なんと柿を寝かせるだけ!「柿酢づくり」で知る先人の知恵にびっくり

なんと柿を寝かせるだけ!「柿酢づくり」で知る先人の知恵にびっくり

目次

秋から冬にかけて美味しくなる旬の果物「柿」。里山などを歩いていると、たくさんの実を付けた柿の木をよく見かけます。

柿の葉茶や柿渋などをはじめ柿は昔からいろいろな用途に使われてきましたが、柿を寝かせてつくる「柿酢」をご存知でしょうか。

実は11月初旬に、2019年春から担当しているゼミ「おあばちやんの知恵から学ぼう。食から始まるシンプル暮らし術(なごや環境大学ゼミナール)(*)」で、メンバーと一緒に自然を楽しむ達人を訪ね、柿酢づくりを体験しました。

「柿を寝かせるだけ」という驚くべきシンプルさ。
これこそ、自然の恵みを生かした先人の知恵!

発酵食が好きな方だけでなく、この楽しさを多くの方に伝えたいと思い、記事を書くことにしました。
(撮影協力:saori matsui)

柿酢とは?

「酢って、手作りできるの?」と思った方もあるかもしれませんが、柿酢は昔から農家などでよく手作りされてきた果実酢のひとつ。初心者でも比較的作りやすいと言われています。

柿の産地にある道の駅や直売所などで見かけることもありますが、全国的にはあまり出回っていないようです。

味の特徴は、柿独特の甘味と発酵することで生まれたやさしい酸味。

柿酢には「高血圧や脳卒中の予防」「血行促進」「老化防止」「肥満防止」などの効能が期待されると言われています。

さっそく、柿酢の仕込み方!

今回柿酢づくりを教わったのは、NPO法人なごや東山森づくりの会の代表・瀧川正子さんとスタッフの皆さん。

愛知県名古屋市東部にある東山公園を活動拠点として、自然観察会や米作りなどを通して、自然に触れる機会やその楽しみを広く提供しています。柿酢は、瀧川さんが個人的に10年以上仕込んできたもので、今回はゼミの趣旨に共感いただき、特別に教えてもらうことになりました。

ということで、東山公園に集合!そこからゼミが始まりました。

1.まずは柿の採集からスタート。その年によって、柿の実り方はかなり違うとのこと。事前にチェックしておいた柿の木へと向かいます。

完熟柿を使うと発酵が進みやすいですが、完熟していなくても大丈夫。
甘柿だけでなく渋柿も使うことができます。

高枝切りバサミなどを利用しながら、柿を採集していきます。簡単そうに見えますが、実際にやってみるとこれが案外難しい!

柿酢づくりの一番のポイントは、「柿を洗わない」こと。柿の表面には酢酸菌や酵母菌が付いているためです。茎などは切り落とし、果実だけにします。

2.ヘタを切り落とし、発酵しやすいように果実を崩していきます。完熟柿であれば手で潰せばOKですが、固いものはトンカチなどで叩いていきます。

3.柿を適度な大きさに潰しながら、瓶に詰めていきます。これで柿酢の仕込みは完了!

(何度も書いていますが)とてもシンプル!そして意外と簡単です。

酢酸菌は酸素が大好き。発酵を進めるために、空気を通すような目の細かい布巾などで蓋をしましょう。完全に密封してしまうと、瓶のなかにガスが充満して「ポン!」と蓋が飛んでしまう危険があります。

仕込んだ後の手入れは?

柿の入った瓶は、涼しくて直射日光の当たらない場所に保管しましょう。酢酸菌や酵母菌の働きで、翌日には泡がプクプク……。発酵が始まったサインです。


仕込みの翌日には小さな泡が立ち、発酵が始まっていました。

2~3日ごとに、清潔な箸などでかき混ぜてくださいね。上に固形物が浮いていると、カビなどが発生しやすくなります。

アルコール発酵を経て、酢に変わっていきます。アルコール発酵が終わったかどうかの見極め方は、「混ぜても泡が出ない」こと。仕込みから1ヵ月後を目安に、固形物を濾します。
始めは目の粗い布か金ザルなどを使って濾します。

その後、キッチンペーパーやコーヒーフィルターなどの目の細かいもので濾すと、透明な柿酢になります。

そのままでも保存できますが、蒸し器などで熱入れをして、発酵を止める場合もあります。この作業はお好みでどうぞ。半年~数年寝かせてさらに熟成させる場合もありますが、最短だと仕込みから1ヵ月後には食べられます。

手作りの柿酢を使った、おせち料理の定番「紅白なます」。柿酢に自然な甘さがあるので、砂糖は不使用。味わい深い美味しさです。お正月の会話が、より一層盛り上がりそう(いま仕込めばお正月にも間に合うかも)!

