマの春巻きにかけても、サラダにかけても、佃煮のごはんにかけても存在感のある爽やかさ。
実は意外にもバニラアイスと相性が良いそうです。

こちらは+300円で付けられるミニスイーツ。コーヒーは和歌山市の「珈琲もくれん」から豆を仕入れ、挽きたてをハンドドリップで淹れています。シフォンケーキも自家製です。

黒江で味わう名酒「黒牛」

漆芸家・伝統工芸士の林克彦さん製作のひょうたん盃

「黒江ぬりもの館」からほど近い場所に、1866年創業の蔵元・名手酒造があります。「紀の国名水50選」に選ばれた「黒牛の水」から醸造する純米酒「黒牛」は全国的に名の通った日本酒です。
「黒江ぬりもの館」ではこの「黒牛」の生酒を黒江出身の漆芸家・伝統工芸士の林克彦さん製作のひょうたん盃でいただくことができます。
ひょうたん盃に注がれた「黒牛」はおつまみがついて600円(税別)。連子格子ごしの小路を眺めながら一献傾けると、時の流れもゆるやかに感じられます。

ランチのあとは骨董品めぐり


太い梁が張られた天井や書院造の床の間。縁側の向こうには小さな坪庭が見える「黒江ぬりもの館」。年月を経た趣の室内にはそれに見合うさまざまな古い調度品が並んでいます。その設いを提案しているのが、アンティーク陶磁器等を取り扱う「知足庵(ちそくあん)」です。「黒江ぬりもの館」の奥座敷には「知足庵」の骨董品が展示されています。値札の付いている品は購入することができますが、中には値札のないものもあり、これは「知足庵」の店主さんと要交渉。「本当に求めている人にお譲りしたい」との思いからだそうです。

奥座敷には他に骨董店「黒江黒猫堂」の商品も並んでいます。「黒江黒猫堂」は幅広く質の良い古漆器等を扱っているとのこと。
ランチの後はアンティークな一品との出会いを求めて、奥座敷を巡ってみるのも良いかもしれません。

ワークショップで黒江を体験

「黒江ぬりもの館」ではさまざまなワークショップも開かれています。
常時、受付けしているのは以下の3つです。

根来模様(ねごろもよう)・研ぎ出し体験


黒地に朱が塗られた漆器を、水で濡らした「研ぎ出しペーパー」でこすり、黒の地を模様として浮かび上がらせる「根来塗」を模した体験です。
一説には、器の経年劣化に趣を感じた和歌山県岩出市・根来寺の僧侶が始めたともいわれる「根来塗」。それが黒江にも伝わったとされています。
*体験料(税込)
・半月お盆 1500円
・花びら 1200円
*所要時間 60分程度

水中花ワークショップ


昔懐かしい水中花。水を入れたボトルに紙を小さく折り畳んだような水中花を沈めると、ゆっくりゆっくり色とりどりの花が開き始めます。
水中花は「通草木」という植物から作られており、長期間、色褪せることがないそうです。その染色技術は一子相伝とされており、「通草木」を使った水中花は今ではなかなか手に入らないものとなっています。
「黒江ぬりもの館」では「みさお製作所」より譲り受けた新古品のパーツを使い、自分だけの水中花を作ることができます。
骨董のグラスに手作りの水中花、そんな旅の思い出を窓辺に飾るのも素敵ですね。
*体験料(税込) 1500円~
*所要時間 60分~90分程度

柿渋染め一閑張り体験


一閑張りとは竹かご全体を覆うように和紙を重ね張りし、その上に柿渋を塗って仕上げる伝統工芸品です。「黒江ぬりもの館」では最後に好みの布地をデザインして仕上げる一閑張りのかごバッグ作りを体験できます。
把手は布地を使ったものと、パラコードを使ったものを選ぶことができます。写真のかごバッグはパラコードを使っています。

元々パラシュートに使われていた、丈夫で彩りのよい紐を再利用したパラコード。パラコードアクセサリー「波羅香堂」の特設コーナーもあります。

一閑張りには和紙を張っては乾かす、という工程が入るため、三~四回、「黒江ぬりもの館」に通う必要があります。要相談で、ある程度の工程まではあらかじめスタッフが製作してくれることも。
体験料は初回のみ、二回目以降の作業のため来店した際にはワンオーダーをよろしくお願いします。
*体験料(税込) 2000円~ +竹かご代(大きさによって価格が異なります)
*所要時間 90分~(かごの大きさによって異なります)

その他のワークショップ

「古色の美」ベンガラ染めワークショップより。

「黒江ぬりもの館」ではご縁のある作家をお招きして、ワークショップを開催することもあります。ベンガラ染めやつまみ細工、チョークアートや和菓子の練り切りなど、分野は多彩。
内容によって開催は不定期となりますので、ぜひFacebookをチェックしてください。

お土産も黒江ならではの一品を


漆芸家・橋爪玲子さんのアクセサリー。国産漆など素材にこだわり、季節ごとにデザインが変わります。

林克彦さんの作品はひょうたん盃の他に、お土産に手頃なお箸の販売も。毎日使うものだからこそ、お気に入りが見つかると嬉しいですね。

小川漆器店の曲げわっぱも各種そろっています。他に、木でできた軽いスプーンや樹木の種類を選べるお箸、伝統的な漆の器も展示販売されています。

「黒江ぬりもの館」アクセスなど


「ごはんを食べに来るだけではなく、黒江の町そのものを歩いて歴史を感じてほしいと思います。とても不思議なのですが、ここでは来てくれた人同士、出会いとつながりの場となることが多いです。コンセプトは『おかえりなさい』。昔、なくしてしまったものを、懐かしさとして感じていただければ嬉しいです。」
店主さんの、こんな思いがこめられた「黒江ぬりもの館」。ぜひ足をお運びください。
*住所:〒642-0011 和歌山県海南市黒江680
*公式サイト:http://kuroe.info/
*定休日:火曜/水曜
*営業時間:11時~17時
*アクセス
・電車でお越しの場合
JR黒江駅から徒歩15分・JR海南駅から徒歩25分
※JR海南駅からはバスがあります。停留所【黒江】下車徒歩5分。
・お車でお越しの場合
駐車場:黒江ぬりもの館専用駐車場【5台】 海南市観光用駐車場【10台】
関西国際空港から自動車で約40分。高速道路 海南東インターor海南インターで降りて約10分

書いた人

和歌山県在住。自然豊かな環境で育ったため、今でもうっかりカエルやクモと会話してしまう日々。和歌山の自然と生き物、神社仏閣をこよなく愛しつつ、「蒼海」俳句会にて俳句修業中。(社)自分史活用協議会「自分史アドバイザー」。