Gourmet
2020.04.19

たんぽぽ食べたことある?身近で美味しい春、サラダにしちゃおうよ!

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突然ですが、たんぽぽを食べたことありますか?

誰もが知っている春の野草「たんぽぽ」。道端や野原などいろいろな場所に自生しているので「雑草の一種でしょ」と思っている方も多いかもしれません。

でも実は、江戸時代に流行した摘み草料理や、漢方薬などにも使われてきた歴史があり、口にも身体にも美味しい植物!調べれば調べるほど、試してみればみるほど、その素晴らしさに魅了されてしまいます。こんなに身近で、愛らしくて、生命力に満ちた植物があるなんて。

2020年4月現在、本来ならば心躍る春ですが、新型コロナウィルスの影響で外出を控えている方も多いと思います。でもこんな時こそ、生命力の豊かな旬の食材をいただいて、できるだけ健やかに過ごしたいですね。

薬膳には「人間も自然の一部」という考え方があります。遠出をしたりピクニックに出かけたりすることが難しくなりつつある今、身近な環境で自然の移ろいを感じることは、私たちの心身の健康のためにも、とても大切なことかもしれません。

そこで今回は、たんぽぽの食用の歴史とともに、おすすめの食べ方などもご紹介したいと思います!たんぽぽのパワーをいただいて、身体の内側から春を感じてみませんか。

たんぽぽを初めて食べた日

今から15年ほど前の、ある春の日。当時仲良くしていたフランス人の友人が「ちょっと待ってて」と言って近くに生えていた野草の葉を摘み始め、その場で作ってくれたのが「たんぽぽの葉のサンドイッチ」。たんぽぽの葉と茹でたじゃがいも、薄焼き卵、パンに塗られたマスタードの組み合わせが絶妙で、何とも言えず美味しかった!

採ったばかりの新鮮なたんぽぽの葉は、ついボーッとしがちな春の身体を心地よく目覚めさせてくれました。

正直なところ、はじめは「たんぽぽって食べられるの?」と戸惑ったのも事実。それで彼女に話を聞いてみると、フランスなどヨーロッパの国々ではたんぽぽを食べるのは一般的なことだと教えてくれました。たしかに、たんぽぽの葉の味自体は悪くないし、ルッコラなどの野菜にも似ていて上手に使うとむしろ美味しいかも??

私自身はこのエピソードがきっかけで、たんぽぽを食用としても楽しむようになりましたが、実は、古くから日本でも食べられていた植物だったんです!

摘み草料理や、漢方薬にも使われていた

昔から続く、春の行事のひとつ「摘み草」。摘み草とは「野草を採って料理などに使う」ということですが、万葉集にもその様子が歌に詠まれ、江戸時代には貴重な食料源としても人々に親しまれてきました。

江戸時代に書かれた書物『料理物語』の青物(今の野菜)のなかには、たんぽぽやよもぎ、つくし、わらびなどの現在で言うところの野草や山菜なども数多く含まれています。

たんぽぽは漢方薬にも使われています。たんぽぽの生薬名は「蒲公英」と呼ばれ、中国の古書『新修本草』には「味は甘く、平、無毒。婦人の乳腺炎によし」と書かれています。

たんぽぽと聞くと「雑草」のイメージが強いかもしれませんが、古くから食べられてきた立派な薬草のひとつ。

ちなみに、江戸時代のたんぽぽは「カントウタンポポ」「カンサイタンポポ」などの在来種で、現在よく見かける「セイヨウタンポポ」などの外来種とは少し異なります。ただ冒頭にも書いたようにヨーロッパなどでは身近なハーブとして食べられており、外来種のたんぽぽも料理に使うことができます。

さっそく、たんぽぽを食べてみよう!

犬や猫の糞尿や除草剤などの心配がなく、安心できる環境で育ったたんぽぽを見つけたら、ぜひ料理して食べてみましょう(私は庭先のものを摘んでいますが、探してみると身近なところに結構自生しています)。

花も根も全部食べることができますが、「花を摘むのはかわいそう」「根を掘るのはちょっと大変」という方も多いと思います。そこで最初は、葉っぱから試してはいかがでしょうか。

たんぽぽの葉は成長するにつれて、筋が多くなり苦味が強くなります。生で食べる場合には、花の咲く前の葉や小さい葉を選ぶようにしてくださいね。

*たんぽぽなどの野草には強いパワーがあり、体質によってはお腹が緩くなることもあります。初めて食べる時は、少量から始めることをおすすめします。

【おすすめレシピ1】たんぽぽサラダ

たんぽぽの葉と一緒に、旬の野菜を組み合わせたサラダです。たんぽぽの葉だけだと、苦味が強く感じられるかもしれませんが、他の野菜と組み合わせるととても食べやすく、「苦味が美味しい(笑)」という一品になります。

