9月16日から三井記念美術館では『驚異の超絶技巧!-明治工芸から現代アートへ-』が開催されます。これは、2014年に大好評を博した『超絶技巧!明治工芸の粋』展の第2弾。いつの時代のものであっても、技術とともに魂の宿る作品に、人々は惹かれてきました。
今回は新たな試みとして、明治工芸と現代作家のコラボレーション作品が多数展示。観る人にとっても新鮮な出合いの場になるのではないでしょうか?
「見ればわかる!」の超絶技巧に興奮必至!
象牙でつくったリアルな胡瓜。「なぜ胡瓜?」という素朴な疑問などものともしない、「わかりやすいすごさ」で、観る者を圧倒します。
「安藤緑山は、2014年の『超絶技巧!明治工芸の粋』展をきっかけに注目され、新発見の作品も出てくるなどして、今では当時の倍くらいの作品を把握できるようになりました。しかし、亡くなったのが1955年なのに、人物像や、制作方法については謎のまま。失われてしまった超絶技巧だといえます」(小林祐子さん 三井記念館美術館 主任学芸員)
「牙彫(げちょう)」と呼ばれる象牙彫刻。なかでも緑山は、「一度彫り間違えたらそこで終わり、というところまで攻める」(小林さん)ことで、細密な造形を生み出し、さらに独自の彩色によって、本物以上に本物らしい作品をつくり上げました。途中まで皮が剥かれたバナナやみかん、大きな松茸やしめじ、ちょっと虫に喰われた栗…。まさに驚きの連続です。
安藤緑山 『胡瓜』 個人蔵
「作品のバランスも見どころのひとつ。接地面がすごく少ないのです。この『胡瓜』も3点でピタッと落ち着くし、丸い野菜も、ある1点でピタッと止まる。ガタガタしないんです。日本画家の山口晃さんは『胡瓜』に『活けてある』とコメントをくださいましたが、まさにそう。複雑な形の重い象牙作品を、完璧に計算してつくっている」(小林さん)
さらに今回の展覧会では超絶技巧のDNAを受け継いだ現代作家の作品も展示。一木造りの食べ残しのサンマや、蛇革の鞄を表現した有線七宝など、一度は断絶したかに思えた、リアルをどこまでも追求し続ける明治工芸の魂が、確かに今もそこにあることに感動します。
「実は、三井記念美術館で現代アートを展示するのは今回が初。観る人にとっても新しい出合いになるといいなと思っています」(小林さん)