「ゆべし」は源平時代生まれの保存食だった!珍味としてのゆべしを手作り体験

「ゆべし」は源平時代生まれの保存食だった!珍味としてのゆべしを手作り体験

目次

冬に旬を迎える果物「柚子」。独特のいい香りがあり、料理を引き立ててくれます。

この柚子を使った保存食のひとつ「柚餅子(ゆべし)」。全国各地で味も形も全く異なることをご存知でしょうか。

柚餅子と聞くと、和菓子をイメージする方が多いようですが、実は珍味の柚餅子もあるんです。今回は、珍味の柚餅子を手作りしてみて分かった、奥深い世界についてご紹介したいと思います。

保存食として生まれた「柚餅子」

柚餅子が生まれたのは、11世紀末から12世紀にかけての源平の時代。その頃の柚餅子は、柚子の中に味噌や木の実などを詰めて蒸し、乾燥させた保存食・携帯食でした。

時代が進むにつれて、甘味を強くした和菓子なども登場。材料も柚子を使ったものだけでなく、柚子が採れない地域などではくるみを使った「くるみ柚餅子」も作られるようになりました。

こうした流れから「柚餅子」と一口に言っても、和菓子から珍味までさまざま。現在も地域ごとに形や味が大きく異なっています。

珍味としてよく知られているのは、茶席などでも使われる石川県の「丸ゆべし」や、三重県の「伊勢ゆべし」など。柚餅子は、千利休が料理のひとつに使っていたとも言われています。

珍味の柚餅子を手作りしてみた!

珍味の柚餅子の特徴は、何と言っても、柚子のいい香りと味噌の濃厚な風味。一口食べてみて、その絶妙な風味に魅了されてしまう方も多いのだとか。

それだけの逸品となれば、作り方が気になります。
ということで、今回は柚餅子を手作りしてみました!

そこで向かったのは、愛知県豊田市足助町にある三州足助屋敷「食の学校」。12月半ばに開催された「柚餅子作り」講座に参加し、河合廣美さんと村瀬奈織さんに柚餅子の作り方を教えていただきました。


足助町にはもともと柚餅子の食文化はなかったそうですが、柚餅子の名産地である長野県天龍村との交流があったことなどがきっかけで、30年ほど前から柚餅子を作り続けているそうです。

1.柚子を選ぶ


なるべくキズの少ない柚子を選びます。キズがあると、詰めた味噌が出やすくなってしまうのだとか。また、大きすぎると乾燥に時間がかかるため、みかんのMサイズくらいのものがベスト。よく洗って、水分をふき取ります。

2.柚子を切り、果肉を取り出す

皮を少しだけ切ります。切り落とした皮は、蓋として使うので取っておきます。

果肉と皮の間にスプーンを差し込み、果肉をゆっくりと取り出します。皮が破れないように「やさしくゆっくり」がポイント。

「取り出した果肉は、入浴剤として使ってくださいね」と河合さん。柚子の種は、昔から化粧水などにも使われているのだとか。種が大量にある時には、化粧水を仕込んでみるのもいいかもしれません。

3.味噌を詰める

味噌を柚子のなかに詰めていきます。今回は、自家製の合わせ味噌に、砂糖・みりん・削り節・ごま・くるみなどを加えて練った「調合味噌」を使っていますが、味噌の種類や加える具材はお好みでアレンジしてOK。

蒸すと膨らむため、味噌の量は柚子の7割位を目安に。柚子の皮と味噌の間に隙間があるとカビの原因になるため、隙間ができないようにギュギュっとスプーンで押しながら詰めていきます。最後に、柚子の皮で蓋をします。

4.蒸す

味噌を詰めた柚子を、蒸気のあがった蒸し器に並べて弱火でゆっくりと蒸していきます。三州足助屋敷で販売している「柚餅子」は3~4時間蒸していますが、家庭用なら1~2時間程度で仕上げる場合もあるのだとか。

