葛飾北斎の傑作快作を、世界の巨匠たちの作品と比較検証!今回は北斎とルソーの「月」対決をご紹介。月下には虎とライオン、あなたならどちらがお好きですか?
葛飾北斎 VS ルソー
夢見る力って大事…そんな幻想名画はいかがですか?まずは19世紀末の「日曜画家」ルソー。ヘタウマと揶揄されながらも、このうえなく魅力的な世界を描き続けた遅咲き作家です。その特徴は妄想力。実際には見たことがない砂漠を想像して描いた作品は、不思議な引力で人を魅了します。幻想といえば北斎も大の得意ジャンル。怪奇な物語から幽玄の世界まで、自由自在に描きました。うっとり天を見つめる虎もきっと、夜空で月と戯れる自らの姿を妄想しているのでしょう。
アンリ・ルソー「眠れるジプシー女」
©Alamy/PPS通信社 遠近法も使わず立体感にもこだわらず、ただ純粋に自らの楽園を描いたルソー。砂漠に眠る女性とライオンを描いたこの代表作も、もちろん妄想から生まれたもの。ルソーの絵には月がよく登場するが、本作の青白い満月は、地上を見守る存在として描かれた。
葛飾北斎「月見る虎図」
紙本一幅 96.2×29.0㎝ 弘化元年 個人蔵 80代半ば、晩年に近づくも変わらぬ想像力と表現力で描き続けた時代の肉筆画。不思議な静けさとどこかおどけたふうな虎の表情が、かえって胸に迫る。鼻に藍色が使われたほかは、墨の濃淡と茶色のみで構成された。