京都おはし工房
-文/和樂スタッフ小竹智子
(毎号旅記事を担当。橋本麻里連載担当)-
箸遣いに自信のない人も焼き魚を食べるのが楽しみに!
桜の名所としても人気、優美な建築ディテールも女性好みな御室(おむろ)の仁和寺(にんなじ)。ここへ参詣したら、忘れずに寄りたいのが「京都おはし工房」。箸専門店で販売を担当するうちに箸の重要さや安全性の大切さに目覚め、箸職人として独立した北村隆充さん。その熱い想いにふむふむ、サンプルで胡麻をつまんでほうほう。取材開始5分ですっかり北村さんがつくる箸の魅力にはまった。
磁器に陶器、漆器。骨董、作家もの、王室や皇室でも愛用される洋食器と、器は趣味として成立する。が、箸はどうだろう。小さいながらも日本の食卓を支えているのに、語る人は少ない。塗り箸か否か、手に合い使いやすい長さはと、選ぶのがせいぜいだろう。口に入るものなのに、日々使う頻度でいったらいちばん多いかもしれないのに。
私がしっくりきたのは紫紅木の八角形で、箸先が1㎜ほどのもの。転がらないけれど指あたりが優しく(四角や六角のものはごつごつした感じ)、何より極細の箸先に惹かれた。
箸1膳8,000円が高いか安いか…わが家では当時いちばん高価な箸となったけれど、この箸で食事をするとなんでもおいしい。本当だ。唇に当たってもほんのわずかなので、食べ物の感触をじゃましない。魚の小骨も難なくつまめ、焼き魚を食べた後の皿がきれい。箸が替わると料理のおいしさは確実に変わる。
素木の経年変化か、色がずいぶんくたびれてきた。そろそろ新調しに、また御室へ行かなくては。
京都 おはし工房
住所/京都市右京区花園天授ヶ岡町16-5 地図
営業時間/10時〜17時
定休日/木曜、日曜