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2019.08.21

京都おすすめ骨董店9選。京都駅から徒歩・ 八坂神社や平安神宮付近初心者向け・カフェも紹介

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うつわや骨董が好きな人にとって、京都ほどワクワクする場所があるでしょうか? 日本一の審美眼とうつわ愛にあふれたこの町へ、お茶時間のための、骨董の茶碗や見立ての茶道具を探しに出かけました。今回巡ったのは京都御所界隈と、八坂神社や平安神宮に近い岡崎・三条。それぞれ骨董大好きコース骨董初心者コースの2つに分けてご紹介します。物を買うだけでなく、しつらいや見立てのセンスも持ち帰ることができたら、日々の生活もぐっと豊かになりそうです!

1 すべての店が京都御苑から徒歩圏内!
「人気の御所南~東の骨董大好きコース」

李朝、民藝、カゴに色絵…ときめくうつわの名店「古美術いもと」

左/夷川通の民家を改装した小さな店。右/片側にだけ把手が付いた新羅土器を花生けに。7~8世紀ごろ。60,000円

手仕事の店が並び、鴨川にも京都御苑にも近い御所南。夷川(えびすがわ)通りにある「古美術いもと」は、こぢんまりと心地いい空間に、李朝(りちょう)や民藝の陶磁器から茶道具、仏教美術まで揃っています。

「生活の中で使いやすいもの。つくられた時代の風土や味わいが伝わるものが好きです」と話す店主が選んだうつわはどれも品がよく、手にするたび心がときめきます。「迷ったときですか? “花を生けたら映えそう”と思えるかどうかは、ひとつの基準かもしれませんね」と、なるほど! な提案も。端正な外観ゆえ敷居が高そうにも見えますが、一度入ってみたらきっと「訪ねてよかった」と思うはず。椿を生けた新羅(しらぎ)土器など、しつらいのセンスにも脱帽です。

色絵萬古(いろえばんこ)の茶碗。三重県四日市が発祥の萬古焼は、京風の色絵など茶人好みの優雅な作風が特徴。幕末ごろ。35,000円 右にあるのは、中国南方の楕円籠。
鉄の金具の細工も美しい。55,000円

◆古美術いもと
住所 京都市中京区寺町通夷川西入ル丸屋町698
営業時間 11時〜18時
定休日 不定休
公式サイト

西洋ヴィンテージを茶道具に。この“見立てセンス”を学びたい!「Umwelt」

左/西洋の道具を扱うヴィンテージショップ。右/市松のタイルは17世紀オランダ製。24,840円

京都のセンスって凄いでしょう! と世界に自慢したくなるこのしつらい。北欧の陶磁器や西洋の古道具を扱う「Umwelt(ウンベルト)」は、茶道具にもなるヴィンテージを提案してくれます。深いブルーの北欧陶器を茶碗にしたり、真っ白な蛍手(ほたるで)のボウルやオランダのアンティークタイルを菓子器に見立てたり。北欧デザインに精通し、京都の古美術店で修業した店主は、自宅でも骨董で茶を楽しんでいるそう。次から次へとアイディアが繰り出されます。

「タイルなどの平らなものがあると、茶杓や茶巾を置くのに便利ですよ」と、実用的なアドバイスもうれしい。自由な見立てと繊細な気配り。こんなしつらいをマスターできたら、ますますお茶が好きになりそうです。

菓子器はフィンランド・アラビア社。43,200円 茶碗は20世紀デンマークの名窯パルスフス。32,400円 茶筅筒(ちゃせんづつ)にしたのは口に銀の覆輪(ふくりん)のある1920年代のカットグラス。5,400円 茶入れは白磁のマスタード入れ、象牙スプーンは16,200円

