Gourmet
2019.09.26

キリン秋味が今年もうまい!コンビニで見つけた最初の秋はこれだった!

この記事を書いた人

地球温暖化が叫ばれ日本でも四季の境目が失われつつあります。特に昨今の猛暑はひどく、9月に入っても夏日が続き、秋の訪れを実感するのが難しい!あれ?でも、なんか8月の終わりになると秋をきちんと感じているのってなぜでしょう? こんなに暑くて洋服もまったく夏と変わらないのに?

なんて「???」な私、和樂webスタッフ・とま子に、編集長のセバスチャン高木からこんな指令が下りました。

高木「あのさ、今度サァ、和樂webのライター陣とともにコンビニでニッポンを見つけてみない?」

とま子「???」

高木「いや、日本文化って知れば知るほど面白いんだけど、ちょっとまだハードルが高いんだよね。だから入り口をぐーんと低くしてできるだけ多くの人に魅力を伝えたいんだよ。とま子ってさぁ、コンビニ毎日行くよね」

とま子「は、はぁ」

高木「ね、だから毎日行くコンビニで日本を見つけて、そこから日本文化に入って欲しいんだよ。とりあえず、とま、見つけてきてよ」

とま子「ま、また、無茶なことを。しかも名前がとま子でなくて、とまになっちゃってるし!」

兎にも角にも、いつもながら唐突かつ無茶ぶりな指令を受けた私たち和樂webのスタッフは、いくつかのグループに分かれてコンビニに!でも、これが!実にさまざまなニッポンにあふれていたのです。他のグループの発見は別の機会に譲るとして、私たちがまず目にしたのが、じゃじゃーん、「キリン 秋味」!

【季節限定】発売29年目 キリン秋味 [350ml×24本]

まだ8月の終わりだというのに、ほぼ満開のモミジがあしらわれた大胆なパッケージにどーんっと秋味の文字。ビール好きにはたまらない秋の走りを感じさせる風物詩です。

ん!ちょっと待ったぁ!今「秋の走り」?、「風物詩」?って書きましたよね。そうなんです。あつ―いあつい8月の終わりなのになぜか秋を感じていたその訳は、コンビニの棚にずらっと並んでいた「キリン 秋味」の赤いモミジを目にしていたからなのです。夏が終わりを迎える頃、コンビニでは早くも秋ならではのスナック菓子やスイーツ、飲料などの季節限定商品が店頭に並びはじめます。秋だけでなく、花見の時期には桜、新茶の時期には抹茶と、日本ならではの旬が彩られるコンビニ。もしかして日本文化の根幹を成す四季を感じる心はコンビニの商品群にも表れているのかも知れません。

そんな疑問を解消すべく、今回はコンビニで最初に見つけた秋、「キリン 秋味」(以下、秋味)に着目し、開発秘話やコンセプトを伺いながら、日本の四季との関係性について考えてみました。

発売29年!「キリン 秋味」がロングセラーになった訳

「秋味」のことを調べてみると意外にその歴史は古いことがわかります。初めて登場したのは1991年9月11日ですから、2019年で発売29年目! 累計で13億本を突破したビール好きにとっては秋の風物詩そのものです。

2019年の出荷数は大瓶換算約54万ケース(約6,880kl)。350ml缶換算すると約2000万本!ちょっと数字が大きすぎて検討もつきませんが、ロングセラーで毎年人気の秋限定ビールです。

今や日本人に一番早く秋を感じさせる存在ともなった(私だけ?)「秋味」はどのように誕生したのでしょう?話を伺ったのはキリンビール株式会社で「秋味」のマーケティングを担当する岸川さんです。

「このビールを開発した当時、実は季節限定ビールというものが市場にはありませんでした。その頃、ビールに求められているものは、“キレ”や“のどごしの良さ”ばかりだったんです。そこで今までにない秋限定の商材、食欲の秋を象徴するようなビールの開発が進められたのです」(岸川さん)

岸川さんによると「秋味」の特徴は、麦芽たっぷり1.3本分(キリンラガービール比)、アルコール度数は少し高めの6%であるということ。これによって深いコクと豊かな味わいを楽しめるのだとか。

秋の味覚・視覚に寄り添う「キリン 秋味」

「秋の味覚であるサンマやきのこ類などはうま味や香りが強いものが多いので、そういった食材に負けない、かつ、マッチするものが良いと考えています。そのため、スッキリ爽快なビールではなく、通常より少し濃いめのビールになるよう設計しています」(岸川さん)

なるほどー! パッケージだけでなくて、味や飲み口も食と結びついているんですね。「秋味」を買うとついついサンマが食べたくなる理由もよくわかりました。

ロングセラーの「秋味」ですが毎年進化しているのは、パッケージのデザイン。歴代の「秋味」のパッケージを見せていただくと、年々秋らしさが豪華に彩られているように伺えます。

開発当時はやや控えめ。だんだんと紅葉の量が増え、秋らしさというのが前面に出ている。途中、秋の余韻を感じさせるようなデザインも。(公式サイトで一覧で公開されています)

「どのようなお客様に対して、どのようなメッセージを伝えたいのかということをブランド担当とデザイン担当でディスカッションをしています。今回のこだわりとしては、バックがクリーム色だったのをゴールドに変えることで、秋の季節感を感じてもらうととともに、秋だけの贅沢感を感じてもらえるようデザインしました」(岸川さん)

たしかにコンビニで「秋だなぁ」と感じさせてくれたのは、このパッと目を引くデザイン。“秋だけ”という季節感も、古来「季節の走り」に惹かれる日本人の心の動きをうまく捉えているといえそうです。

でもどうして、夏に喉を潤おし、ごくごく飲むという従来のビールのイメージから、コクがありじっくりと飲むことを楽しむ「秋味」が多くの人に親しまれ、定番化されてきたのでしょうか?

