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2026.04.21

京都といえば工藝!【目に舌に美味しい工藝ゴコロの京菓子】後編「季節を問わない逸品4選」

季節の風物詩や行事を模した意匠の美しさで知られる京菓子。今回はちょっと目線を変えて、「これもひとつの工藝品♡」と感じる細工に手の込んだお菓子をご紹介。後編でご紹介するのは、ほぼ通年取り扱いのある、京都の人々におなじみの逸品です!

亀末廣の「四方のながめ」|京の名所を鮮やかに切り取り、和三盆糖と玄米の落雁に

「四方(よも)のながめ」18枚入2,700円。大胆な包み紙は6代目主人の書き下ろしで、自身の代から追加。今では「古都」が愛称に。左から、「都をどり」「大原女(おおはらめ)」「宇治橋」「三千院」「知恩院」「清水寺」「金閣寺」「神護寺(じんごじ)」「保津峡(ほづきょう)」の風景を表す。

“四畳半”の愛称で知られる「京のよすが」は「亀末廣」の代表銘菓。茶室に見立てた杉箱に半生菓子や干菓子の飾り菓子を詰め合わせた景色は、1年に14回も姿を変えて京の四季や風物詩を伝えます。
「京のよすが」も実に工藝的なのですが、落雁(らくがん)「四方のながめ」を今回は推したい。木型に描かれた京の名所のデフォルメにご注目を。

保津峡なら「筏(いかだ)流しと船頭を真上から」、神護寺は「(急登〈きゅうとう〉の参道手前にある)高雄橋と紅葉」など、名所と風景の切り取り方が、ツボを押さえた最小限の表現で心憎い。京菓子は琳派の影響を受けているといわれますが、この図柄もまさしくそのひとつでしょう。

8代目主人の吉田かな女(よしだかなめ)さんによると「いつからあるのか、だれがこの絵柄の組み合わせを考えたのかもわからないほど古いお菓子なんです。私は金閣寺の絵柄が特に気に入っています。てっぺんの鳳凰(ほうおう)だけを描くセンスが面白いですし、まねできないです」
色で遊べそうな名所風景を、和三盆糖(わさんぼんとう)の落ち着いた白を基調に、煎った玄米を加えたサンドベージュの侘びた2色に絞っているのもおしゃれ。玄米風味の芳(かんば)しい和三盆糖の落雁は、この店の人気商品です。

文化元(1804)年創業。当時は御所や二条城に干菓子を納めていた。精緻な図柄を忠実に起こした菓子木型も工藝品のよう。

●「亀末廣(かめすえひろ)」DATA
住所:京都府京都市中京区姉小路通烏丸東入る車屋町251
電話:075-221-5110
営業時間:9時~17時
休み:水曜・日曜・祝日
Instagram:@kamesuehiro

するがや祇園下里の「祇園豆平糖」|煮詰めた飴と煎り豆を手伸ばしで細い飴菓子に

「祇園豆平糖(ぎおんまめへいとう)」1箱120g入1,620円。袋入100g1,188円もある。飴に混じる煎り豆が飴菓子の景色に。

文政元(1818)年に祇園町で創業した菓子司でありながら、飴を看板に商いをするようになった「するがや祇園下里」。いまだ機械を用いず、原始的な手法で職人の腕と勘を頼りに飴づくりを続けているのが、すごい。

甘味料は一切使わず、ザラメ糖や黒糖、秘伝の特製蜜を用い、炭火とガスを使い分けて煮詰められた飴は、甘さを抑えて香ばしさが際立つのが自慢です。芸事の町である祇園町の場所柄、のどを大切にする芸舞妓や役者たちにも、この店の飴菓子が贔屓(ひいき)にされています。
名物の「祇園豆平糖」は、まだ飴が熱いうちに手で伸ばした瞬間を結晶にしたかのような佇まい。琥珀(こはく)色の飴に透ける煎り大豆のでこぼこ加減も、均一でないところに美しさがあります。

ここで飴づくりを親子2代で務める土倉金三さん曰(いわ)く、「蜜と飴を炭火で煮詰めて、鍋を一気に上げるところが難しい。煮詰めが甘いとベタッとした甘みになるし、煮詰めすぎると苦みが出る。気温や湿度と調子を合わせた作業なので、機械にはできないし、機械だと美味しくならないね」。家族と職人で守ってきた飴の味、大切に味わいたいものです。

