鎌倉御家人が語る、鎌倉殿の13人予習シリーズ~(ドンドンパフパフ)サクッと始めるぞ、第2回は「北条宗時(ほうじょう むねとき)」だ!
……第2回目にして、オレが全く面識ない人物が出て来てしまった。実は北条宗時殿はオレが生まれるより前に亡くなってしまっているのだ。
というわけで、今回はガッツリネタバレが含まれるから、何も知らない真っ白な状態でドラマを楽しみたい人はこれ以上読み進めるのをオススメしない。忠告したからな! 自己責任だぞ!
おっと紹介が遅れたな。オレの事は、尼御台(あまみだい=北条政子)の事を語った第1回を参照して欲しい。
史料上の北条宗時
オレが面識ないので、オレも史料に当たらざるを得ないんだが……うん。その史料すらほぼないんだ、宗時殿は。
まず生まれた年すら不明。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主人公である北条義時の兄である事は間違いない。しかし、尼御台の兄なのか、弟なのかはハッキリしない。まぁ役者の実年齢を鑑みるに、ドラマでは兄という設定なのかもしれない。
さらに宗時殿が確認できる史料は『吾妻鏡』なのだが、その『吾妻鏡』は治承4(1180)年4月9日から始まる。そして宗時殿の初登場が同年8月20日で、亡くなるのは8月24日だ。……短い。あまりにも歴史上での登場期間が短いのだ。
▼吾妻鏡についてはこちら
眠れないほどおもしろい吾妻鏡―――北条氏が脚色した鎌倉幕府の「公式レポート」 (王様文庫)
北条家と頼朝様
『吾妻鏡』は、以仁王(もちひとおう)という皇族が、「全国にいる源氏たちは武力蜂起して、平清盛を倒せ」という命令書を発行するところから始まる。その命令書は伊豆の北条氏の監視下で流人(るにん)生活を送っていた頼朝様にも届いた。まるでハリー・ポッターみたいな始まり方だな! 多分ドラマもそこら辺から始まるのではないかなぁと思っている。
なぜ頼朝様が流人生活をしているのかと言うと、平治(へいじ)の乱という、平清盛VS.アンチ清盛の合戦にアンチ清盛側で参戦して敗けてしまったからだ。ここら辺の詳細は話すと長くなるので、割愛。
北条は元々平家の家人(けにん)なのだ。だから頼朝様という流人を預かっていた。頼朝様も命令書を貰ったはいいが、平家の家人にガッツリ監視されているどころか、そこの娘(北条政子)との間に子どもまで作っちゃってるし、そもそもイマイチ勝てる確証もないしなぁと思って一旦既読スルーする。以仁王とそれに従った源氏たちの軍勢は敗けてしまい、以仁王も亡くなった。
けれど以仁王の挙兵により、以仁王の命令書を受け取った源氏たちへ清盛勢力からの圧力が増す。それに抵抗しようとアンチ清盛の勢いにも火が付いた。頼朝様も反旗を翻す決意をし、北条家も協力する事となる。
この時の北条家の決断が、鎌倉幕府に繋がると思うと、ものすごい大博打に勝ったのだなぁ、北条家は。
北条宗時の最期
治承4(1180)年8月17日。頼朝様は協力者とともに、伊豆に勢力を持つ平家の家人・山木兼隆(やまき かねたか)を討ち取る。頼朝様の挙兵を知らせを受けて、今度は相模国で勢力を持っていた平家の家人・大庭景親(おおば かげちか)が兵を差し向けた。
頼朝様は援軍が来るまで持ちこたえようと、大庭軍と戦う。それが8月20日。戦場は伊豆と相模の境にある石橋山。しかし台風が直撃したため援軍は遅れ、頼朝様は敗北してしまった。頼朝様と北条家は分散して敗走する事となる。少人数で動いた方が敵に見つかりにくいだろうという作戦だった。頼朝様は真鶴から船で。時政・義時父子は箱根方面へ。そして宗時殿は三島方面へ逃げた。
時政・義時親子と宗時殿が分かれた理由はわからない。時政たちは箱根を通って甲斐国にいる仲間へ報告に行くような事が『吾妻鏡』には書かれているので、宗時殿も西の方へ報告に行く必要があったのかもしれない。
時政・義時親子は、途中で「やっぱり報告は後回しにして頼朝様と一緒にいよう」と頼朝様を追いかけた。けれどいつの間にか追い抜かすんだが、その話は今回はおいといて、8月24日。宗時殿は逃げてる途中で、敵に囲まれて討死してしまった。
その死に様の詳細は、『吾妻鏡』には書かれていない。宗時殿が討ち取られた平井郷(現・静岡県田方郡函南町)には、宗時殿の墓がある。JR函南(かんなみ)駅のすぐ近くだから、機会があれば手を合わせに行って欲しい。
▼ガイドブックもチェック
NHK 2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」THE BOOK
北条宗時役の片岡愛之助殿について
そんな登場期間がめっちゃ短い事が確定している宗時殿だが、演じるのはなんと片岡愛之助殿! ……えっ? ここに? 使っちゃうの? 愛之助殿を……?
しかし、その愛之助殿のコメントがこちら。
『義時の兄。平家打倒を訴える熱き夢想家』
打倒平家に燃えたその夢想家の熱意は相当なものだったと想像がつきますし、今回はその熱量をいかに表現できるかに懸かっていると感じています。
あ、これ……愛之助殿があの迫力ある演技で、凄まじい熱量を放出するやつだ……。一瞬、だけど閃光のように……! 絶対、主人公の義時と視聴者の瞼の裏に、放った光で最後の姿を焼き付けて、ことあるごとにフラッシュバックさせるやつだ……。
まだ始まってもないというのに、そのシーンを想像するだけで涙が……。くそぅ、三谷殿がキャスト発表だけで泣かしにかかって来る! みんな! 宗時ロスになったらJR函南駅に行こうな!
関連人物
父:北条時政
義理の母:牧の方
兄弟:北条政子 北条義時 阿波局
人物相関図:
『鎌倉殿の13人』予習にぴったり!源平合戦~鎌倉初期を相関図で解説!
「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧
「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!
1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)