「肥後守(ひごのかみ)」「薩摩守(さつまのかみ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
昔の地位? 役職名? それもその通りなのですが、それぞれ、現代も生き続けている、ある物やことを指す言葉なのです。
○○守とは?
「○○守」というのは、律令制において中央政府から地方へ派遣され、その国の政務を司っていた役人の長を言います。後に名ばかりのものとなって、政治とは関わりのない人にも与えられた名称なのですが、現代においては、もともとの意味からは想像できないようなものとなっています。
かっこいい「肥後守」
「肥後」とは、現在の熊本県の旧国名です。
「肥後守」は、明治の廃刀令後、肥後国の御用鍛冶が作りはじめたのが起源とされる折り畳み式小刀で、鞘に「肥後守」と銘が切ってあるものです。
大正中期~昭和前期にかけて大流行し、今でも熱烈なファンが多数います。
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かっこ悪い「薩摩守」
「薩摩」とは、現在の鹿児島県の旧国名です。
「薩摩守」というのは、実は言葉遊びからきた洒落で、薩摩とは関係がありません。
そして、この言葉の意味は「無賃乗車」。
ちょっと何言ってるか分からない、ですよね? 理由は、こうです。
平忠度(たいらのただのり)という平家の武将が平安末期にいました。
清盛の異母弟で、非常に美しい和歌を詠み、能などの題材にもなった人気の人物なのですが、この武将の役職が「薩摩守」だったのです。
つまり、「薩摩守忠度」→「ただのり」→「タダ乗り」、で「無賃乗車=薩摩守(ただのり)」というわけ。
本家の忠度さまにしてみれば、名誉毀損もはなはだしいのですが、裏を返してみれば、それだけ名前を知られていた、ということでもあります。忠度さまにおかれましては、さぞやご立腹とは存じますが、どうぞ広いお心でお許しいただき、現代の「薩摩守」出現防止にご協力いただけたらと思います。
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アイキャッチ画像:月岡耕漁『俊成忠度 能楽図絵より』シカゴ美術館より