5.手直し・乾燥

蒸しあがったら、飛び出した味噌をスプーンなどで手直し。その後、直射日光の当たらない風通しの良い場所で2週間ほど干します。
少し固まってきたら、ネットなどに入れて軒先に吊るし、2月末頃まで乾燥させます。

出来上がった柚餅子は、冷凍保存。食べる分だけ少しずつ解凍すれば、一年中美味しく食べられるそうです。

完成した柚餅子の断面。見た目には柚子と味噌の境目がなく、一体化しているよう。モチッとした食感がある。

三州足助屋敷では、多い時は販売用として1000個ほどの柚餅子を作ることもあるのだとか。柚子の種類や大きさ、生育環境、詰める味噌、干し方などによって毎年味が変わるそうです。「同じように作っても同じように出来上がらないのが面白い」と河合さんは語ります。

販売用の柚餅子。3~4時間かけてじっくり蒸し上げた直後の様子。一見すると、焼きたてのパンのよう。

「ゆっくり、ゆっくり」

今回の柚餅子づくりの講座のなかで印象的だったのは、「ゆっくり」という言葉が繰り返し出ていたこと。

例えば、果肉を取り出す時に慌てて作業をしてしまうと、皮が破けてしまう。味噌を詰めた柚子を蒸し上げる時に、強火で急いでしまうと味噌が溢れ出てしまい美味しく仕上がらない。さらに、蒸した柚子は数ヶ月かけてじっくりと乾燥させる。

柚餅子づくり講座に繰り返し参加している方によれば、酒の肴にすると絶品なのだとか。「ごはんやうどんの上に乗せて」「味噌汁に入れて食べる」という声も。シンプルな料理にこそ、よく合います。

今回実際に作ってみて分かったのは「想像以上に時間がかかる」ということ。珍味の柚餅子が何とも言えない奥深い風味をしているのは、手間暇かけた一連のプロセスが深く関係していると感じました。

もともとは、農業の閑散期に作られてきた柚餅子。冬に収穫される柚子の香りを一年を通して少しずつ楽しめるようにと、ゆったりとした気持ちで作っていた様子が想像できます。そんな昔の風景に思いを馳せながら、みんなで手作りしてみるのもいいかもしれません。

ゆっくりと、ていねいに。仕事や家庭のことなどで慌ただしい毎日を過ごしていると、料理も限られた時間でパパっと作ることが多くなりがち。でも時々こうして時間をかけて料理と向き合うことによって、何だか心にゆとりが生まれるような気がします。

古くて新しい、山里の暮らし

柚餅子を蒸している合間を使って、三州足助屋敷を見学。軒先に吊るされた干し柿や、小学生たちが五平餅を手作りして食べる姿も。気持ちが自然に和み、どこか懐かしい感じを覚えました。


こちらの三州足助屋敷は、消えゆく日本の暮らしや風景を提供するとともに、技術の伝承を行うことを目的として、1980年に開館。わら細工、機織り、炭焼きなどの展示や実演などがあり、昭和初期の山里の暮らしに触れることができます。

ここの手仕事は
民芸でも伝統工芸でもない
自分の生活に必要なものは
自分で作る
健やかな山の生活が甦っただけなのだ
土から離れ
手足を使わなくなった現代生活が
慈しみを忘れ
いかに貧しいものか
考えてみたいものだ
(三州足助屋敷パンフレットより)

便利になった現代生活のなかで、私たちが忘れかけているもの。昔ながらの山里の暮らしには、本当の意味で豊かな毎日を過ごすための、古くて新しいヒントがたくさん詰まっているように感じます。

柚餅子づくりをきっかけに、山里のスローな暮らしに触れたり、いろんなものを手作りしたりしてみるのもいいかもしれません。

◆三州足助屋敷
住所:愛知県豊田市足助町飯盛36
営業時間:9:00~17:00(木曜定休、祝日の場合は翌日の金曜休み)
*年末年始(12月25日~1月2日)、12月の第3水曜は休み
公式サイト:http://asukeyashiki.jp/

「ゆべし」は源平時代生まれの保存食だった!珍味としてのゆべしを手作り体験
この記事をSNSでシェアする
この記事をSNSでシェアする