Travel
2019.08.15

清澄白河を1日観光。カフェや雑貨店など散歩で巡る観光スポット5選

この記事を書いた人

東京の下町、深川の一角にあり、門前仲町の北に位置する江東区「清澄白河」。コーヒーの町、アートの聖地と呼ばれる清澄白河ですが、私とま子が真っ先に思い浮かべるのはブルーボトルコーヒーの日本1号店。そんなイメージでしたが、商品開発のためにこの町の江戸切子メーカーを訪れるうちに、一体この町には他にどんなお店があるんだろう? と興味が湧いてきました。というわけでお天気の良い2月中旬、清澄白河を1日かけて散策してきました。

清澄白河と奥の細道の関係

「月日は百代(はくたい)の過客(くわかく)にして、行きかふ年も又旅人也」(現代語訳/時は永遠の旅人で、人生は旅そのものである)という時間を旅人に例えた有名な序文からはじまる、松尾芭蕉の俳諧紀行「奥の細道」。旅を愛し、日本各地に訪れた芭蕉は、そこで見た風景から数多くの名句を残しました。

清澄白河芭蕉庵史跡展望庭園の芭蕉像。

そんな芭蕉が人生を旅の中に生きようと決意し、弟子の河合曾良(かわいそら)とともに「奥の細道」を出発したのが東京・深川です。清澄白河含めこの深川エリアには出発地をはじめとした、芭蕉ゆかりの地が数多く存在します。

清澄白河=ブルーボトルコーヒーというイメージが強く、右も左もわからない私は、日本各地をさまよい歩いた芭蕉のように清澄白河駅周辺を散策してみることに。まずは、清澄白河の象徴的な観光スポット「清澄庭園」へ行ってみましょう!

スポット1.東京都指定名勝「清澄庭園」

清澄白河

清澄白河駅から西へ3分歩いたところに「清澄庭園」はあります。こちらの庭園は、池の周囲に築山、枯山水(水を一切使わず、自然の風景を表現した庭の形式)を配した「回遊式林泉庭園」。この「回遊式庭園」とは、庭の苑路を進み、回遊しながら変わっていく風景を鑑賞する庭園のこと。季節によって多様な草花が花開き、川と海に近いことから種々の野鳥がここに訪れます。

ぐるりと池の周りを回ってみると椿が咲いていたり、大きな鯉が足元まで泳いできたり…。全国から集めた名石をあちこちに配したこの池を巡ると、四季折々の表情を楽しむことができます。

清澄白河池の端に石を点々と置き歩けるようにした“磯渡り”は石に移るたびに景観が変化するように配慮されている。

清澄白河に住む人は、清澄庭園の年間パスポート(一般600円、65歳以上280円)を購入して、景色を眺めながらお弁当を食べたり、のんびり過ごす人も多いのだとか。都会のど真ん中に位置するのどかな庭園は、日々の忙しさを忘れさせてくれます。

清澄白河小石…かと思ったら、亀を発見!

◆清澄庭園
開園時間 9:00~17:00(入園は16:30まで)※イベント開催期間及びGWなどで時間延長が行われる場合もあります。
休園日 年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
住所 東京都江東区清澄2-3
アクセス 都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅A3出口より徒歩3分
入園料 一般150円/65歳以上70円(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
公式サイト

スポット2.レトロな空間で特別な時間が過ごせるカフェ「fukadaso CAFE」

レトロな外観に赤い旗や看板が差し色になってひときわ目立つ「fukadaso(ふかだそう)」は、築50年の解体寸前だった2階建てアパート「深田荘」を、壊さず、作り込まず、手入れをした複合施設。中には、雑貨の専門店やワインの販売店、美容のお店などが入っています。こちらの管理人さんの営むカフェが1階にある「fukadaso CAFE」です。

清澄白河

「元々カフェ経験はなかったのですが、お菓子を作ったりするのは好きで。ほんとは優雅にアパート経営をしたかったのですけれど(笑)」と気さくにお話してくださったのはfukadaso CAFEの佐藤奈美さん。

「昔ながらのお店と新しいお店が調和している清澄白河は、住んでいる人、訪れる人も世代が幅広くて面白いです」(佐藤さん)そんな町の面白さからこちらのカフェは、町イベントの会場になることもあり、人が集まり、繋がる場所でもあるようです。

清澄白河には昔からお店同士の繋がりやゆるやかなご近所付き合いがあるため、町の情報が回って来たり、町のイベントで人と人が繋がる風土があるんだそう。そんな昔からの良さを受け継いで、ふらりと立ち寄り息抜きができる憩いの場にしたいとオープンしたのがこちらのカフェです。

清澄白河

人気メニューはプレーンのパンケーキとチーズケーキ。広々とした店内には、カウンター席、テーブル席、アンティーク調のソファ席も充実。美味しい食事やドリンクをいただきながら、レトロな空間でゆったりと過ごすことができ、とても居心地の良い場所でした。

