温泉宿を教えてくださったのは…

山崎まゆみさん 温泉エッセイスト。河出文庫シリーズ3部作『温泉ごはん』『ひとり温泉おいしいごはん』『おいしいひとり温泉はやめられない』(すべて河出文庫刊)が大好評。『味の手帖』に「おいしい温泉 ひとり旅」を連載中。
【秋田・夏瀬温泉】「きりたんぽ鍋」を「都わすれ」で

秋田・角館から車で30分ほどの距離に位置する夏瀬温泉。秋田名物といえばもちろん「きりたんぽ」。
鍋の野菜は季節で変わるが、冬場のお楽しみは「せり」。地鶏スープをたっぷり吸い込んだきりたんぽと、ほろ苦いセリの妙味を楽しみたい。
「きりたんぽ鍋は年間を通して夕食で提供していますが、お客様の要望に応じてすきやきなど、ほかの鍋料理もご提供しています」と女将の佐藤京子さん。

もっちりとした”たんぽ”をはじめ、宿でいただいたものすべてに心が惹かれたという山崎さん。その中でも記憶に残ったのは、意外にも湧水!「身体に染みわたるとはこのこと。命の水だと感じました。樺細工が施された水筒とコップも素敵です」
山崎さんなら「都わすれ」でどうすごす?

「泉質はナトリウム・カルシウム・硫酸塩水。お湯は透明で美しい。こりがほぐれます」(山崎さん)。
女将である佐藤さんはもともと東京でインテリアデザイナーだったという経歴。祖父母が営む乳頭温泉郷「妙の湯」を受け継いで女将となり、
女性もくつろげる湯治宿に改装。こちらの夏瀬温泉「都わすれ」も、元は女将が子供のころから祖父母と共に親しんでいた温泉宿だったそう。
縁あって経営を引き継ぎ、この宿は全室に露天風呂があります。贅沢!
【青森・浅虫温泉】「鱈のアゴ出汁鍋」を「椿館」で

青森の数ある温泉地の中でも、海と山に囲まれた浅虫温泉郷。自慢の魚介類がふんだんに入る鍋料理は季節ごとに変わり、もっとも寒いこの時期は「鱈(たら)のアゴ出汁鍋」を提供。
アゴとは飛び魚のことで、コク深い出汁が特徴。そこに鍋の具材である鱈の身、白子、蟹のつみれが加わり、旨みたっぷりの味わいに。「まずはそのまま出汁の旨みをお楽しみいただき、ミニトマトを割って酸味の効いた出汁の味の変化を味わっていただけたらと思います」とは女将・蝦名真希さん。
また、朝食に登場する「貝焼き味噌」もこの宿の人気の一品。

こちらは帆立貝の中に出汁と味噌を注ぎ(写真右)、温まったところに溶き卵を流し入れて卵とじにする(写真左)郷土料理。「貝の出汁が香るとろとろの卵を、ごはんの上にのせていただくんです。その土地の食文化に触れることができるのも温泉巡りの楽しみです」(山崎さん)
山崎さんなら「椿館」でどうすごす?
江戸時代から続く自家源泉は、青森県内の温泉地で最初に「飲泉」も認められたとか。
低とろみのある泉質(低張性弱アルカリ性高温泉)は明治天皇もお気に入りだったそうです。


また、この宿は版画家の棟方志功のお気に入りだったことで知られています。
「明治天皇がうちの温泉に入り、目がスッキリしたというお言葉を残されたそうです。その評判を聞いて、目の弱い棟方志功さんもお越しになったと聞いています」(女将・蝦名さん)。

「宿の棟方志功ギャラリーでゆっくり時間を過ごしてみてください。毎夏、長逗留する棟方の制作活動を支えたという宿のあり方に私は感銘を受けました。温泉地にある文化も日本特有のもの。温泉宿巡りもこんな視点で楽しめますよ」と言葉を締めくくってくださった山崎さんです。
温泉Tips 山崎さんが温泉旅に持って行くもの2
「温泉旅に必ず携帯するのが、手ぬぐい。そして訪れた宿でまた新しいものを入手してしまいます(笑)」(山崎さん)。宿の特色を活かした個性あふれる柄は、旅の記憶を色濃くしてくれるそうです。


河出文庫から出ている山崎さんのおいしい温泉シリーズはこちら。2026年中に第4弾が発刊されるかも?お楽しみに
温泉エッセイスト山崎まゆみさんに聞く【東北は鍋天国!温泉天国!】会津・庄内編はこちら

