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2019.10.26

ぎんなんの簡単でおいしい食べ方!くさい理由・子どもにはNGな理由も解説

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秋も深まり、ぎんなんが旬を迎えていますね。テレビをはじめ多様なメディアで「ぎんなんは栄養たっぷり」と紹介され、昨今注目を集めています。また、昔から民間療法などでは「咳を鎮める」「痰を切る」と言われ、空気の乾燥する秋冬にぴったりのパワーフードでもあります。

しかしその一方で、「そもそも、ぎんなんについてよく知らない」「食べ方が分からない」という声も少なくありません。

そこで今回のテーマは、「ぎんなん」。知っているようで知らないぎんなんのアレコレと、生産量全国トップの愛知県稲沢市「祖父江(そぶえ)町」の訪問レポートをお届けします。

最後に地元の方に教えてもらった簡単で美味しい食べ方も掲載していますので、ぜひお見逃しなく。

「銀杏」「ぎんなん」「いちょう」???

まず、漢字について。「銀杏」と書いて、ある時は「ぎんなん」、またある時は「いちょう」と読むので、何だか不思議に思われている方も多いと思います(というより、私自身が不思議に感じていました笑)。

「ぎんなん」という名称は、中国語から来ているのだそう。「杏(あんず)に似ている銀白色の実」ということから「銀杏(ぎんなん)」と呼ばれるようになったと言われています。

それに対して「いちょう」は、葉がアヒルの足「鴨脚」の形に似ていることから「ヤーチャオ」「イーチャオ」と呼ばれ、それが変化して「銀杏(いちょう)」になったのだとか。

銀杏と書いて「ぎんなん」と読めば実のこと、「いちょう」と読めば木のことを表すので、漢字だけでは読み方の見分けが付かず、何とも難しい!そこで今回の記事では「ぎんなん」「いちょう」のように、平仮名で書いていきますね。

ちなみに中国では、「銀杏」と書いて「インシン」と読み、実と木の両方の意味を示すのだとか。それぞれを区別したいときは、ぎんなんは「鴨脚子」、いちょうは「鴨脚樹」と書くそうです。

ぎんなんには、不思議が多い?

冒頭から不思議の多いぎんなん。その不思議は、まだまだ続きます。

漢字の次に、私が疑問に思ったこと。それは「ぎんなんは、いちょうのどの部分にあるの?」ということでした。いちょうの木を見上げてみても、(茶碗蒸しなどによく入っているような)ぎんなんの姿が無いような……もしかすると、私と同じような経験をされた方もいるかもしれません。

私たちがよく見るぎんなん(写真の右側2つ)は、いちょうの実(写真の左側2つ)のなかにありました!

いちょうは裸子植物の一種で、ぎんなんは固い殻に包まれた胚乳種の部分なんです。つまり正確に書くと、ぎんなんは「いちょうの実」ではなく「いちょうの種子の一部」ということになります。

臭いアリの並木と臭いナシの並木がある?

いちょうと言えば、独特の臭いがあることでも有名です。いちょうは東京のシンボルツリーでもあり都内では、いちょう並木をよく見かけます。他の地域などでも街路樹に利用されることの多い木のひとつですが、「臭いアリのいちょう並木」と「臭いナシのいちょう並木」があるような気がしませんか?

そもそも、いちょうの木には「雄(オス)」「雌(メス)」があり、実を付ける木が雌で、実らない木が雄です。ぎんなん特有の臭いは、雌の木の種子の外殻(果肉の部分)から出ています。この特性から、街路樹などにいちょうを使う際には、臭いのことを気にして雄の木だけを選んで使う場合があるそうです。

なるほど~~という感じですね。

ちなみに、東京と同じくいちょうの木の多いソウル市では、道路に落ちたぎんなんが自動車や歩行者などに踏まれて猛烈な臭いを発し、生活にトラブルを引き起こしたこともあるのだとか(想像を絶するほどの臭いだったのでしょう……)。

強烈な臭いは何のため?

では、この強烈な臭いは一体何のためなのでしょうか。

先に答えを言ってしまいますが、一説によれば「我が身を守るため」。

美味しくて栄養が豊富なぎんなんは、そのままだと動物に狙われやすくなります。動物から身を守り、ぎんなんが子孫を残すために、あの臭いが必要だったという訳です。

実は、いちょうは「生きた化石」とも呼ばれるほど古い歴史を持つ植物ですが、ここまで生き延びた理由は臭いにもあるのかもしれません!そう考えると、臭いも含めて「自然の恵みに感謝」ですね。

ちなみに、臭いのある外種皮の部分は、素手で触れるとかぶれを起こす場合もあります。「ぎんなん拾い」をする際には十分注意してください。

旬のパワーフード「ぎんなん」の栄養は?

さて。「栄養がたっぷり」と言われるぎんなんですが、具体的にどんな栄養が含まれているのでしょう。

ぎんなんには、抗酸化作用や免疫力アップが期待される「βカロテン」「ビタミンC」、体内の老廃物や余分な塩分の排出を助ける「カリウム」、脳の血流改善が期待される「ギンコライト」などが多く含まれています。

中国や日本では昔から、ぎんなんには咳や痰、しもやけ、血行不良、夜盲症などに効果が期待され、民間療法などではよく利用されてきました。空気が乾燥して喉の調子が悪くなりやすいこれからの時期にも、ぴったりの旬の食材と言えます。

ぎんなんは、子どもにはNG?

ここで知っておきたいことがあります。「ぎんなんは年の数以上は食べてはいけない」という言葉を聞いたことはありませんか?

