Art

2026.10.31

アートとテクノロジーで探る、生命と宇宙のつながり。森美術館で『森万里子:燦燦(さんさん)』開催

東京・六本木の森美術館で、2026年10月31日(土)から2027年3月28日(日)まで、「森万里子:燦燦(さんさん)」が開催中です。日本では24年ぶりとなる大規模個展で、30年以上にわたる活動から約40点を紹介。仏教や古代文化への探究と先端のテクノロジーが出合う作品を通して、生命や自然とのつながりを見つめる展覧会の魅力をご紹介します。

多彩な表現を通してたどる、「光」をめぐる30余年

1990年代半ば、コンピューター・グラフィックスを先駆的に取り入れた写真や映像で注目を集めた森万里子氏。本展では、写真、映像、ドローイング、立体作品から、鑑賞者が参加する大規模なインスタレーションまで、多様な表現を通して創作の歩みをたどります。

ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム財団の特別協力のもと、同美術館・財団のシニア・キュレーター・アット・ラージのアレクサンドラ・モンロー氏と、森美術館館長の片岡真実氏が共同で企画。森氏の作品を、大衆文化やテクノロジー、意識をめぐる哲学といった視点から捉え直します。

森 万里子《巫女の祈り》1996年

展覧会名の「燦燦」が象徴するのは、創作の中心にある「光」です。仏教における慈悲や智慧を示す光明、神道の太陽神、そして宇宙で起こる現象。森氏の具体的な作品のなかでも、さまざまな光が作品へと取り込まれてきました。

その探究の背景にあるのが、20代前半に経験した父の死。人の存在は本当に終わってしまうのかという問いから、仏教や宇宙物理の書をひもとき、世界各地の古代都市や祈りの場、新石器時代の遺跡を訪ねたといいます。科学者やエンジニアとの協働も重ねながら、宇宙との結びつきを体験できる表現を試みてきたのです。

森万里子氏/アーティスト。1967年、東京生まれ。ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アートを卒業後、ニューヨークのホイットニー美術館インディペンデント・スタディ・プログラムを修了。1997年、第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展で優秀賞を受賞。写真や映像、立体、インスタレーションなど多彩な表現で国際的に活動する。現在、ニューヨーク、東京、宮古島を拠点とする。

仏教や古代文化を先端技術で表す

展覧会は、ゆるやかな年代順とテーマに沿った4つのセクションで構成されます。初期作品で現代社会に向けられていた森氏の関心は、やがて仏教の死生観や宇宙観へ。《エソテリック・コスモス》シリーズでは、高度なデジタル技術を用い、秘境の風景を背景に、仏教の図像に基づいた姿で自身を演出しています。

森 万里子《エソテリック・コスモス:ピュア・ランド》1996-1998年

映像によるインスタレーション《リンク》(2000年)では、透明なカプセルの中に横たわる森氏の姿を映し出します。その背景には、人類の過去・現在・未来を象徴する世界13か所の風景。生と死が絶え間なく循環する「輪廻転生」を、映像と空間を通して表現しています。

鑑賞者自身が作品に関わる《Wave UFO》で待っているのは、勾玉型のポッドの内部で、自分と他者の脳波が投影映像へと変換される体験です。そこに表れているのが、森氏が2000年代初めから提唱してきた「ワンネス」。時空を超えてあらゆる生命がつながっているという考えを、先端技術によって体験できる形にした作品です。

森 万里子《Wave UFO》(内部)1999-2002年、撮影:トム・パウエル

2004年以降は、新石器時代のケルト文化や縄文文化の世界観から着想を得たプロジェクトも展開。本展では、沖縄県の久高島や秋田県の大湯環状列石を捉えた写真作品に加え、縄文中期から後期の敷石住居などの調査から生まれた《フラット・ストーン》も紹介されます。

森 万里子《フラット・ストーン》2006年、所蔵:SCAI THE BATHHOUSE(東京)展示風景:「ワンネス」ピンチュク・アートセンター(キーウ)2008年、撮影:リチャード・リーロイド

