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2020.06.30

歌川国芳のクジラとがしゃドクロが飛び出す⁉︎ 但野硝子加工所×和樂で誕生した江戸切子「3Dぐい呑」

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江戸時代の天保5(1834)年、各種の問屋が軒を並べてにぎわった江戸の大伝馬町(現在の日本橋大伝馬町あたり)のビードロ屋が、金剛砂でガラスの表面を彫刻したのがはじまりという江戸切子。明治になるとイギリスのカットグラスから技術を学び、江戸切子の工芸技法は確立されました。その伝統の技法は現在も継承されていますが、新たな技術や感性による切子も魅力的! そこで和樂では江戸時代の人々を大いに楽しませた人気浮世絵師の傑作をモティーフにして、3種類の切子グラスを製作しました。今回ご紹介するのは、歌川国芳の代表作をモチーフにした「3Dぐい呑」です。

切子界の鬼才が生み出す、躍動感溢れる逸品

目にした途端、編集部から「わっ」と歓声が! 流れるような色彩と写実的な彫刻、そこに伝統的な文様が重なり、どの角度も見所になっているダイナミックなぐい呑みです。

この芸術的な作品は、但野硝子加工所の2代目・但野英芳(ただのひでよし)さんが製作。独自の道具を使い、特有の曲線を描き出す、新時代の切子職人です。国芳のドラマティックな浮世絵はどこか但野さんの作風に相通ずるのでは──という和樂の提案で、特別に新作をつくっていただきました。

但野さんの作品は、素地をつくるところから始まります。図案に合わせて、2種類の色ガラスを加えたぐい呑の原型をガラス作家にオーダー。宙吹きでできる、色の分量や配置の個体差を考慮しながら、再度細かく図柄を調整しつつ、彫りを仕上げていきます。西洋ガラスにも影響を受けたという但野さん。イメージどおりの曲線や細かい部分を彫るために特注したという道具を使い分け、原版そのままの勢いがある、今にも飛び出しそうな(だから3D!)「クジラ」と「がしゃドクロ」を完成させました。

グラデーション状の色彩が、さらに奥行きを表現。深く削れば淡く、浅く削れば鮮やかに出る特性を生かした、但野さんの技術の真骨頂と言えるでしょう。その実、後ろ側や底には従来の切子の技法があしらわれ、伝統的な側面も。市場にはほとんど登場しないという使う芸術品、お酒がおいしくいただけそうです。

360度見てほしい!伝統と革新が共存する新しい切子のあり方

どの角度も隙のない、切子のあらゆる技術が凝縮されたデザイン。切子は中から見た景色も大事とされ、クジラやがしゃドクロと伝統文様「菊繋ぎ」が同時に楽しめる配置に。

「クジラ」は、荒れる海や波しぶきも見事に表現され、風景画のような絵柄を得意とする但野さんらしいデザイン。「がしゃドクロ」は、ガラスをえぐったかのように削り取った形にも注目。

ドクロというモティーフにぴったりな荒々しさは、心を惹きつけてやみません。通常切子は1色を被せるのに対し、但野さんの切子は2色を使用。そんな点も、版を重ねる浮世絵と通じるものを感じます。

国芳3Dぐい呑 クジラ

歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」に描いたクジラをピックアップ。正面から後ろ側にかけて大きなクジラが横たわるように描かれています。黒と青の色ガラスが、丁寧な切子加工を施されることで、自然なグラデーションに。サイドの菊繋ぎ文様や、海を表すさまざまな技法など、見ていてあきません。

モティーフは歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」

歌川国芳『宮本武蔵の鯨退治』 江戸時代・1847-50年 (Bridgeman Images/PPS通信社)

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国芳3Dぐみ呑 がしゃドクロ


歌川国芳の「相馬の古内裏」に登場する“がしゃドクロ”を表現。表面をマットにすることで、妖怪らしいおどろおどろしさが、よりリアルに伝わってきます。下部にぐるりと斜めにカットされたフォルムや、ドクロと伝統文様の菊繋ぎのコントラストを楽しんでください。

モティーフは歌川国芳の「相馬の古内裏」

歌川国芳『相馬の古内裏』19世紀 (V&A’s collection)

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