清澄白河注文したパンケーキはふっくら素朴な味わい。定番だけどやっぱりコーヒーと合わせて食べたい。

◆fukadaso CAFE
営業時間 月・木・土・日曜日 13:00~18:00,金曜日13:00~21:30(21:00 L.O)
定休日 火・水曜日 ※イベント開催等により不定期に休業する場合があります。
住所 東京都江東区平野1-9-7 fukadaso101号室
アクセス 都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅A3出口より徒歩5分
公式サイト

スポット3.ノスタルジックなガラス加工専門店「GLASS-LAB」

次はfukadaso CAFEのはす向かいにある「GLASS-LAB」へ。こちらはカスタマイズグラスの企画・製作・販売、ガラス製品への切断や磨き、穴あけなど加工全般を専門とするガラス加工専門店。代々家業として受け継がれてきた「椎名硝子」のガラス加工技術を活かして、一般のお客様向けに長男の椎名隆行さんが起業・経営しています。

清澄白河

ギフトに最適なオリジナルグラスの製作やガラス加工体験も!

名前やロゴ、メッセージ入りのオリジナルグラスは対面で相談をしてから製作してもらえるので、お祝い事などの心を込めたギフトに最適! ガラス製品への加工は、例えばワインボトルを縦や横に切断しておしゃれな花入にすることもできます。

清澄白河江東ブランドに認定された「砂切子 サクラサク」

数ある商品の中でも、江戸切子の一種「平切子」と「サンドブラスト」2つの職人技を掛け合わせた「砂切子 サクラサク」は、2018年のインテリアの展示会で話題を呼び、江東ブランドにも認定されています。グラスに水を注ぐと、底にサンドブラスト加工した桜が平面研磨した部分にドラマチックに映ります!

清澄白河笑顔がさわやかな椎名さん。清澄白河で町おこしイベントを開催するなど、地域のハブのような存在です。

65年以上続く、椎名硝子の作業場は創業当時そのままでノスタルジーな雰囲気。土日、祝日は作業場の見学、ガラス加工の体験も可能です。椎名さん指導のもと伝統工芸品江戸硝子の魅力を体感できます!

◆GLASS-LAB
住所 東京都江東区平野1-13-11
アクセス 都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅A3出口より徒歩5分
※工場見学・ガラス加工体験は土日・祝日要予約
公式サイト

スポット4.こだわりのジャムなどの保存食が購入できる「HOZON」

清澄白河元々製本所だった建物をリノベーションした店舗。壁を塗り替えたり、天井にはドライフラワーが吊るされていたり、お店の装飾がかわいい!

ふらっと深川江戸資料館通りまで歩き、その近くで見つけたのが保存食専門店「HOZON」。こちらでは、新潟県の離島、佐渡島の素材を使った自家製ジャムやシロップ、リキュール、日本全国の素材を使った自家製の保存食、そのほか保存が効く商品をセレクトしています。店内に入ると、色とりどりの商品が360度ずらりと並び、見ているだけでも楽しいお店です!

清澄白河店内の保存食は300〜400種類ある中から約200種類に厳選して陳列。

佐渡島で採れた旬な素材を使って製造された“佐渡保存”は、島から全国へ佐渡島の魅力をアピールするために2017年に始まったプロジェクト。

新潟の北に位置するこの佐渡島は、南からの暖流と北からの寒流がちょうど交わる場所です。その影響から、暖かい土地、寒い土地どちらの食材も採ることができ、米、レモン、シークワサー、ゴーヤー、さくらんぼ、魚介など素材が豊富。そんな佐渡島の素材を、こうして保存食として瓶に詰められたこの商品には、島全体で朱鷺(トキ)を守るために農薬や化学肥料を控える人々の気持ちも詰まっています。

清澄白河商品のPOPにはアレンジ方法も紹介。

プロジェクトが始まった時は佐渡島を拠点に“佐渡保存”の商品をつくっていましたが、オープンと同時に製造もこちらに移すことに。「清澄白河にはいろんな専門店がありますよね。こだわりのものを求めたいという方が多く、住宅街なのでファミリー層も多い。そういった人たちにアプローチできるので、自分たちの色が出せる場所だと思います」と話すのは、HOZONを運営する合同会社「ひととき」代表の武田俊さん。

よく見ると、不思議な組み合わせのジャムが豊富にあります。「ジャムはパンに塗るだけでなく、お肉や魚などの料理にも合うものを作っています。一捻り、二捻り、いろんな組み合わせのものを開発して、ジャムの楽しみ方を提案したいと思います」(武田さん)

