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2025.01.15

喧噪や混雑は無縁! 〝静寂の京都〟はここにあります

心が鎮まる瞬間、しみじみと深い感動、京都の本当の姿は、静寂のなかにある――。

細部に思いを込めたり、さりげない演出にこだわったり。
そんな「粋(すい)」なる歴史を紡いできた京都には、心を鎮めてこそ理解できることや、感動できることがあります。

人の姿が消えて初めて見える景色、歴史を受け継いだ雅(みやび)な趣…。
そのいずれも、静寂を抜きにして語ることはできません。
神社仏閣を拝観しているときに聞こえる、カーンと響く鹿威(ししおど)しの音や、花街の路地から聞こえてくる三味線を奏でる音などもまた、静寂のなかで感じる京都らしさのひとつです。

静寂の京都・極意4「澄ます」で紹介している、私設図書館・喫茶「鈍考/喫茶 芳」。アイキャッチ画像は清水寺に近い三寧坂(三年坂)。早朝なら、人混みに隠れていた美しい建築様式までよくわかる!

紅葉、美食、を静けさの中で。『和樂』厳選「静寂の京都」5つの極意

京都で静寂を味わう旅をする際に大切なのは、事前にプランを決めておくこと。
混み合う場所は避け、空いているエリアや時間帯を狙い、興味のあることを追求する…。
そんな5つの〝極意〟を『和樂』は見つけました。

キーワードは「没入」「ひたる」「日常」「澄ます」「妙案」。
これらをもとにプランを立てると、「静寂の京都」も手に入れられるはずです。
後悔したくない〝京都旅〟の、ぜひご参考に!

静寂の京都・極意2「ひたる」で紹介している、紫竹の「みたて」にかざられた花。

静寂の京都・極意1「没入」

京都の文化を体験することに没頭し、心静かに過ごす

なにかに一心に取り組み、熱中することを表す「没入」。その境地に達すると、たとえ周りがにぎやかであったとしても、我関(われかん)せず。心静かに過ごすことができます。

さらに、長年受け継がれてきている伝統文化にかかわる体験ができたら、京都旅はいっそう実り多きものになります。
たとえば「京繡(きょうぬい)」の講座や、「草木染(くさきぞめ)」のワークショップなど、静寂のなかで自分磨きができる京都ならではの没入プランへ、ぜひ!

没入――。京繡を学びながら過ごす2日間

左/刺繡を施した生地は和装バッグに仕立てられて後日、自宅に届く。右/ゆっくりていねいに教えていただけるので初心者でも安心。

観光地を巡るのではなく、京都の文化を体験することに心を集中して没入すれば、にぎやかな街の喧騒(けんそう)は遥(はる)か彼方(かなた)に――。

「長艸繡巧房 貴了庵(ながくさぬいこうぼう きりょうあん)」では京都・西陣の伝統刺繡である〝京繡(きょうぬい)〟を体験して和装バッグを制作することができます。静かな空間で伝統工芸士の長艸純恵(ながくさすみえ)先生に刺繡を初歩から教わりながら黙々と針を刺し、ときには京都の暮らしや文化、着物のこと、美味しいものなどについて話をお聞きするのも楽しい時間。きっと特別な京都の旅になるはずです。

左/長艸純恵先生(右)に、午前か午後の3時間ずつ2日間(1日で集中して受講することも可能)、優しく教えてもらいながら京繡を学ぶ。右/無心になって針を刺す、贅沢な静寂の時間が流れる。

DATA「長艸繡巧房 貴了庵」

住所:京都府京都市北区平野鳥居前町5
「京繡長艸刺繡の京都遊学」
電話:075-200-4617(平日10時〜17時)
公式サイト:https://www.nagakusa.info/

静寂の京都・極意2「ひたる」

ひとつの道を追求する店主の洗練された空間に身を置く

日本の伝統文化を連想しがちですが、実は京都は、新旧や洋の東西を問わず、あらゆる美意識や趣味を極めた店がたくさんあるのも特徴です。
特に、興味がある分野の、極上の空間に「ひたりに来た」お客が中心の場は、おのずと静寂に包まれるもの。

そんな店の代表格が「みたて」で、ほかにも骨董やアンティークの店、ギャラリー、湯豆腐やそば、日本茶の店など多士済々(たしせいせい)。喧騒を傍目(はため)に「ずっとひたっていたい…」と思える空間で静かに過ごしたいものです。

「みたて」が取り扱うのは季節の山野草や野に咲く草花が中心。 和花(わばな)に合うオリジナルの花器や道具も販売している。

ひたる――。野の草花に季節を感じて

全国各地に花を購入することができる店は星の数ほどありますが、京都・紫竹(しちく)に佇む「みたて」は、野にあるような身近な季節の植物から暮らしの楽しみを教えてくれる唯一無二の存在です。

土壁の棚にスッといけられた一輪の花の静寂な景色。花々を選びながら、店主の西山隼人(にしやまはやと)さん・美華(みか)さん夫妻の洗練された美意識にひたり、心が満たされます。

