100年以上にわたり、「カルティエ」のアイコンであり続ける「パンテール」。
1914年の誕生から、その姿は時代の空気を映し出すかのように、鮮やかに変化を遂げてきました。最新のハイジュエリーコレクションから、デザインの華麗な進化を読み解きます。
エキゾチックな色彩が「パンテール」ジュエリーに新たな魅力をもたらす
リング/グリーンとオレンジ色、そして漆黒。エキゾチックな色彩が、圧倒的なインパクトを放ちます。斑点の周りの毛並みを表現するため、金属は粘性の強いプラチナを使用しています。
ネックレス/ジオメトリックな縞柄に、有機的な美しさを与えるカボションカットのエメラルド。その鮮明な色彩と呼応するかのように、「パンテール」がデザインに躍動感をもたらします。
「パンテール」ジュエリーが再解釈され、より自由で大胆に
「カルティエ」と「パンテール」の物語は1914年まで遡ります。女性用腕時計を飾るパターン(模様)として誕生した「パンテール」モチーフは、第一次世界大戦後、強く自立した女性の象徴に。その後、ヴァニティケースなどの装飾として具象化されたものの、初めて立体として表現されたのは1948年のことでした。大きなカボションカットのエメラルドの上で体を起こし、野生動物のしなやかさと気高さを鮮烈に印象づけた「パンテール」。その伝説のブローチはウィンザー公爵の注文により製作され、夫人が身につけたことで、社交界の注目の的に。上流階級の女性たちを魅了した「パンテール」は、ついにメゾンの重要なアイコンとなったのです。
今年1月に発表されたハイジュエリーコレクション「ボーテ デュ モンド」(世界の美の意)のなかにも、「パンテール」ジュエリーの新作があります。世界のあらゆるものに美を見出す「カルティエ」は、様々な国の自然や文化、芸術にインスピレーションを得て、「パンテール」モチーフを再解釈。具象と抽象、しなやかな曲線と直線が交錯する、これまでにない大胆なデザインを生み出しました。斬新な宝石のコンビネーションも新作の特徴で、想像を超えた色彩が伝統のモチーフに新たな美しさと魅力をもたらします。
時代が求める女性像を映すといわれる「パンテール」モチーフ。その姿は凜としていながらも自然体で、冒険を楽しむかのように、新たなものを受け入れる好奇心に満ちています。
直線と曲線、色と光の対比が生み出すジオメトリックな夢の世界へ
イヤリング/「パンテール」パターンをオニキスとダイヤモンドで表現したイヤリング。ビーズカットされたジェイド(翡翠)とイエローサファイアの対比が、幻想的な美しさを生み出します。コンテンポラリーアートを思わせる、「パンテール」ジュエリーの新境地ともいえるデザイン。
ネックレス/ブルーとイエローの宝石に彩られた世界で、モノトーンの「パンテール」が際立ちます。ジェイドを留めている鋲はイエローダイヤモンド。クッションカットのイエローサファイアは絶妙なバランスでカットされ、鮮明な色を保ちながら輝きを放ちます。
本記事は『和樂』2023年5.6月号の転載です
撮影/武田正彦