◆Umwelt
住所 京都市中京区夷川通御幸町西入ル達磨町588-1
営業時間 10時~18時
定休日 木曜休(臨時休あり)
公式サイト

“よく使い込まれた茶碗がいい茶碗”そんな逸品がいっぱい「大吉」

この店に来るたびそれまでハードルが高かった“京都の骨董”との距離が縮まって、今ではすっかり骨董好き。寺町二条の「大吉」(だいきち)にはそんなファンがたくさん。酒と民藝と音楽を愛する店主が立つ店内には、稀少な李朝茶碗もあれば、数千円で買える民藝やヨーロッパの陶器も並んでいます。

取材時にはこんなひと幕も。茶碗選びで悩んでいたお客さんに、「そのうつわで実際に点ててみましょうか?」と店主。「茶碗は使ってみないと本当のよさも美しさもわかりません。たとえば…」と堅手(かたで)茶碗を手にとり、「水に濡らすとしっとり輝くでしょう。よく使い込まれていて、目利きの茶人が愛用していたんだろうと思います」。ものの魅力を伝える一番いい方法を知っている。これが京都の底力!

左/重ねたオランダの輪線陶器は各6,000円、右端は薩摩焼 25,000円。 右/金継ぎによる直しの景色が美しい。李朝の堅手茶碗。16世紀。85,000円

◆大吉
住所 京都市中京区寺町通二条下ル妙満寺前町452
営業時間 11時〜18時30分
定休日 月曜休(臨時休あり)

美しい古渡り更紗に大興奮! 煎茶ティールームもうれしい「日日/冬夏」

左/庭のある古い日本家屋で、美しい暮らしの手仕事を紹介するギャラリー。右/エキゾチックな古渡り更紗は大名や茶人にも愛された。写真の印度更紗は1枚10,800~21,600円。A4やB4サイズで販売。そのまま飾っても、仕覆(参考品)に仕立てても。

築90年を超える日本家屋のギャラリー「日日(にちにち)」には、現代の職人がつくる暮らしの道具が並びます。が、実はこちらでは18~19世紀にインドから伝播した染色木綿布“古渡り更紗(さらさ)”も充実。その質のよさたるや美術館の学芸員も驚愕したほどです。

インド更紗らしい茜色の発色も見事ですが、なにしろこの織りの素晴しさ。繊細でやわらかく、布の心地よい手触りもさることながら、花や植物をモチーフにした可憐な染め柄にはうっとり。どれも素敵で、1枚だけ選ぶことができません。そんなお宝に触れた後は、庭をのぞむティールーム「冬夏(とうか)」へ。茶葉を4年間熟成させたヴィンテージ煎茶の、甘く丸みのある香りで一服を。

左/古渡りの印度更紗(18世紀 7,560円)に、漆作家、山本隆博の棗をあわせて。右/「冬夏」では、無農薬栽培の茶葉を使った煎茶各種を楽しめる。稀少種の一番茶を熟成させ、毎朝汲みに行く神社の名水で淹れたもの。3種のオーガニックカカオなどの菓子付きで2,000円

◆日日/冬夏
住所 京都市上京区信富町298
営業時間 10時~18時(ティールームは17時30分L.O.)
定休日 火曜

茶の目利きたちが信頼する花屋さん。実は骨董店でもありました!「徂徠」

左/1階は花屋。2階は古染付やガラスがぎっしり。3階はギャラリー風。右/李朝の脚付き皿(150,000円)にチョコレート。

茶事にも骨董にも花は欠かせません。近隣の骨董店主たちが厚い信頼を寄せる花屋「徂徠(そらい)」は、2階と3階で骨董も扱っています。

「気持ちのいい空間で暮らすには、花と骨董が必要。そう思って店を始めたのが20年前です。季節の花も李朝も伊万里も江戸硝子も、みんな同じように好きなのよ」と話す店主の、骨董愛にあふれたセレクトが素晴しく、品のいい李朝の茶碗もあれば、ぷぷっと吹き出すキッチュな兎の染付(そめつけ)もあり。「お茶は転用の文化です。少し値が張っても気に入ったものをひとつ買って、食器に花入に水指に…と何にでも使ってみる。そういう楽しみ方も素敵ですよね」京都の目利きの、圧倒的な美意識をこの店で。

