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Jewelry&Watch

2025.03.01

大胆で驚きに満ちたカルティエの最新コレクション「ナチュール ソヴァージュ」 自然と動物たちが躍動する ハイジュエリーの王国へ

「カルティエ」にとって無限のインスピレーション源であり続ける自然。 そのなかで躍動する野生動物たちを新たな視点で表現したハイジュエリーコレクション「ナチュール ソヴァージュ」は、ついに第3章へ。 さらに大胆に、独創性を高めた輝きが、新たなクリエイションの扉を開きます。

想像力を搔き立てる ジャングルに潜むパンテール

モダンに昇華された葉が希少なサファイアを抱いて


想像上のジャングルの葉をモチーフにしたリング。葉脈を思わせるラインがグラフィカルに配置され、シンメトリーの構図を描く。中央で輝く5カラット超えのスリランカ産サファイアは、透明度が高く、色も鮮明。そして、このリングを側面から見ると、パンテールの斑が現れて印象が一変する。まさに驚きに満ちたデザイン。「パンテール カノペ」リング[サファイア5. 41ct×ダイヤモンド計約3.05ct×オニキス計約0. 68ct×WG]参考価格¥81,840,000(カルティエ)※下のネックレスとのセット販売

パンテールが際立つ自然の幾何学的デザイン

ジャングルの葉は、アールデコ建築を思わせる幾何学的デザイン。それとの対比で、写実的なパンテールの存在が際立つ。透明度に秀でたクッションカットのスリランカ産サファイアは、約26カラットもの大きさを誇る。宝石のそばでまどろむパンテールの表情が愛らしい。「パンテール カノペ」ネックレス[サファイア計約29.80ct(センター26.51ct)×ダイヤモンド計約59.65ct×エメラルド計0.06ct×オニキス計2. 00ct×WG]参考価格¥549,120,000(カルティエ)※上のリングとのセット販売

新たな高みに到達した「カルティエ」——その自然主義の軌跡

「カルティエ」はガーランドスタイル(花手綱様式)が誕生した19世紀末から今日まで、動植物を創作のインスピレーション源としてきた〝自然主義〟のハイジュエリーメゾンです。

モダンな美を追求する「カルティエ」のスタイルは、18世紀に流行した新古典主義を源流としています。「シンプルで上品、無駄のないライン、シンメトリー」といった新古典主義の特徴は、そのままガーランドスタイル、アールデコ様式に生かされていきました。

「カルティエ」の自然主義は、まず花々などの植物を意匠化することから始まりました。世はアールヌーヴォーの全盛期でしたが、そうした潮流には目もくれず、自らの美意識に忠実であり続けた結果、20世紀初頭には時代に先駆けて自然を意匠化したアールデコ様式の作品を生み出しています。

「パンテール」モチーフが、女性用腕時計のパターンとして登場したのも、まさにこのころ、1914年のことでした。その後、パンテールは1948年に初めてエメラルドブローチのモチーフとして具象化され、それをウィンザー公爵夫人が身につけたことから注目の的に。パンテールは意志ある女性のシンボルとなったのです。

そして1950年代以降、鳥、タイガー、蛇、クロコダイルなどの動物モチーフが次々と登場し、人気を博しました。それらに共通するのは、具象、抽象にかかわらず様式化され、モダンな意匠へと昇華されていること。そのコードは今も守り継がれています。

今年1月、パリで新作が発表されたばかりのハイジュエリーコレクション「ナチュール ソヴァージュ」は、メゾンの伝統を踏襲しながらも、動物たちの世界を新たな視点で捉え、大胆かつ革新的に表現しています。個性豊かな動物たちは、ハイブリッドな創造の世界に遊び、グラフィカルなデザインのなかで自由を謳歌。その独創的なコレクションは見る者の想像力を搔き立て、当初の驚きはやがて挑戦への賞賛に…。

「ナチュール ソヴァージュ」の想像を超えたクリエイション。それは、「カルティエ」の自然主義の歴史に変革をもたらす、新たな一歩となるかもしれません。

想像の翼を広げて楽しむ 華麗なデザインに宿る物語

グラフィカルに描き出す色彩豊かな海中の世界

ダイヤモンドのオープンワークが、きらめく海を思わせるネックレス。その上にウニをイメージしたザンビア産のエメラルドがセットされ、色鮮やかなコーラルが彩りを添える。サファイアを加えた独特のカラーコンビネーションが、驚きに満ちた海中の世界を表現。「エシナ」ネックレス[エメラルド計92.68ct(センター18.84ct)×ダイヤモンド計約32.27ct×サファイア計約25.30ct×コーラル計約0.60ct×WG]参考価格¥319,440,000(カルティエ)※下のイヤリングとのセット販売

