鳥取県東部の中井町にある窯元「因州・中井窯」。手前は中井窯を代表する「三色掛け分け皿」。奥は「八寸掛け分け深皿」。どちらも買えます!
〝とっておきの手仕事〟を探す旅に出よ――〟
編集部からの指令が下ったのは2015年末のこと
編集長いわく、日本の素敵なものを紹介する『和樂商店』を開きたい。ついては、各地の窯元や工房を訪ね、職人の手が生み出す美しき生活道具を買い付けるべし。
そんなわけで『和樂』4・5月号からスタートしたのが、通販〝旅〟企画・誌上『和樂商店』。私、和樂インテリア班Wが、つくり手を訪ね、つくっているところを見せてもらい、「これは欲しい!」と惹かれたものを仕入れてきます。
ジャッジの基準は和樂読者におすすめしたいもの。そして、実際に触って使って、心にぐっと響いたもの。すべての品は誌上で購入可能。編集部から愛と感謝を込めて直送させていただきます!
民藝とデザインの里・鳥取で、
モダンなうつわに出合いました
『古事記』にも登場する神話の里・鳥取市河原町(かわはらちょう)は、なだらかな山々に囲まれたのどかな土地。今も蛙が棲むという清流・曳田川(ひきたかわ)沿いを歩いていくと、庭先にびっしりと薪を積み上げた工房が見えてきます。
今回訪れた「因州(いんしゅう)・中井窯」は、緑・黒・白の釉薬(うわぐすり)を使った「掛け分け」のうつわで知られる窯元です。開窯は昭和20年。鳥取の民藝運動を牽引したデザイナー・吉田璋也(しょうや)の指導で新作民に取り組んだり、世界的工業デザイナー柳宗理(やなぎそうり)のディレクションでモダンな作風を切り拓いたり…と、プロデューサーの助けも借りつつ〝中井窯らしさ〟を築いてきました。
現在は鳥取を代表する窯のひとつとして、三代目当主の坂本章(あきら)さんが活躍中。手仕事の温もりを大切にしながらも時代の流れを無視しない、真面目なものづくりを続けています。
昨年、開窯70年を迎えた中井窯三代目の坂本章さん。代表作の「染め分け三色大皿」で日本民藝館賞も受賞。
とっておきの手仕事、発見!
「焼き物屋ですから、いい焼き物をつくりたい。それだけが望みです」と言う坂本さんに促され、まずは中井窯を代表する「三色掛け分け皿」を手に取ります。
それは、目が離せなくなる美しさ。手ざわりや風合いは紛れもなく日本のうつわなのに、北欧の陶器のような清々しさを感じます。あるいは、’70年代のアメリカデザインにも通じるカッコよさ。ふだんの食卓にこの1枚が加わったところを想像しただけで、頭の中は「欲しい!」気持ちでいっぱいです。
感激さめやらぬままに、かつては精米所だったという工房へ向かうと、きっちり並べられた焼成前のうつわや、使い込まれたたくさんの道具。文字通り、チリひとつ落ちていない清潔な仕事場です。
ろくろでの成形にも特徴が
ひとり、ろくろを回し始める坂本さん。回転する土のかたまりが、ぐいぐいとうつわの形に成っていきます。途中、水を含んだ土(泥)が手にまとわりつくのを丁寧にぬぐい、ぬぐい取った泥を再びうつわに戻しながら成形しているのが珍しい。その理由を訪ねると、「普通のろくろは水をつけながら引きますが、僕は水じゃなくてドベ(泥)を使うんです」
成形するときに水気を与えすぎると、土の張りがなくなりへたってしまう。泥を使うことで、薄くても張りのあるうつわができるのだとか。
「だから、軽いんです。どっしり重厚なうつわも魅力的だけれど、僕がつくりたいのは毎日使えるシンプルなうつわ。手仕事ならではのゆらぎやゆるさが際立つ形より、スッと心が晴れるような、端正な形を求めています」
泥を使ってろくろを引く。大甕(おおがめ)に入った黒・緑・白の釉薬。藁や木の灰からつくる。
そして、三色掛け分け皿が生まれた
さて、中井窯の大きな魅力は、なんといってもその大胆な意匠と色彩でしょう。
たとえば、3つの色を等分に施した「三色掛け分け皿」はこんなふうに生まれます。片手でうつわを持ち、黒、白、緑の順に、ひしゃくで釉薬を流し掛ける。色と色の境目に、釉薬の重なりによる線がうっすら残るのも特徴です。
「手加減で流し掛けているので、その線が太くなったり細めに入ったり、多少の揺れは生じます。でも、その揺れが面白みでもあるんです」
釉薬はすべて手づくり。藁灰(わらばい)や木灰(もくばい)など自然素材を調合して3色の釉薬をつくっています。2~3年は寝かさないといい色が出ないうえ、自然の材料なので発色にブレもある。焼きあがりを見て調合し直すこともしばしばですが、思い描く色のためには、手間も時間も惜しみません。
「自然の材料から生まれる深みや温かみは、色や質感に現れます。だからこそ、形はシンプルにしておきたい」と坂本さん。端正で完成度の高いかたちと、ゆらぎを残す美しい色。中井窯のうつわの魅力が、少し見えてきました。
この旅で買い付けた商品が『和樂商店』の第一弾!