李朝白磁のおおらかな形と、手にしたときのやわらかな質感。離れがたくなる美しさ。150,000円

◆徂徠
住所 京都市上京区丸太町通河原町西入ル信富町325-4
営業時間 12時~19時
定休日 木曜

2 八坂神社や平安神宮の帰りに寄りたい
岡崎・三条骨董初心者コース

まずは硝子をひとつ。“骨董はじめ”にも優しい名店「尾杉商店」

左/昔ながらの道具屋さんらしい風情を守り続けている。右/大正時代のギヤマン(カットガラス)鉢は建水に。直径25.5㎝ 140,000円

「骨董ははじめてで…」と入ってきたお客さんが、店主の丁寧なアドバイスにうなずきつつ、赤絵(あかえ)の小皿や古伊万里の蕎麦猪口(そばちょこ)をうれしそうに求めていく。尾杉商店は、そんな光景をよく目にする人気店です。

今回のお目当ては美しい色硝子。店主いわく「涼しげなガラス器を建水(けんすい)や菓子鉢に見立てるだけで、季節感が出ますよ」。店内には焼物も山積みです。「この茶碗は、見込み(底)が茶筅ずれでつるつるになるくらい使い込まれています。いい茶碗の証ですね」という店主のさりげないひと言を頼りに、たくさんの中から好みの1点を選び出すのもなかなか楽しいのです。

左/明治時代の切子ガラス。直径19㎝ 28,000円、水色・明治末期のプレスガラス。直径17㎝ 5,000円 右/呉須絵の牡丹唐草が珍しい瀬戸焼。江戸中~後期。直径21㎝ 35,000円

◆尾杉商店
住所 京都市中京区御幸町通三条下ル海老屋町315
営業時間 10時~19時30分
定休日 水曜

手ごろな豆皿小皿からとっておきの李朝茶碗まで「アンティークベル」

左/“現代の生活や料理に合うもの”が選ばれている。麦わら手の釉薬を掛け分けにした絵瀬戸。江戸後期 25,000円 右/日本の手力盆は15,000円。李朝の塩笥(しおげ)茶碗、木を刳り貫いた脚付き皿 5,000円

「骨董で楽しむお茶ですか? だったら、ちょうどいいサイズの盆や脚付きの膳があるといいですよ」と教えてくださったのは、姉小路通の人気店「アンティークベル」の店主。ふらりと入りやすい雰囲気の店内では、朱塗り盆に豆皿が並んでいたり、染付とガラスと白磁が銅のトレイの上で絶妙な調和を見せていたり。

「お盆にのせるだけで恰好がつくし、いろんなうつわをまとめる力になるんです」。ひと月に何度も買い付けに行くという目利き店主の言葉を頭に刻みつつ、広い店内を探索すれば、古陶磁や民藝から大正・昭和のガラスまで、幅広い品ぞろえに買い物欲が高まります。「価格は抑えています。気軽に買えることが大切だから」と言い切る太っ腹な値付けも魅力です。

左上の染付は、ふくらすずめの形。4,500円、黄色の珉平焼3,000円、その左下は江戸後期の伊万里4,500円、明治期の漆盆は8,000円

◆アンティークベル
住所 京都市中京区姉小路通御幸町東入ル丸屋町334
営業時間 12時~19時
定休日 無休
公式サイト

静かな一軒家でひと休み。香り高い中国茶にホッ「好日居」

中国・雲南省の古樹茶は、とにかく飲み心地がいい。3煎目、4煎目と次第に味と香りが変わるのも楽しい。普洱生茶2,500円(お菓子付き+300円)

ひと休みするなら大正時代の一軒家を改装したカフェ「好日居(こうじつきょ)」。穏やかな光が入る部屋で淹れていただいたのは、古樹(こじゅ)からつくられた普洱(ぷーあーる)生茶。店主いわく「樹齢500~600年の茶樹からつくられた普洱生茶を、経年によって追熟しています。熟成させるほどに深みが増して、薬効も高まるといわれているんですよ」。