あまり知られていないかもしれませんが、ぎんなんを食べることによって起こる「ぎんなん食中毒」にも関係しています。

特に子どもがかかるケースが多いようで、5歳以下が全体の7割を占めるという報告もあるのだとか。栄養たっぷりのぎんなんですが、小さな子どもには食べさせないほうが良さそうです。

↓ つい先日、小児科専門医/救急科専門医の知人が「ぎんなん食中毒」についての記事を書いていました。詳しく知りたい方は、こちらをご覧くださいね。
銀杏にご注意を!

いざ、ぎんなんの一大生産地「祖父江町」へ

ぎんなんについての基本的な知識を得たところで、ぎんなんの全国一の産地である愛知県稲沢市の「祖父江町」に出かけてみましょう!

中心部へアクセスするための最寄り駅は、名鉄尾西線「山崎駅」。単線ということもあり、ノスタルジックな雰囲気が漂います。

祖父江町は江戸時代から続くぎんなんの生産地であり、大粒でもっちりとした「祖父江ぎんなん」が有名です。

訪問したのは、10月中旬。台風の影響もあり前日まで風が強かったからなのか、いちょうの木の足元に敷かれた青いネットにはたくさんの実が落ちていました。

町内には樹齢100年以上のいちょうの木も多く、昔は米が凶作だった時の食料として備蓄されていたこともあるのだとか。また祖父江町では、いちょうの防火性を活かし、伊吹おろしから家屋を守る防風林として神社仏閣や屋敷の周囲などに植えられることが多く、「屋敷ぎんなん」と呼ばれています。

「ぎんなんの産地」と聞くと、東京などに見られる背の高いいちょう並木を想像しがちですが、祖父江町のいちょうの木は背の高いものは少なく、収穫のしやすさも考慮された樹高になっています。背伸びすれば手が届きそうな高さに、たくさんの実が付いている!

地元の方によれば「大粒に育てるためには、木の剪定にも知識と技術が必要」なのだとか。大きな実が付きやすい根元の部分に、日光がしっかり当たるように剪定しているそうです。

樹齢約300年のいちょうの原木を発見!

こちらは、山崎駅から歩いて3分ほどの場所にある祐専寺。

境内には、樹齢が約300年のいちょうがありました。

幹の部分に手を当ててみると、ジワリとあたたかい!何とも言えない、歴史の深さを感じます。現地に行かれる際には、ぜひご覧くださいね。

黄葉シーズンには毎年恒例のお祭りも

今回訪問した10月中旬は緑色の葉がほとんどでしたが、毎年11月後半頃になるといちょうが一斉に黄葉し、町全体が黄色に染まるそうです。(写真提供:愛知西農業協同組合)

この黄葉シーズンに合わせて、「そぶえイチョウ黄葉まつり」が毎年開催されています。2019年は11月23日(土・祝)から12月1日(日)まで開催予定。

お祭りの時期には、ぎんなんの販売やぎんなんを使った料理などの出店も。また、祖父江町ぎんなんを使ったお菓子やお料理などが味わえるお店も数多くあります。黄葉を鑑賞した後には、ぎんなんを食べて旬の味覚を楽しんでくださいね。

こちらは、「祖父江ぎんなん」の代表品種でもある「久寿」の原木。民家のなかにあるので普段は見られないのですが、おまつり期間中は特別に見学できるため、遠方からも多くの方が訪れるそうです(写真提供:愛知西農業協同組合)。

地元の方に教わった、簡単で美味しい食べ方

目で楽しんだ後は、口でも美味しく楽しみましょう!

ぎんなんを使った料理と言えば、茶わん蒸しや炊き込みごはんなどいろいろなレシピがありますが、素材そのものの楽しむなら「シンプル・イズ・ベスト」!
地元の方に簡単で美味しい食べ方を2つ教えてもらいました(ちなみに今回使ったぎんなんは、生産量の比較的多い「久寿」と「藤九郎」です)。

【おすすめの食べ方1】ぎんなんの素揚げ

もっちりとして絶品!この時期だけの翡翠色の美しさが際立ちます。

油を使うことで独特の苦味が和らぐので、「ぎんなんの苦味が苦手」という方にも食べやすいです。

<作り方>

1.ぎんなんをトンカチなどで叩いて固い殻を割り、中の実を取り出します(揚げている途中で茶色の薄皮が取れるので、薄皮は付いたままで大丈夫です)。産地などでは殻を取り外した状態でも売られています。

2.1~2分間ほどじっくりと素揚げにします。茶色の薄皮が取れてきたら取り出し、油を切れば出来上がり!お好みで塩を添えて召し上がってくださいね。

【おすすめの食べ方2】煎りぎんなん

フライパンや厚手の鍋などを使った方法です。最近は電子レンジで加熱する方法が広まっていますが、昔ながらの食べ方はやはり味わい深いです。煎るだけなので簡単!

<作り方>

固い殻付きのまま、弱火でじっくりと煎っていきます。殻にうっすら焦げ目が付いたら、出来上がり。手で触れるほどに冷ましてから、ペンチやキッチンバサミなどで殻を割り中身を取り出します。

時間が経つと固くなってしまうため、一度に食べきれる分を煎るようにするのがおすすめ。

いちょうの景色を楽しんだ後は、美味しいぎんなん料理に舌鼓……なんて、想像するだけでもうっとりです。これは日本酒が進みそう(笑)。

旬のパワーフード「ぎんなん」を食べて、実りの秋を満喫してくださいね。

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<参考>
*祖父江ぎんなん 公式サイト
http://www.ja-aichinishi.or.jp/ginnan/
*祖父江イチョウ黄葉祭り 案内サイト
http://home.owari.ne.jp/~sobuetyo/maturi.html
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書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生ふうど」を立ち上げる。現在は、郷土料理をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://yojofudo.com/