清澄白河佐渡の素材を使った個性豊かなジャム

中でも人気商品は、ゴボウを刻んでジャムにした「ゴボウトユズミソ」。これがサバとチーズによくあうのだとか。気になるジャムを選んだら、お店の方にアレンジ方法を聞いてみると、ジャムの楽しみ方の幅も広がります! 季節によって使う素材も異なるので、いろんな種類のものを試してみるのもおすすめです。

◆HOZON(直営店舗)
営業時間 木・金・土・日曜日 11:00〜19:00
定休日 月・火(月曜日が祝日の場合、水曜日がお休み)
住所 東京都江東区三好2-13-3
アクセス 都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅A3出口より徒歩7分
公式サイト

スポット5.人と人、人とモノが出会う場所「ten」

HOZONから20分ほど歩いて訪れたのは、2019年2月にオープンしたばかりのお店「ten」。隅田川大橋の真下に建つこちらのお店には日本の職人や作家が作ったうつわや雑貨、そのほかオリジナルプロダクトやアパレル商品などがディスプレイされています。

清澄白河建物の正面は工場側でシャッターを締め切っているため、お店に入るときは正面左側の細い通路を通って、川沿いまで出て裏口から入ります。

清澄白河試着室の奥には併設した工場があり、扉を開けるとまるで異世界のような空間が。

一見セレクトショップ? と思うかもしれませんが、ここは人と人、人と物が出会う場所。お店には金属加工の工場が併設されていて、金物職人の河合広大さんが在中しています。ショップと工場は扉ひとつを挟んで行き来できるので、ものづくりに興味があるお客さんは工場へ、また職人もショップ側に来られる構造になっています。

店内にある、壁に沿った大きなスロープ、ドア、テーブルなどはすべて内装業や什器を専門とする河合さんが製作したもの。ちなみにこれらも全て購入可能な売り物です。

清澄白河茶の湯をはじめて5年目という山本さん。「お店では、お茶を飲みながらゆっくり過ごしていただきたいです」とお茶を点ててくださいました。

「職人はほとんど現場と工場の行き来で、不特定多数の人と会う機会がないので、若い世代の人が育ちにくい現状があります。その世代に刺激をあたえられるように、職人の仕事と人がふれあう機会をつくりたいと試行錯誤した結果、工場が併設されたショップをオープンするに至ったのです」と話す山本沙枝さん。

元々アパレル勤務でしたが、じっくりと時間をかけてつくる日本のものづくりに惹かれ、日本の作り手を1人でも多く紹介したいとショップを立ち上げた山本さん。そんな思いを体現したこのお店は、セレクトショップという言葉だけでは語れません。

清澄白河

清澄白河はデザイナーさんや建築士が多く、ものづくりをするには良い町。「物を売るだけでなく、お客さん同士も話し合いながら仕事が生まれたり、繋がる何かをここで生み出せればいいなと思います」(山本さん)

日本のものづくりに囲まれた空間で、美味しいお茶とお菓子もいただき、隅田川の川の流れのようにゆっくりとした時間を過ごすことができました。

◆ten
営業時間 13:00〜19:00/不定休(オープン日はInstagram@10_tokyoにて)
住所 東京都江東区佐賀2-1-17
アクセス 東京メトロ半蔵門線 水天宮前駅2番出口から徒歩5分,​東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅A3出口から徒歩14分
※入り口正面は工場です。店舗へは工場横通路を通り裏へまわってください。
公式サイト
▼tenについてくわしい記事▼
職人の世界、和の世界をつなぐ、清澄白河のセレクトショップ「ten」

最後は、隅田川沿いを歩いて芭蕉像へ

清澄白河奥に見える清洲橋は塗装塗替え工事中。

お昼頃から5つのスポットを巡り、気づけば夕焼けが綺麗に見える16:30頃。「清澄白河 奥の細道」の最後は芭蕉先生にご挨拶して締めくくります。芭蕉庵史跡展望庭園にある芭蕉像が、17:00になると隅田川の方向に45度向いてライトアップする、という噂を聞きつけて…。カメラスタンバイしました。

清澄白河芭蕉庵史跡展望庭園の開園は9:15~16:30。像が回転するところを間近では見られないので、川沿いでスタンバイ。

やったー! 芭蕉先生が「お疲れさま」と言ってくれているかのようにこちらを向いてくれました。芭蕉先生は「奥の細道」で“不易流行”という俳諧の理念のひとつを見出しています。それは、新しみを求めて変化していく流行性が実は俳諧の不易の本質であり、不易と流行とは根元において結合すべきであるとするもの。

思えば今回巡ったスポットは、元々あった空きアパートや倉庫をリノベーションしたり、昔からある技術を新しい形でアプローチしたり。下町の風情を残しながらも新しいものが生まれていくこの町は、まさに“不易流行”なのだと気付かされた「清澄白河 奥の細道」でした。

文/とま子 撮影/白方はるか