なんだか骨董気分にもぴったりのお茶ですが、これが何煎淹れてもおいしく、さわやかでいい香り! 清朝時代の茶杯など、古いうつわのコーディネートも素敵です。定期的に茶会を開催するという空間には、李朝のバンダチ(簞笥)やアンティークの楽譜が飾られていて、ここでも京都のセンスに目を奪われます。

30年間空き家だったという民家を店主みずから改装。季節を感じる庭の景色に心和む。毎朝汲みに行く泉水を土ものの薬缶で沸かす、その音も心地いい。

◆好日居
住所 京都市左京区岡崎円勝寺町91
営業時間 13時~18時
定休日 不定休
※営業日はfacebookで確認を。少人数制の茶会や中国茶教室も定期的に開催。
公式サイト

“布の骨董”にうっとり…茶籠や古裂の小物もそろいます「ちんぎれや」

左/数千円の端切れも博物館級の裂も並ぶ京都の老舗。右/古帛紗。更紗3,000円~、印度更紗25,000円など。

古裂(こぎれ)とは布の骨董のこと。桃山時代の衣装裂や、江戸時代の織物、インドやヨーロッパから渡ってきた更紗まで、大切に残されてきた古い布がこう呼ばれます。

「古裂の中には、お茶の世界とともに残ってきたものがたくさんあるんですよ」と話すのは、縄手通(なわてどおり)にある古裂の名店「ちんぎれや」の店主。「“仕覆(しふく)くずし”といって、昔の茶人が仕立てた仕覆が、ほどかれ、裂の状態で残っていたりもします。裂を通して、茶人の好みやセンスを知ることができるんですね」。なるほど、古裂ってロマンティック! 袋ものや籠の内側だけに華やかな裂を使ったものも多く、茶人の美学がうかがえます。経年による美しい色、今見ても新鮮なデザイン、布味と呼ばれる温かな手触り。店内にはそんな古裂が並ぶほか、古裂を使った小物や茶籠も人気です。

茶籠は、軽くて上質な天葵草で編んだ下げ籠を古裂で仕立て直したもの。55,000円、内側に古渡りの裂を張った竹籠48,000円、17世紀印度更紗の袋を茶杓入れに。30,000円

◆ちんぎれや
住所 京都市東山区縄手通り三条南入ル元町372-1
営業時間 10時~18時
定休日 無休

北欧ガラスや古民具を茶道具に。“見立て”がこんなに楽しいなんて!「Soil」

左/テーブルには世界各地の小道具が並ぶ。右/唐津の徳利。江戸時代 15,000円

北欧、東欧、ときどき日本。「Soil(ソイル)」は、世界各地で集めた美しいものを扱う南禅寺近くの古道具店です。そのまま使える食器やガラスもあれば、朽ちた木の蓋モノやいい具合に錆びた鉄の古民具も。

「用途も大切ですが、使い込まれたモノの素材感とか、職人の道具がもつ“理にかなった形”に惹かれます。それを眺めながら、何に使おうか考えるのは楽しい」と、キラキラした目で語る若い店主は、幼いときから骨董市に通い、古美術商で修業したという目利きでもあるのです。たとえば、フィンランドのワインかごを茶道具に見立てたりと、自由な発想に大興奮。この店では店主とあれこれ会話を交わし、そのセンスを盗みたい!

左/エリック・ホグランのガラスピッチャーや19世紀の吹きガラスボウルと、李朝後期の青磁平茶碗(8,000円)の組み合わせ。19世紀後半のテキスタイル下絵を額装したもの(20,000円)を軸代わりに。乳白ガラスの白粉入れや英国のスプーン(3,000円)も茶道具に見立てて。右/くすんだ色が美しい、1950~60年代のケーキ皿を菓子皿に。フィンランド・クピッター窯。直径16㎝。各4,000円

◆Soil
住所 京都市左京区北門前町476-1
営業時間 12時〜19時
定休日 水・木曜日(買い付けなど臨時休あり)
公式サイト

ー「和樂」2018年4・5月号よりー
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