たそがれは漢字で「黄昏」と書き、そのアンニュイで耽美(たんび)な響きのためか、小説や映画などたくさんの作品のタイトルとなっています。
でも、改めて考えてみると「たそがれ」って不思議な言葉ですよね。いったいどんな意味なのでしょう?
美しいけれど怖い時間……
たそがれは、古くは「たそかれ」と言っていました。薄暗くて人の見分けがつきにくい時刻のことで、「誰(た)そ彼(かれ) ※あれは誰? の意味」と思ってしまうような状態です。夕暮れ時であることから、ものの盛りが過ぎたころのことも指します。
誰だか分からないけれど、いる。そんな不安な状態からか、たそがれは大きな禍(わざわい)が起きる時刻「大禍時(おおまがとき)」とされ、「ま」という音の類似から魔物の「大魔時(おおまがとき)」「逢魔時(おうまがとき)」へと転じていきました。
ちなみに、「かわたれどき(彼誰時)」という、たそがれと同じ発想から出た言葉があり、こちらは主に明け方を指すようです。
「たそがれ」いろいろ
でもやっぱり、たそがれは少し気だるくて美しい情景でもあります。
黄昏バリエーションがとてもエモかったので、一挙にご紹介いたします!
黄昏顔(たそがれがお)
黄昏時の、なにか物を思っているような顔のこと。
黄昏草(たそがれぐさ)
夕方に花が咲く植物、夕顔(ゆうがお)の別名。
黄昏月(たそがれづき)
黄昏時の月のこと。陰暦の3~4日ごろ、夕方に見える月です。
黄昏鳥(たそがれどり)
ホトトギスの別名。夜に鳴くこともあるため?
黄昏藤(たそがれふじ)
黄昏時に、いっそう趣ある風情となっている藤の花。
アイキャッチ画像:歌川国貞『遮那王僧正谷に兵術を学ぶ図』メトロポリタン美術館より
参考文献:
・『日本国語大辞典』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館