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2026.01.26

ご当地おでんで巡る日本の冬!「ちくわぶ」は関東限定?

寒さが身に沁みるこの季節、なぜか無性に恋しくなるおでん。実は同じ「おでん」でも、その形は地域によって驚くほど多彩であることをご存じでしょうか。当たり前だと思っていた我が家のおでんが、実はその土地にしかない特別な味だった……。おでんを紐解けば、そこには代々受け継がれてきた土地の物語が眠っているのです。

おでんってそもそも何? 田楽から生まれた日本の冬の定番

おでんは、だしに調味をして、さまざまな具材(おでん種)を長時間煮込む、日本の煮物・鍋料理のひとつです。大根、こんにゃく、卵、厚揚げ、ちくわなどの練り物……。このあたりは、コンビニおでんでもおなじみですね。
「おでん」という言葉は、もともと豆腐田楽を意味する女房言葉に由来するとされ、室町時代にはすでに文献に登場します。串に刺した豆腐に味噌を塗って焼く「田楽」に、丁寧な言葉を意味する接頭辞「お」がついたのが、その名の由来だとか。

江戸時代には、味噌をつけた田楽から、だしで煮込むスタイルへと発展。そこに野菜や練り物が加わって、現在の「鍋で煮込むおでん」に近づいていきました。
さらに明治以降は、屋台や居酒屋、家庭料理として全国に広がり、現代ではコンビニエンスストアの店頭にも並ぶ、冬の風物詩になったのです。

江戸から全国へ。土地の数だけ存在する「おでん」の物語

全国各地の「ご当地おでん」は、江戸時代に醤油の普及とともに誕生した「煮込みおでん」が明治以降に全国へ広まり、その土地の調味料や特産品と出会って独自の進化を遂げたものです。

鰹節ベースの出汁に濃口醤油を効かせた「関東風」と、昆布だしに淡口醤油を加えた「関西風」というふたつの大きな潮流はありますが、それだけではありません。名古屋の「味噌」や沖縄の「豚だし」、さらには特産の魚介を用いる港町の味など、地域の食習慣を色濃く反映した個性豊かなおでんが、各地の冬を彩っています。

おでんという料理は、日本の食の歴史と風土が混じり合って生まれた「多様性の結晶」と言えるでしょう。

その土地らしさが宿る、ご当地おでん

全国を見渡すと、使う具材も、つけだれや薬味などの「食べ方」もさまざま。ここからは、公的機関や自治体サイトなどで紹介されている情報をもとに、各地で親しまれているご当地おでんをピックアップしてご紹介します。

※記述している特徴は、農林水産省「うちの郷土料理」、地方自治体や観光協会の公式サイトなどで確認できる範囲に限っています。

1、青森「生姜味噌おでん」 厳しい寒さを凌ぐ北国の知恵

画像提供:青森のうまいものたち(あおもり産品情報サイト)

青森市や八戸市など青森県各地では、具材をだしで煮込んだおでんに、生姜を効かせた味噌だれをかけて食べる「生姜味噌おでん」が親しまれています。

この食べ方は戦後の闇市の屋台で、厳しい寒さの中、青函連絡船に乗る客の体を温めようと提供されたのが始まりだとか。もともと味噌文化が根付いていた土地柄もあり、今では地域の味として定着しています。

具材には、陸奥湾名産のツブ貝や根曲がりだけ(たけのこ)、薄くて大きなさつま揚げ「大角天」、大ぶりな「ぼたん焼きちくわ」など、青森ならではの食材が入ります。雪国らしい、体の芯から温まりそうなおでんですね。

2、東京「ちくわぶ入りおでん」 おでん発祥の地、江戸の味

出典:農林水産省ウェブサイト

東京のおでんは、鰹節と昆布でとっただしに、練り物や大根、こんにゃく、卵などを入れて煮込むおでんです。

農林水産省「うちの郷土料理」では、東京のおでんの特徴として、「ちくわぶを入れること」が挙げられています。小麦粉を練って作るちくわぶは、関東ではおなじみの具材ですが、他の地域の方からすると「これは一体……?」となるほど認知度の低い存在だそう。だしのしみ込んだちくわぶは、すいとんのような、もっちりとした独特の食感です。

3、静岡「静岡おでん」 黒いつゆと串刺しスタイル

画像提供:するが企画観光局

静岡市を中心に広がる「静岡おでん」は、濃口醤油と牛すじなどで取った色の濃いだしで具材を煮込むのが特徴です。

竹串に刺した具を鍋に並べ、食べるときにイワシやカツオの削り節と青のりを混ぜた「だし粉」をふりかけるスタイルが、農林水産省や静岡市の資料でも紹介されています。黒はんぺんなど、港町らしい具材も魅力。
静岡市中心部には「青葉おでん街」「青葉横丁」といったおでん街もあり、屋台文化の名残を感じることができます。

4、宮崎・都城「都城おでん」 鶏ガラだしとキャベツが主役のソウルフード

画像提供:都城市

宮崎県都城市では、おでんは「冬の定番」というだけでなく、一年を通じて楽しまれてきました。市内には多数のおでん屋があり、畜産が盛んな土地柄らしく、鶏ガラをベースに昆布やかつお節を合わせた、コクのあるだしが一般的なのだそうです。

関東のおでんと比べると、練り物は控えめで、肉や野菜が主役。とろとろに煮込んだ豚軟骨に、歯ごたえのあるキャベツ、「おやし」と呼ばれる大豆もやし、具がたっぷり詰まった特大サイズの巾着などが代表的な具材として挙げられています。

