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「若冲(じゃくちゅう)対フェルメール、美の三原色」は究極の異種格闘技戦
たとえるならアントニオ猪木対モハメド・アリです
和樂編集長 セバスチャン高木

一九七六年六月、ある伝説的な格闘技の闘いが行われました。それは「プロレス最強論」を唱え、「いつ何時だれとでも闘う」と公言していたプロレスラー、アントニオ猪木と、当時、WBAとWBCヘビー級の統一チャンピオンとして世界最強の男の名をほしいままにしていたプロボクサーのモハメド・アリが闘うという一戦。ボクシングのヘビー級世界チャンピオンといえば、世界中で知らない者は誰もいないほどの地位と名声を誇る存在。その人物に、日本では人気を博していたといえ、東洋の一介のプロレスラーが挑むなどと言う話は、あまりに奇想天外すぎてどうやって思いついて、開催まで辿り着いたのか想像すらつきません。しかし、それをやってしまうのがアントニオ猪木という漢(おとこ)の真価なのです。

試合は、ほとんどの時間を猪木がマットに背を付けて寝転がり、そこからアリの足をねらう、いわゆるアリキックを繰り出すという展開に終始し、観客は暴動寸前まで怒り狂い、リングにめがけて物が投げ入れられました。試合後は世紀の凡戦などと評されましたが、猪木のキックによってアリの足はぱんぱんに腫れ上がり、そのことによって引退時期を数年早められたとも伝えられています。また、十五ラウンド寝転がりながらひたすらアリの足をねらい続けるという猪木の戦法は極度に体力を消費するものであり、猪木の足もまたしばらく使い物になりませんでした。つまり、ふたりはルールの整備もままならない五〇年近く前に、ボクシング対プロレスという誰もが見たかった真剣勝負を繰り広げたのです。そのことはその後、アリが死を迎える最期まで友情を育んだ二人の姿が証明しているでしょう。

幼心にこの一戦を心に刻みつけた私は、異常なほどに異種格闘技戦に惹かれるようになりました。なんか、ありえないものとありえないものを闘わせたときに生まれる力ってものすごーく大きいと思いませんか。しかも、異種格闘技っていうネーミングがたまらないですよね。当時の男たちは子どもがカブトムシに夢中になるくらい、猪木が唱える異種格闘技戦に夢中になったものです。その時私は心に誓ったのです。いつか自分でも異種格闘技戦をプロモートするのだと。

それから時が経つこと四〇年、ついにその時がやってきました。それが今回の大特集「若冲対フェルメール、美の三原色」なのです。(ああ、また今号も前振りがこんなに長くなってしまいました)

江戸時代の京都に生まれ、動植綵絵(どうしょくさいえ)や鳥獣花木図屛風(ちょうじゅうかぼくずびょうぶ)など、サイケデリックとも言える構図を超絶技巧で描いた伊藤若冲は、今や日本美術界のスーパースター的存在。一方十七世紀オランダ絵画黄金時代を代表する画家であるヨハネス・フェルメールは世界的知名度を誇りながら今なお多くの謎に彩られている孤高の存在。このふたりの闘いほど和樂にとっての異種格闘技戦にふさわしい一戦があるでしょうか。オランダ絵画対江戸時代絵画、天才対決。あー、なんかわくわくしますね。しかし、異種格闘技戦でもっとも大事なこと、それはルールの整備です。アントニオ猪木とモハメド・アリの一戦は、最後までルールでもめ、それがあのような試合内容を生んだとも言われています。そこで、和樂が今回注目したのは「色」。しかもふたりがともに重要視する「白」「黒」「青」を美の三原色とし、それぞれの色で対決したのです。

「東西色の魔術師 奇跡の白原寸対決」「若冲とフェルメール、黒の秘密にズームアップ」「フェルメールから若冲へ、人は青をどう描いてきたのか大研究」など、それぞれの色にふさわしい切り口での対決、どんな試合になったのかはぜひ誌面をご覧ください。しかしこの対決、想像以上にかみ合っていますよ。おそらく、「色の魔術師」と言われた天才画家は時と空間を超えてどこかで通じ合っているのではないか。そんなことさえも思わせる「美の原色対決」です。

そして、付録、付録、付録、重要なことは三回繰り返すよう親からしつけられた私ですが、それほど和樂にとって付録は重要な存在です。今回の付録は「若冲とフェルメール、和洋ごころセット」。和樂のキラーコンテンツである和ごころセットに洋の心までくっつけたという逸品は、若冲の菊の絵を一筆箋と封筒に、フェルメールの真珠の耳飾りの少女をモチーフにしたミニ封筒とミニカードをセットした史上最強の付録にふさわしい出来となっています。また、和樂名物オリジナル商品もつくってしまいました。フェルメール備前焼ピッチャー、フェルメール切子、若冲動物ブラシなど、どれもこれも想像の斜め上をいく出来映えとなっています。

秋になると京都に行きたくなりますよね。もちろん、和樂のスタッフもみなさんと同じ気持ちです。京都で今本当に行きたい店やスポットはどこなのでしょうか。一四〇〇年の歴史を誇る京都ですが、歴史だけではこんなにいつまでも人々を惹きつけるものではありません。京都は長い歴史を誇りながら、常に新しさを取り入れてきた町。「変わらないために変わり続ける」を地で行く町なのです。そんな古都で和樂のスタッフが今どこに行きたいかを大調査。その結果出てきた二〇のトピックスをニュース形式でご紹介します。さあ、京都に行く前に読んでらっしゃい見てらっしゃいの第二特集開幕です。

はい、突然ですが、この号から和樂全日本選手権シリーズが開幕しました。栄えある全日本選手権シリーズ第一回のテーマはずばり「ごはんのおとも」です。取材や遊びで全国を飛び回る和樂のスタッフが愛する「ごはんのおとも」は何か、実名報道でご紹介します。しかも、愛用の飯碗(椀)とともに。不肖私も選手権に参加させていただきました。スタッフのごはんのおともを見ていると、今すぐごはんを食べたくなること間違いなし。もうすぐ新米の季節ですしね、どうぞ第一回の選手権をお楽しみください。

この号で和樂は創刊十七周年を迎えました。みなさまのご支援あってのことだとこの場をかりて御礼申し上げます。本当にありがとうございます。今後とも皆様と一緒に日本文化の旅に出られれば幸いなことと存じます。

LATEST ISSUE 10月号

若冲とフェルメール
美の三原色

9月1日発売(土)

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