DATA「みたて」

住所:京都府京都市北区紫竹下竹殿町41
電話:075-203-5050 
営業時間:12時〜17時
休み:日曜・月曜 ※平日(火曜~木曜)は予約制。金曜・土曜は予約なしで来店可能。
公式サイト:https://www.hanaya-mitate.com/

静寂の京都・極意3「日常」

京都に暮らす人々の生活に溶け込んでみる

「京都はいつも大にぎわい!」といってもそれは、有名寺社や観光地のこと。地元の人が行く「日常」の場では、そんなのどこ吹く風。しかも、普段使いの店や場所には、飾りや宣伝など余計なものがなく、すっぴんで迎えてくれるのもいいところ。日常こそ京都の魅力の源泉であり、貴重な体験ができる場所なのです。

次の旅は、暮らしに溶け込んでいる銭湯をはじめ、豆腐店や和菓子店、喫茶店、公園などの日常のスポットを訪ねて、京都本来の人情と趣を肌で感じたいものです。

古き良き裸の付き合いが今も残っている銭湯「日の出湯」。

日常――。地元の人が守り続ける昔ながらの銭湯へ

長年紡がれてきた人々の暮らしの場には、おのずと育まれてきた配慮や秩序があって、観光地のにぎやかさとは一線を画しています。

たとえば、昭和初期の建物を受け継ぐ洛南(らくなん 京都駅の南側)の銭湯「日の出湯(ひのでゆ)」には、古きよき人情が今なお息づいていて、落ち着くことはこの上なし。日常の心地よさを再認識できます。

DATA「日の出湯」

住所:京都府京都市南区西九条唐橋町26-6
電話:075-691-1464
営業時間:16時〜23時
休み:木曜
料金:大人(中学生以上)490円

静寂の京都・極意4「澄ます」

だれもが静かに過ごす場所で心を澄ます

心を清め、無言になれる場所こそ静寂空間。
代表例としてご紹介したいのが私設図書館・喫茶「鈍考/喫茶 芳」です。

心を「澄ます」方法にはほかにも、寺院で庭や襖絵(ふすまえ)と対峙(たいじ)することや、坐禅や写経の修行体験など、実に多彩。それはまた、京都の歴史や伝統の重さや深さを身をもって知ることができる好機で、旅の感慨もひとしおです!

「澄ます」を実感できるスポットは、予約制のところも多く、それほどハードルは高くないので、ぜひお試しあれ!

左/「鈍考/喫茶 芳」では、ヒノキの林を眺めながら、本を読むもよし、珈琲をいただきながら思索するもよし。右/書棚には約3000冊の幅さんの蔵書が並ぶ。

澄ます――。緑を眺めながら読書をする時間

「時間の流れの遅い場所をつくりたかった」と語るブックディレクターの幅允孝(はばよしたか)さんの私設図書室が「鈍考/喫茶 芳(どんこう/きっさ ふぁん)」。
ていねいに淹れられた一杯の自家焙煎珈琲とともに、書棚から気になる本を手に取ってページを開く――。
静けさにひとり身を置いて心を澄ます時間です。

DATA「鈍考/喫茶 芳」

住所:京都府京都市左京区上高野掃部林町4-9
基本営業日:(第1部)水曜〜土曜11時〜12時30分、(第2部)13時〜14時30分、(第3部)15時〜16時30分 web予約制。1枠(90分)定員6名 施設使用料+珈琲1杯 2,000円(税別)
公式サイト:https://donkou.jp/

静寂の京都・極意5「妙案」

時間を外し、予約制を利用し、混雑を避ける!

秋の京都で静寂を得る奥の手が「妙案」。人気寺院や観光施設などは、開いてすぐ、閉まるギリギリのように、時間をずらすのがポイント! だれもいない路地は、建築意匠や看板、ディスプレイがよく見えて、歴史的な〝美〟の再発見もできます。

また、ホテルや寺院、旅行会社のツアーを予約すると、優先的に見られるメリットも! いくら混んでいようと、絶対あきらめないで、妙案を絞り出しましょう!

早朝の二寧坂。日が昇り、明るくなった時間帯は、いつもの喧騒が嘘のように穏やか。このような「妙案」をみつけて、本来の京都の姿を見つけたい。

妙案――。先んずれば人を制す 早起きすると超お得!

観光のハイシーズンでも、知恵を絞れば、ゆっくり静かに古都の風情を楽しむことができます。

そのもっとも取り入れやすい「妙案」は、時間をずらすこと。いつも混んでいる清水寺も、早朝6時の開門前は人もまばら。二寧坂(にねいざか)も写真のように閑散としていて、軒を並べる日本家屋の美しさに目を見張ります。

ほかにも、予約制や特別ツアーを駆使して、秋の京都を堪能してください!

DATA「二寧坂(二年坂)

住所:京都府京都市東山区桝屋町清水

※本記事は雑誌『和樂(2024年10・11月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。

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和樂web編集部


撮影/内藤貞保、伊藤 信 構成/山本 毅、高橋亜弥子、鈴木智恵(本誌)
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