これらのおでん種を大皿に豪快に盛り付け、だしをたっぷりかけてみんなで囲むスタイルも、都城おでんならでは。盆地特有の冷え込む冬はもちろん、暑い季節にも食べられてきた「年中おでん」の文化は、市民の暮らしにすっかり溶け込んだソウルフードと言えそうです。

5、愛知「味噌おでん」 八丁味噌のこく深い世界

出典:農林水産省ウェブサイト(画像提供元:あいちの郷土料理レシピ50選)

愛知といえば味噌文化。おでんも例外ではなく、かつおだしに八丁味噌などを加えたつゆで、牛すじや里芋などを煮込む「味噌おでん」が知られています。

伝統的なスタイルは、土鍋の中央に味噌壺を置き、周囲で煮えた具を竹串に刺して味噌をつけながら食べるというもの。おでんのルーツである「味噌田楽」の面影を強く残しており、江戸で醤油ベースの煮込みおでんが広まる一方で、愛知ではこの味噌を付けて食べる文化が独自の進化を遂げ、根付いたと考えられています。

その浸透ぶりは、学校給食に取り入れられたり、コンビニでおでんを買うと味噌ダレがついてきたりするほど。まさに、世代を超えて愛される郷土の味です。

6、石川「金沢おでん」 源助だいこんと海の幸

画像提供:石川県観光連盟

北陸の城下町・金沢で親しまれる「金沢おでん」は、透き通ったあっさり味のだしが特徴。具材には、北陸ならではの「赤巻きかまぼこ」や「バイ貝」、だしをたっぷりと吸い込む「車麩」などが並びます。

画像提供:石川県観光連盟

なかでも、11月〜12月のわずかな期間しか味わえない贅沢な「かに面」は、海が近いこの地域ならでは。香箱ガニ(雌のズワイガニ)の甲羅に、カニの身、卵(内子・外子)、ミソがぎっしりと詰められた一品は、冬の金沢を象徴する特別な味わいです。

また、地元の伝統野菜「源助だいこん」も欠かせません。金沢市の公式サイトでも「おでん種に最適」と紹介されるほど肉質がやわらかく、だしのしみ込みの良さが抜群です。

7、島根・松江「松江おでん」 葉物たっぷり、山陰の冬支度

画像提供:(一社)松江観光協会

松江市では、大きめに切ったおでん種と、セリや春菊などの葉物野菜をたっぷり使う「松江おでん」がローカルフードとして紹介されています。

タラの白子(地元では「タチ」と呼ばれる)や山菜類など、山陰ならではの食材が顔を出すこともあるのだとか。
そして、具材とともに注目したいのが「だし」です。松江おでんでは、上品で甘みのある「あごだし」がよく使われ、個性豊かな具材の味をひとつにまとめ上げています。

8、兵庫「姫路おでん」 生姜醤油でキリッといただく

出典:農林水産省ウェブサイト(画像提供元 : 姫路おでん普及委員会)

おでんといえば「からし」が定番ですが、姫路では「生姜醤油」をかけて、あるいは小皿のタレにつけて食べるのが定番です。

かつて生姜と醤油のどちらも一大産地であった姫路ならではの食習慣といわれ、濃く甘い味付けの「関東煮(かんとだき)」にも、あっさりした薄味のおでんにも、この生姜醤油を合わせるのが姫路流。生姜のピリッとした刺激がだしの旨みを引き立て、一度食べるとクセになるキレのある味わいを生み出します。

家庭料理として親しまれていることはもちろん、秋祭りや棟上げといった祝いの席でも振る舞われます。さらに、残った具材を刻んでお好み焼きの具にするという、地元ならではのユニークな楽しみ方も受け継がれているそうですよ。

9、沖縄「沖縄おでん」 てびちが主役の南国おでん


沖縄県では、豚足(てびち)やソーキ(豚のあばら肉)、昆布などに加えて、チンゲンサイやレタスなどの葉物野菜が入る「沖縄風おでん」が知られています。

長時間煮込んだてびちはぷるぷるとした食感で、一般的なおでんとはひと味違うボリューム感。戦後、本州の料理が沖縄に取り入れられるなかでおでんも広まり、今では家庭料理として定着したそうです。
本土と沖縄の食文化の出会いの歴史を感じる、個性的なおでんですね。

おでんは「地域の物語」を味わう料理

こうして見ていくと、おでんは土地の歴史や産業、気候に合わせて育ってきた「地域の物語」のような料理だとわかります。
魚の町には魚介たっぷりのおでんがあり、雪国には生姜や味噌で体を温めるおでんがある。旅先でその土地ならではの味を探すのはもちろん、自宅で「今日は名古屋風」「次は金沢風」とアレンジを楽しんでみるのも一興です。

「どの具材が好き?」「実家のおでんはどんな味だった?」そんな会話が自然とはずむ賑やかな時間こそが、おでんという料理の一番の醍醐味かもしれません。湯気の向こうに広がる日本の多様性を、ぜひ五感で楽しんでみてください。

参考文献・出典
日本大百科全書(小学館)、世界大百科事典(平凡社)、日本国語大辞典(小学館)
・農林水産省「うちの郷土料理」
・青森県・青森市・八戸市公式サイト
・静岡市公式サイト
・するが企画観光局公式サイト
・金沢市公式サイト
・松江観光協会公式サイト
・姫路おでん協同組合公式サイト
・石川県観光連盟公式サイト
・沖縄県観光情報サイト
※本記事の内容は、上記公的機関・自治体サイトなど、信頼性の高い出典にもとづき、確認できる範囲の事実のみを記載しています。

構成・文/石川ともみ

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和樂web編集部

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