2018年6月24日まで、横浜美術館で「ヌード NUDE-英国テート・コレクションより」が開催中です。横浜美術館学芸員の長谷川珠緒さんに、みどころを解説していただきました。
美・知・心をみたす展覧会
「恋愛こそ生命の花です」(高村光太郎訳「ロダンの言葉抄」より)と語った彫刻家、ロダンの代表作「接吻」。高さ180cmあまりの大理石像は世界にわずか3体しかありませんが、その1体が初来日するとあって、開幕前から注目を浴びている「ヌード NUDE-英国テート・コレクションより」展。2016年11月にシドニーで始まり、オークランド、ソウルへと巡回、大きな反響を呼んだ国際展が、待望の日本上陸です。
オーギュスト・ロダン「接吻」(部分)1901〜4年 ペンテリコン大理石 182.2×121.9×153cm Tate:Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953,image © Tate, London 2017
「ロダンの作品は日本でもブロンズ像でよく知られていますが、こちらは大理石。等身大を超える大きさは迫力があり、白く磨き上げられた大理石が表現する肌の滑らかなツヤ感、ぬめっとした質感は、実際に目にするとドキドキします(笑)。360度くまなく見ていただけるように、高さのある展示室の中央に展示します」(長谷川さん)
20世紀初頭にイギリスで初めてこの作品が展示されたときは、刺激が強すぎるとシーツで覆い隠されてしまったというエピソードからもわかるように、「ヌード」は、西洋の芸術家たちが絶えず向き合ってきた題材でありながら、つねに批判や論争の対象となり、大規模な展覧会を行うには難しいテーマです。しかし、今回は、世界屈指の西洋近現代美術コレクションを誇る英国テートの所蔵作品から、絵画、彫刻、版画、写真など、約120点の名品が来日。なかには「あの画家が!?」と驚くような、巨匠の知られざるヌード作品も。
フレデリック・レイトン「プシュケの水浴」1890年発表 油彩・カンヴァス 189.2×62.2cm Tate:Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest 1890, image © Tate, London 2017
「展示構成のうちの第4章、『エロティック・ヌード』と題したセクションでは、ターナーやホックニーの貴重な作品もご紹介します。名声のある作家が、個人的な楽しみで描いたものは、本来はオフィシャルなところに出ない作品だからからこそ伸びやかで、その気負いのなさも魅力。19世紀後半の、レイトン『プシュケの水浴』といった神話画から、モデルの堂々たる姿を描いたマティス『布をまとう裸婦』、そして現代に至るまで、200年にわたり、西洋における身体表現が時代によってどのように変遷してきたかということも、わかりやすく、興味深くご覧いただけると思います」(長谷川さん)
アンリ・マティス「布をまとう裸婦」1936年 油彩・カンヴァス 45.7×37.5cm Tate:Purchased 1959, image © Tate,London 2017
若く美しいヌード、抽象化、記号化されたヌード、政治性をもつヌード、衰えしなびたヌード。多彩に表現されたヌード作品の数々は、さまざまな感情を呼び起こさせます。一度と言わず、二度、三度、ときにひとりで、ときに友人たちと観に行きたい、示唆に富んだ必見の展覧会。