手作り柿酢は、十人十色!

実は今回のゼミを開催する前に、瀧川さんと私の二人で、試作用の柿酢を仕込んでみました。完熟柿を使ったもの、未完熟の柿を使ったもの、発酵を促進するためにイースト菌を加えたものなど。発酵期間が1ヵ月弱ほどのいわゆる「若い柿酢」です。

見た目や味、香りなどもそれぞれ違っています。

7種類の柿酢を試食してみると「甘くて美味しい」「酸味がグッとくる」「アルコールの香りが強くて酔いそう」「メープルシロップにも似ている」などいろんなコメントが飛び交い、とても面白かったです。

市販の2年間熟成された柿酢との味比べもしましたが、「若い柿酢のほうがフレッシュな感じで香りがいい」など、ワインの試飲会のようなコメントも(笑)。

思うように行かないことも、面白い

私自身は食の活動をしており、発酵食をテーマにした教室もこれまで多数開催してきました。そのなかで「発酵が正しく進んでいるのかどうか分からない」というコメントもよく届きます。そのことを瀧川さんに話してみました。

変な臭いがする場合などは除いて、発酵食には「正解」は存在しないと思う。自然の素材を使って自然の法則でつくるわけだから、素材の種類や質、仕込み方、保存環境などによっても仕上がりは当然変わってくるでしょ。市販品のように一定の味を保つ必要はないし、もし仮に失敗してもまたやり直せばいいんじゃないかな。

瀧川さんの言葉からも読み取れるように、自分の思うようにはならない変化こそが、発酵食を手作りする面白さではないかなと。発酵食づくりをしていると私はいつも、自分の野性や直感が試され、磨かれていくような気がします。

シンプルなようでいて、何だかとても奥深い!

この冬、柿酢を仕込んでみよう

ゼミの最後に、瀧川さんからはこんなコメントが。

ほらね。柿酢は、簡単に作れるでしょ。味は好みだけどね(笑)。柿の木を見つけたら「ピンポーン、柿の実をください」とその家を訪ねてみたらどうかな。柿が収穫できなくて困っている家も多いから、喜んで「OK」してくれると思うけど。そこから会話も生まれるし、いろいろと試してみると、とにかく楽しいよ。

もともと柿酢づくりには、たくさん実り過ぎて余った柿を使うことが多かったはず。「食材を無駄なく使う」という意味のほかに、「自然の恵みを分かち合う」というコミュニケーションとしての役割もあったのではないでしょうか。

近所付き合いや地域とのつながりが薄くなったと言われる昨今ですが、「柿の実をくださーい」と声をかけてみることで生まれるご縁もあるかもしれません。

自然の恵みを取り入れ、自然のリズムに寄り添う暮らしの心地よさ。それを身体の奥底から実感した一日でした。

参加したメンバーからは「家族や友人にも伝えたい」「別の柿で再度仕込んでみたい」というたくさんの声がありました。

この記事を読んでくださっている皆さまも、柿の木を見つけたらぜひ柿酢を仕込んでみてくださいね。きっとその先に、新しい世界が広がっていますよ!

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<参考>
・なごや東山森づくりの会
http://www.higashiyama-mori.sakura.ne.jp/
・おばあちゃんの知恵から学ぼう、食から始まるシンプル暮らし術(なごや環境大学ゼミナール)
http://kitchenfudo.wixsite.com/fudo/blank-1
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編集後記
今回のゼミは「『おばあちゃんの食の知恵』と言えば発酵食」「柿酢づくりをぜひ体験してみたい!」という会話から出発したもの。素材を探して始めから手作りしてみることで、たくさんの発見がありました。

また、自然を愛し何でも手作りすることが大好きという瀧川さんからは、柿酢づくりだけでなく、散策途中で見つけた植物や鳥などの話も聞くことができ、本当に実りの多い時間でした。

深堀りされながら、広がっていくー。これこそが「おばあちゃんの食の知恵」なのかもしれない。食だけでなく考え方や生き方にもつながっていくような気がして、とても奥深いなと感じています。

これからも先人の知恵を探して体験し、伝えていけたらと思っています。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

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