左/飴は熱いうちに伸ばす。繊細な飴の感覚は素手でないとつかめない。土倉さんは現在78歳。父は94歳まで働いたそう。右/煮詰めた飴は銅鍋に入れたまま流水で冷やし、固められる。


●「するがや祇園下里(ぎおんしもさと)」DATA
住所:京都府京都市東山区八坂新地末吉町79番・80番
電話:075-561-1960
営業時間:11時~18時
休み:水曜
公式サイト:https://gionshimosato.com/

鍵善良房の「おちょま」|三味線を弾く舞妓の姿を和三盆糖の打ち物に

「おちょま」60個木箱入6,600円。木箱は40個入からあり、紙箱は20個・30個入がある。生砂糖(きざとう)は季節により変更。箱のふくらみは三味線の胴を模している。

丸い山のような形をした和三盆糖の打ち物菓子は、京都では古くから「大内山(おおうちやま)」(御室山〈おむろやま〉とも呼ばれる歌の名所)にちなんだ菓銘をもつことが多いのですが、「鍵善良房」では店のある祇園町にちなみ、駆け出しの舞妓の愛称「おちょぼ」をもじり、「おちょま」と名づけました。

箱には三味線の胴を模した細工を施し、菓子の包みを開けると、チョンと紅を差した姿を見せます。かわいらしくもあり、色っぽくもあり、同じ形でも表現の幅の広さに驚かされます。
箱の中に花が咲いているような包み紙のひねり方は、時間と共に洗練されて今の形に。実は、“ひねって包む”ことにもこだわりがあります。

「大人がちょっとしたおやつを懐紙に包んで子供に渡すしぐさが原風景にあります。昔の祇園町ではよく目にしていたものですが」と15代主人・今西善也さん。
菓子のしおりには、国文学者・京都大学文学部教授の野間光辰(のまこうしん)さん直筆の寄稿文。味のある「おちょま」の書や、文の中でも祇園町の文化に触れることができます。

左/正方形の紙中央に菓子を置き、対角線上をつまみながらひねる。右/極上の阿波(あわ)和三盆糖の打ち物は代表銘菓「菊寿糖(きくじゅとう)」でもおなじみ。

●「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」DATA
住所:京都府京都市東山区祇園町北側264 
電話:075-561-1818
営業時間:9時30分~18時(喫茶は10時~17時30分L.O. ※混雑時は早まる場合あり) 
休み:月曜
公式サイト:https://www.kagizen.co.jp/

千本玉壽軒の「西陣風味」|絹の反物のごとく羽二重餅を巻いて

「西陣風味」5個入1,296円。たとう紙を模した薄紙で包む。

観世縒り(かんぜより =こより)で締められた結び目を解くところから、この菓子の物語が始まります。
雲錦(うんきん)模様の包みは西陣織の着物や帯をイメージしているのでしょう。包みを開けると、たとう紙に包まれた菓子が姿を現します。純白の絹を想起させるまろやかな羽二重餅(はぶたえもち)は、こしあんと重ねて、反物のごとく巻かれています。織物の町・西陣の地にある和菓子店による小粋なプレゼンテーションです。

こしあんには黒ごまが入るのですが、3代目主人・元島真弥(もとじましんや)さんは「ごまの味や香りを生かすためだけでなく、餅とあんをなじませて上手に巻くための工夫だったのでは」と考察します。
初代が残したこの菓子は「完璧すぎて、僕が手を加えたら値打ちを下げそうでアレンジを考えたことはない」とか。むしろ、こよりを頼める職人も少なくなってきて、この形を守ることに精一杯だそうです。

●「千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)」DATA
住所:京都府京都市上京区千本通今出川上る上善寺町96
電話:075-461-0796
営業時間:8時30分~17時
休み:水曜
公式サイト:https://sentama.co.jp/

※本記事は雑誌『和樂(2026年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込です。
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和樂web編集部


撮影/エレファント・タカ 構成/藤田 優、古里典子(和樂)
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※『和樂』2026年4・5月号 美術展カレンダーに誤りがありました。P.224で紹介しました、福岡県・久留米市美術館で開催中の「美の新地平ー石橋財団アーティゾン美術館のいま」の入館料は、正しくは一般1,500円となります。お詫びして訂正いたします。
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