夏から秋へ“気分のスイッチ”になる期間限定ビール

「開発の背景として、夏から秋に移ろう時のお客様の“気分のスイッチ”になるような飲み物が、商品として表現できるのではないかということがありました」(岸川さん)

夏の蒸し暑さが落ち着き、朝晩が冷え込み始めると、私たちは秋の到来を感じます。「秋味」は四季とともに移りゆく日本人の感覚によりそったビールを目指して開発されたのです。

スーパーで秋の食材が陳列されているのを見たとき、あるいは、外を歩くと金木犀の香りがふわっと漂ったとき。秋の訪れを感じる瞬間はさまざまですが、「秋味」をコンビニや居酒屋で見かけることもその一つ。実際に、購入されたお客様からは「今年も秋が来たなぁ」という季節到来のコメントが多く寄せられているそうです。

先取りは日本の文化!


「秋味」が店頭に並ぶのは、毎年8月下旬頃。2019年は、8月20日に全国で発売されましたが、まだ気分としては夏真っ盛り。パッケージのモミジが赤くなるのは2ヶ月以上先の話ですが…。

「涼しい風が吹き始めると、ビールを飲む気分も変わる。ビールもその気分に寄り添ってもいいのではないかということで開発されましたので、当初の発売日はまさに初秋の9月11日でした。ですが、今では真っ先に秋を感じていただけるように8月の20日前後になっています。正直、営業先の方からは『まだ発売するのは早すぎないか?』と言われます(笑)。ですが、サンマやサツマイモ、栗など、秋の味覚が登場する前、秋の走りとして、役割を果たしているのではないかと思います」(岸川さん)

8月下旬の気温は35度前後。ですが、季節を先取ることは日本文化の重要な要素のひとつです。たとえば着物の花の柄は、実際に咲く時期よりも1ヶ月ほど先取りするのが基本。日本人にとっては、時季が遅れてしまうよりは先取ることの方を優先するのです。

「特にコンビニエンスストアは季節のトレンドに対して敏感なお客様が多い印象です。そのため季節限定や期間限定商品も数多く販売されています。そのような季節による回転の速さは日本ならではだと思います」と季節限定商品の難しさを語る岸川さん。
ですが、それも言い換えれば日本人が“旬”をいかに大切にしているかということの証明になるのかもしれません。そもそもビールの商品名に季節の名を付けて、しかも秋限定で販売したものが30年近く続くということ自体が、世界に類を見ないことではないでしょうか。

四季の移ろいを楽しむ日本人

今回の「コンビニで見つけたニッポン=秋味」は、四季の移ろいを楽しむ、古から脈々と受け継がれてきた日本の文化を想起させます。たとえば、「春はあけぼの…」という有名な冒頭文で知られる『枕草子』。「夏は夜…」「秋は夕暮れ…」「冬は早朝(つとめて)…」と、作者・清少納言は細やかな観察眼で、四季折々の風情を、時間の経過を取り入れながら記しました。

「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫のねなど、はたいふべきにあらず。 」

清少納言は、秋といえば夕暮れ時。夕焼けにカラスが3羽、4羽飛んでいる姿、列をなした渡り鳥が小さく見えていく情景はたいへん趣深く、日が落ちてからも風が植物の葉を揺らす音、虫の鳴き声も秋ならではの味わいを感じる瞬間だと記しました。

現代の都市生活者にとって、清少納言が見たような情景はなかなか感じられないのが現状です。ですが、「秋味」を見かけた時、秋の到来を感じる心持ちになること、あるいは、「秋の味」というビールが商品として成立してしまうこと、実はそれ自体が日本独特の文化であり、「コンビニで見つけたニッポン」なのかもしれません。

「キリン 一番搾り」にも日本文化の伝統が!

今回は「秋味」についての取材でしたが、岸川さんはなんとあの2019年春にリニューアルし好評の「キリン 一番搾り」のブランド担当でもあるそう。最後に一番搾りについてもお話を伺ってみると、なんと!こちらでも日本らしさを見つけてしまいました。それは、製法を商品名にしているということ。

「『一番搾り製法』とは、ビール製造の加工において素材である麦から最初に流れ出る贅沢な『一番搾り麦汁』だけを使う製法のことで、おいしいとこだけ搾ったこだわりの製法です。味の良さはもちろんですが、製法がそのままビール名になっている商品は珍しいのではないかと思います」(岸川さん)

ユネスコの世界無形文化遺産にも登録され、近年では世界中でブームになっている和食。その大きな特徴の一つが料理人が客の目の前で調理をすることです。できあがった料理だけでなく作る過程をも重要視するのが和食の魅力。作る過程=製法にこだわり、製法自体を商品名にしてしまう「一番搾り」は知らず知らず日本文化の伝統を受け継いでいるのかも知れません。

【季節限定】発売29年目 キリン秋味 [350ml×24本]

撮影/白方はるか

書いた人

1995年、埼玉県出身。地元の特産品がトマトだからと無理矢理「とま子」と名付けられたが、まあまあ気に入っている。雑誌『和樂』編集部でアルバイトしていたところある日編集長に収穫される。趣味は筋トレ、スポーツ観戦。