〈材料(2人分)〉
・新玉ねぎ1/2個
・春にんじん2~3㎝
・たんぽぽの葉5~10枚
・くるみなどの木の実 5粒程度
・A:レモン汁または酢 小さじ1
・A:オリーブオイル 小さじ1
・A:塩麴小さじ1/2(または「塩ふたつまみ」)

〈作り方〉
1. 新玉ねぎとにんじんは、薄く千切りにする(スライサーがあると便利だが、なければ包丁でもOK)。
2. たんぽぽの葉は、食べやすい長さに切る。くるみは粗く刻む。
3. 新玉ねぎ・にんじん・たんぽぽの葉・くるみを器に盛りつけ、混ぜ合わせておいたAのドレッシングをかける。

【おすすめレシピ2】たんぽぽ味噌(保存食)

ふきのとうと味噌を使った「ふき味噌」に代表されるように、野草と味噌はとても相性のよい組み合わせです。野草独特の苦みが味噌によって和らぎ、野草の香りが味噌で閉じ込められます。手作りならではの香りを楽しむため、砂糖は使わない甘さ控えめの作り方をご紹介します!

〈材料(作りやすい分量)〉
・たんぽぽの葉 15~20枚程度
・味噌 100g(できれば白味噌)
・酒・みりん 各大さじ1

〈作り方〉
1.たんぽぽの葉は熱湯で茹でた後、水にさらしてアクを抜く。水気をしっかり絞って、包丁などで粗く刻む。
2.鍋に1のたんぽぽの葉・白味噌・酒・みりんを入れて混ぜた後、弱火にかける。木べらなどで混ぜながら、水分とアルコール分が飛んだら出来上がり。

密閉容器に入れて冷蔵庫に保管すれば、1~2週間は美味しく食べられます。ごはんにもお酒にもよく合いますし、焼いた厚揚げに乗せたり、熱湯を注いで「即席たんぽぽ味噌汁」したりするのも私のお気に入りです。

たんぽぽ味噌をたっぷり作っておいて、たんぽぽのパワーを毎日少しずついただきたいですね。

天ぷらや和え物などにも

たんぽぽに限らず野草や山菜の料理法としては、やっぱり「天ぷら」がおすすめです。以前に野草に詳しい先生と一緒に野山を歩き、30種類以上の植物を採集して全部天ぷらにしたことがありますが、油で揚げることでアクが抜けるので、とても食べやすくなります。

また、熱湯で茹でてアク抜きをした後のたんぽぽは、和え物やスープ、炒めものなどさまざまな料理に使うことができます。独特の風味があるので、まずは「普段の料理に少しだけ加えてみる」ことから始めてみるといいかもしれません。

たんぽぽ茶やタンポポコーヒーもおすすめ

たんぽぽを気軽に食べてみたいという場合には、たんぽぽ茶やタンポポコーヒーなどもおすすめです。たんぽぽの根を刻んで乾燥させた後、焙煎して作られます。

たんぽぽ茶は、ごぼう茶にも似た爽やかで香ばしい風味があります。タンポポコーヒーは、戦時中にコーヒーの代用として飲まれていた歴史もあり、見た目はコーヒーそっくり!どちらもノンカフェインなので、お子さんなどカフェインを控えている方にも安心ですね。

日本では昔から「たんぽぽのお茶を飲むと、身体が温まり母乳の出が良くなる」と言われ、産前産後の女性に愛されてきました(私自身も産前からよく飲んでおり、そのためか出産後は母乳のトラブル知らずでした)。

他にも、利尿作用や肝機能を改善する作用などさまざまな効果が期待されており、たんぽぽ茶は現在幅広い年代の方に飲まれています。

わらべ歌でも人気のたんぽぽ

子どもにも親しまれている、たんぽぽ。子どもの頃に、たんぽぽの綿毛を「フゥーッ」と息を吹きかけて飛ばして遊んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。

昨年、そんな子どもの頃の記憶を彷彿とさせるような、素敵なわらべ歌に出会いました。自身の子育てがきっかけで毎月通うようになった「わらべうた教室」で教えてもらったものです。

たんぽぽ たんぽぽ
むこうやまへ とんでけ
(ふぅ~)

最後の「ふぅ~」というところで綿毛を飛ばすのですが、シンプル歌なので覚えやすく、小さい子も身体を揺らしながら歌います(YouTubeなどで動画も公開されているので、詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください)。

たんぽぽの綿毛を見つけたら、ぜひ親子で歌ってみてはいかがでしょうか。昔ながらのわらべ歌には独特のリズムがあって、口ずさんでいると何だかホッとします。子どもの植物への関心も高まりそうで、一石二鳥ですね!

とても身近な植物でありながら、さまざまな効能や歴史的にも深い関わりのある、たんぽぽ。先人の暮らしに思いを馳せながら、食べて歌って、身体の内側から春を感じてみてはどうでしょうか。

書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生ふうど」を立ち上げる。現在は、郷土料理をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://yojofudo.com/