今の暮らしになじむちょうどいい温かさの「因州・中井窯」のうつわ
今回のうつわを選んだ決め手は、「使うたびに楽しい気持ちになるデザインであること」と「使い勝手がよいこと」のふたつ。
人気の三色掛け分け皿は、朝食の卵料理やサラダにもちょうどいい七寸です。たくみ割烹のご主人によば、「オレンジ色がよく映える」のだとか。柑橘類(かんきつるい)や人参のマリネ、サーモン料理も合いそうです。
二色の釉薬を掛け分けた神代碗(みじろわん)は、小さめのご飯茶碗にも小鉢にもなるサイズ。カップ&ソサーは口あたりのよさが決め手。ともに、色違いで揃えるのも素敵です。
白×黒の深皿は、モノトーンの色合いと温かな質感がたまらない一品です。大皿使いもできれば、パスタも煮物もおいしく見える、これぞ今回の〝とっておき〟かもしれません。
シルエットの美しいピッチャーは、白や黄色の花をいけたり、枝ものを挿したりするのが似合いそう。
どのうつわも、厚すぎず薄すぎず、〝持ち心地〟がちょうどいい点も魅力です。
※商品名をクリックすると通販サイト「大人の逸品」の商品ページにリンクします。
七寸・三色掛け分け皿
¥8,640(税込)
直径21×高さ3.8㎝ ※限定40枚。3月下旬から出荷開始予定。黒、緑、白の釉薬を等分に掛け分けた、中井窯の代表作。すっきりした形ですが、釉薬と釉薬が重なる部分に、手仕事の味わいが現れています。見た目よりも軽く、手にとりやすいのも特徴。
神代碗
各¥3,240(税込) 直径12.5×高さ6㎝ ※各色限定20客。3月下旬から出荷開始予定。「みじろわん」と読みます。スッと立ち上がるフォルムが特徴。「ココガーデン」では、たまごがけご飯に使われていました。
八寸・掛け分け深皿
(外黒×内白、外白×内黒)各¥16,200(税込)
直径23.5×高さ5.3㎝ ※各色限定2枚。白と黒の釉薬を掛け分けた深皿です。とてもグラフィカルでモダンですが、白も黒もやわらかさと深みのある色合いで、風合いは温か。野菜の煮物や魚の煮つけなど、素朴な料理も似合う。
コーヒーカップ&ソーサー
(緑×白、緑×黒)各¥3,780(税込)
カップ・直径8×高さ7㎝、ソーサー・直径14.5×高さ3㎝ 細部まで丁寧に考えられたデザイン。カップ内側の底は、なだらかにカーブしています。写真の色のほか、縁と内側に黒釉を施した[緑×黒]タイプもあり。※各色限定15客。3月下旬から出荷開始予定。
ピッチャー
(緑×白、緑×黒)各¥27,000(税込)
佇まいが美しいピッチャーは、高さ約22㎝。そのままでも絵になりますが、花や枝を生けることで、フォルムの美しさがいっそう際立ちます。写真の色のほか、上が緑、下が白のタイプもあり。幅16~17×奥行き12~13×高さ22~23㎝ ※緑×白は2点限定、緑×黒は1点限定。
※商品名をクリックすると、通販サイト「大人の逸品」の商品ページに飛びます。
小学館の総合通販サイト「大人の逸品」―手仕事を買う旅に出かけよう!― www.pal-shop.jp/waraku
撮影/篠原宏明