伝説の「メロンカット」がウニを想起させて

フランス語でウニを意味する「エシナ」と名づけられたジュエリー。「メロンカット」と呼ばれる溝を彫刻したビーズ状のエメラルドが、ウニを想起させる。このカットは1920年代、エキゾチックなデザインに多く用いられた。イヤリングの下の部分は取り外せ、ブローチとしても着用することができる。イヤリング[エメラルド計11. 88ct×ダイヤモンド計約3,95ct×サファイア計14.64ct×コーラル計0. 11ct×WG]参考価格¥64,020,000(カルティエ)※上のネックレスとのセット販売

タイガーの圧倒的な存在感と 高貴な華やぎに魅せられて…

4色のダイヤモンドの輝きで毛並みを再現

タイガーの体を覆うのは、イエロー、オレンジ、ブラウンのカラーダイヤモンドと無色のダイヤモンド。多色の光彩を絵具のようにミックスすることと、「カルティエ」独自のペラージュセッティングにより、タイガーの毛並みを再現している。その卓越したセッティング技術は、まさに超絶技巧。地金(ゴールド)の分量を可能な限り減らしているため、ダイヤモンドの繊細な色と輝きが際立つ。ブローチ[イエロー&オレンジ&ブラウンダイヤモンド計1.47ct×ダイヤモンド計1.41ct×エメラルド計0.04ct×オニキス計約0. 90ct×YG]参考価格¥30,096,000(カルティエ)

タイガーのリアルな動きをワックス彫刻が可能に

タイガーのリアルな造形と動きは、ワックス彫刻による入念な確認の賜物。モチーフだけでなく、ネックレス全体のバランスや縞を入れる位置なども確認できる。オニキスの縞はひとつずつ形や長さが異なり、タイガーの体の立体的なカーブに合わせてカットされている。また、精巧な技術によって前足が動くところも、心惹かれるポイント。ネックレス[イエロー&オレンジ&ブラウンダイヤモンド計4.43ct×ダイヤモンド計12.86ct×エメラルド計0.16ct×オニキス計5. 89ct×YG]参考価格¥105,600,000(カルティエ)

このハイジュエリーコレクションを生み出したのは…

JACQUELINE KARACHI-LANGANE(ジャクリーヌ・カラチ=ランガンヌ)
「カルティエ」 ハイジュエリー クリエイティブディレクター

©️Jean-François ROBERT

ジャクリーヌ・カラチ=ランガンヌは、1982年にエコール ブール国立工芸学校を卒業すると「カルティエ」のハイジュエリー デザインスタジオに加わり、キャリアをスタートさせました。当時は、メゾン内で数少ない女性ジュエリーデザイナーのひとりでした。

彼女の宝石とメゾンに対する情熱は年を経るごとに高まっています。「カルティエ」のスタイル、表現のボキャブラリーや法則などを習得。それに彼女自身の創造性を加え、常にスタイルの充実を図っています。またジャクリーヌが石の選択に深く関わることで、ハイジュエリーの作品ひとつひとつに独自の個性がもたらされています。
2006年、ハイジュエリーとエクセプショナルオブジェ、ハイジュエリーウォッチを含むハイジュエリー部門のクリエイティブディレクターに就任し、自身のサヴォアフェールと専門知識の伝授に力を注いでいます。

ジャクリーヌは長い年月をかけて、経歴も文化もさまざまで互いに補完し合うデザイナーのチームをつくり上げてきました。彼らの創造性と世界観はメゾンのクリエイションに活かされています。
すべての創作活動においてジャクリーヌは、まず作品に対する情熱をチームで共有し育み、創造的な力が発揮ができるようデザイナーを導いてきました。刺激を受けたり与えたりしながら、自らの専門知識と経験を生かして、コレクションを重ねるごとにメゾンのスタイルの進化を図り、「カルティエ」の独創的で多様な表現をさらに充実させています。
彼女は、「カルティエ」のハイジュエリーの芸術的な進化と、すべてのクリエイションの一貫性を守る役割を担っており、各コレクションに人を惹き付けるストーリーを生み出しているのです。

撮影/小野祐次 コーディネート/鈴木春恵

※本記事は『和樂』2025年4・5月号の転載です
※価格は2025年3月1日時点のものです
※この特集での価格表記は、すべて税込価格です

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福田 詞子(英国宝石学協会 FGA)

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