古代文化への関心と科学技術が交わる《トムナフーリ》も見どころのひとつです。題名は、ケルト文化において先祖の霊魂が転生する場を意味する言葉。ニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」のリアルタイムのデータによって発光し、目に見えない宇宙の出来事を光の明滅へと変えます。

森 万里子《トムナフーリ》2006年、撮影:リチャード・リーロイド、画像提供:SCAI THE BATHHOUSE(東京)

さらに、2025年にニューヨークで発表された《お社(おやしろ)》も展示。内部に置かれた立体は、日本神話に登場するオノコロ島の上立神岩や、熊本県の押戸石などをモチーフにしています。古代文化や祈りの場への探究が、近年の創作にもつながっていることがうかがえます。

森 万里子《お社》(部分)2025年、展示風景:「森万里子:ラディアンス」ショーン・ケリー(ニューヨーク)2025年、撮影:ジェイソン・ワイシュ、画像提供:ショーン・ケリー(ニューヨーク)

自然へ広がる創作、その舞台裏

森氏の活動は、美術館の外にも広がっています。2010年には、自然と人間のつながりを再認識する作品の恒久設置を目指し、Faou(ファウ)財団を設立。地域の人々と協力しながら、宇宙や天空の動きと連動する作品を自然のなかに設置してきました。

2011年に宮古島に設置された《プライマル・リズム:サンピラー》や、2016年にリオデジャネイロに設置された《リング:自然とひとつに》も、その活動から生まれたもの。本展では、これらの作品や、宮古島のアトリエ「ユプティラ」から望む海の風景などを収めた新作映像を、大型LEDディスプレーで紹介します。

森 万里子《プライマル・リズム:サンピラー》2011年、Courtesy:Faou財団(ニューヨーク)展示風景:宮古島七光湾(沖縄)撮影:リチャード・リーロイド

こうした創作を支える日々に触れられるのが、「アーカイブ」と「スタジオ」のスペースです。「アーカイブ」では、モデル時代の写真やパフォーマンス映像、出版物などを通して活動を紹介。「スタジオ」には、日々のドローイングやアイディアスケッチ、リサーチノート、森氏が収集した古代のオブジェクトなどが並びます。作品とあわせて見ることで、その背景にある関心や、思索の積み重ねにも触れられるでしょう。

古代文化への探究から、科学者との協働、自然のなかでの実践へ。多彩な創作を貫く「光」をたどる「森万里子:燦燦」は、私たち自身と世界とのつながりを見つめ直す機会にもなりそうです。

「森万里子:燦燦」開催概要

会期:2026年10月31日(土)~2027年3月28日(日)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:10:00~22:00(火曜日は17:00まで、入館は閉館の30分前まで)
※2026年11月3日(火・祝)は18:00まで、11月27日(金)は17:00まで、2027年2月23日(火・祝)は22:00まで開館
※「六本木アートナイト2026」開催に伴い、2026年10月31日(土)は翌朝6:00まで開館時間を延長
休館日:会期中無休
入館料(平日・当日窓口):一般2,800円/高校・大学生1,700円/シニア(65歳以上)2,400円/中学生以下無料
※土・日・休日は一般3,000円/高校・大学生1,800円/シニア2,600円
※オンライン購入は一般・シニア各200円引き、高校・大学生100円引き。料金はすべて税込。
※事前予約制(日時指定券)。当日、日時指定枠に空きがある場合は予約なしでも入館可能。
※『Wave UFO』の内部での体験鑑賞は事前申し込み・別料金。体験枠には限りがあります。
※展示内容・作品は変更となる場合があります。
URL:https://www.mori.art.museum/jp/

トップ画像/森 万里子《Wave UFO》1999-2002年、展示風景:「森万里子:Wave UFO」ブレゲンツ美術館(オーストリア)2003年、撮影:リチャード・リーロイド

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和樂web編集部

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