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北斎が世界のアートに革命を起こした!

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北斎が世界のアートに革命を起こした!

19世紀後半にヨーロッパを中心に広がった「ジャポニスム」。最も影響を与えた人物といえば、葛飾北斎です。なぜ、世界の芸術家は北斎に熱狂したのでしょうか。近代・西洋美術史と共に振り返ります。

19世紀初頭のヨーロッパでは、中国の美術工芸に影響を受けた「シノワズリー」が新しい美意識として浸透していました。一方、同時期の日本美術は鎖国の影響もあって、ほとんど知られていない状態でした。

19世紀も後半に入ったころ、パリに住む銅版画家ブラックモンが友人の印刷工房で思いがけない発見をします。日本から届いた磁器の緩衝材がなんと「北斎漫画」だったのです。

北斎が門人たちの作画修業のために描いた「絵手本」の、創意に溢れた的確なデッサンのかずかずは、あまりにもエキゾチックで衝撃的で、ブラックモンは「北斎漫画」の素晴しさを友人知人に吹聴。パリの芸術家たちは、北斎を介して日本独自の美術表現を知ることとなりました。

北斎が世界のアートに革命を起こした!葛飾北斎 「北斎漫画」十二編(部分) 天保5(1834)年刊 浦上蒼穹堂

ジャポニスムや印象派、アール・ヌーヴォーの元をたどると「北斎漫画」?!

さらに、1867年のパリ万国博覧会で、日本から出展した江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩の伝統工芸品や浮世絵がヨーロッパの人々の心をとらえ、日本美術に対する意識は一変。特に浮世絵の与えたインパクトは絶大でした。

なぜなら、錦絵に代表される浮世絵版画は日本独自の印刷による美術表現で、当時の海外では多色刷りの印刷物自体が珍しかったのです。

ec68b73c3a5181e901d7ea101d7abb6c-620x420葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」横大判錦絵 山口県立博物館・浦上記念館

そのうえ、その図案は、これまでだれも目にしたことがなかったものばかり。特に、当時の画家たちを驚かせたのが浮世絵の構図と色彩です。

アシメトリー(左右非対称)や何も描いていない背景の余白、対象物の一部を拡大したり切り取ったりした大胆な構図と、明るくてコントラストの強い色鮮やかな色彩表現は、西洋絵画の常識からかけ離れたもので、まさに未知との遭遇。素直な驚きとともに受け取られました。

このころのフランスは、17世紀にルイ14世が設立した美術アカデミーの教えが依然として金科玉条とされており、絵の主題は神話や聖書、文学作品に限られ、正確な素描をもとに、背景を詳細に書き込む画法以外は認められていなかったのです。

このルネサンス期以来の古びた美術様式に対して、近代を迎えたフランスには、市井の暮らしや自然の中に美を見出す画家たちが現れてきます。

江戸の庶民生活を活写した浮世絵は、彼らにとって古典的西洋絵画の概念を根底からくつがえすもので、斬新な日本美術のスタイルに喝采するとともに、浮世絵に憧れを抱き、その特質をみずからの創作に取り入れるようになります。

その先駆けとなったのが近代絵画の父と称されるマネであり、モネやドガ、セザンヌらの印象派の画家たち。それに続いたゴッホやゴーガン、ロートレックも浮世絵に傾倒した作品をつぎつぎに発表するようになって、画家のみならず彫刻家や工芸家、音楽家まで巻き込んでいきます。

北斎が世界のアートに革命を起こした!エドガー・ドガ 「背中を拭く女」 パステル、紙(カルトンに貼付) 1888〜1892年ごろ 国立西洋美術館(梅原龍三郎氏より寄贈)

6692bc97257f35b653e73c68114ef102-620x502ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」油絵、カンヴァス フィリップス・コレクション、ワシントンD,C,

彼らが推し進めてきた、浮世絵に端を発する新様式は、それまでの異国趣味的な興味の対象とはまったく異なっており、「ジャポニスム」と呼ばれるブームを呼ぶようになります。

フランスを皮切りにしたこのジャポニスムは、またたく間にヨーロッパやアメリカに広がり、装飾芸術の分野では、「アール・ヌーヴォー(新芸術)」運動へと発展。19世紀後半の西洋の近代芸術はジャポニスムを抜きにしては語ることができないほどの大流行へとつながっていきました。

ジャポニスムや印象派、アール・ヌーヴォーの元をたどると、「北斎漫画」をはじめとした絵手本があり、その発展の過程では、「大波」と呼ばれた「神奈川沖浪裏」に代表される富士山の連作「冨嶽三十六景」などの錦絵の影響も見逃せません。それらの作者である葛飾北斎こそ、西洋の近代芸術における革命家。その名は現在、世界史を彩った日本の偉人としても広く知られています。

2017年10・11月号 発売中

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