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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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2024.03.14

ハンバーグが絶品! 野村万之丞のお気に入り「ウチョウテン」へ【狂言プリンス「笑い」の教室】 vol.3

300年続く野村万蔵家で活躍する狂言師・野村万之丞(のむらまんのじょう)さん。【狂言プリンス「笑い」の教室】は、27歳の狂言師が等身大の言葉で、狂言の面白さを語る連載だ。

尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる現代茶道ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。

▼野村万之丞さんってどんな人? 詳しく紹介しています!
20歳で「万之丞」を継いだ、若き狂言師【狂言プリンス「笑い」の教室】 vol.1

親戚のスナックで会った初対面の人が見に来てくれた「ふらっと狂言会」

今回はカジュアルな雰囲気で取材。普通にランチをしながらお喋りをする感覚で、狂言の話を聞く。伝統芸能の家に生まれた万之丞さんも、ハンバーグが大好きだそうだ。お気に入りの洋食屋さんでランチ開始!

お気に入りのお店、「ウチョウテン」のハンバーグランチ

給湯流:今日は「ウチョウテン」さんでハンバーグを注文されましたが、どのような時にハンバーグを召し上がりますか?

野村万之丞(以下、野村):日本全国に公演に行くと、その土地土地で食事をするのが1つの楽しみなのです。公演や稽古前にハンバーグを食べることもありますね。

給湯流茶道(以下、給湯流):なるほど。ちなみにハンバーグはかたいものと、柔らかいもの、どちらがお好みですか?

野村:僕は柔らかいほうが好きですね。ウチョウテンさんのハンバーグも柔らかくておいしいです。

給湯流:ではハンバーグを召し上がりながら、質問にお答えください。万之丞さんを中心に企画をされている若手の公演「ふらっと狂言会」は次で3回目の開催となります。今まで2回、お客さんの反応はいかがでしたか?

野村:今までは狂言の公演チラシを初心者の方に手渡すと、「わあ、すごい。いつか行ってみたい。」とは言ってくれるのですが、来てくれないことも多くて……。

給湯流:初心者には「難しそう、私には無理かも」と思われることもあると。

野村:一方、僕らが主催する「ふらっと狂言会」は、初心者の方、若い方もふらっと立ち寄って楽しめる公演というコンセプトです。ですから、チラシは工夫しました。漫画家の東村アキコ先生(代表作:「東京タラレバ娘」)にお願いして、僕らをかわいいキャラクターにしてもらったのです。そのイラストをチラシに載せたら、初心者でも来場してくれる方が増えました。

給湯流:それは素敵です。

野村:親戚が経営しているスナックに行って、初対面の方に「ふらっと狂言会」のチラシを渡したら、その場ですぐチケットを買ってくださったこともあります。嬉しかったです。

給湯流:スナックでの出会い! お客さんの層がどんどん広がるのは、素晴らしいですね。

若い世代のコミュニケーション・ツール、スマホ・ステッカーを取り入れた

野村:「ふらっと狂言会」3回目は新たな試みで、ステッカーを会場で配布しようと思っています。

給湯流:それはどんな意図で企画されたのですか?

野村:今、スマホの透明ケースにステッカーを入れている同世代の友人が多くて。ステッカーがきっかけで「それ、何?」と話題になったりします。

給湯流:なるほど。若い方の間で、ステッカーはコミュニケーションの道具になっているのですね。

野村:「ふらっと狂言会」のステッカーも、お客さんたちがスマホケースに入れてくれてご友人と話題にしてもらえたらうれしいですね。

膝枕が見どころ!? 狂言「寝音曲」

給湯流:「ふらっと狂言会」3回目で、万之丞さんは「寝音曲(ねおんぎょく)」という演目に出演されます。今回、この演目を選んだ理由はありますか?

「初めて飲食店さんにサインを頼まれてうれしい!」楽しそうな万之丞さん

野村:「ふらっと狂言会」メンバーの一人、小笠原弘晃(おがさらわ・ひろあき)が一度だけ稽古会で「寝音曲」の太郎冠者(たろうかじゃ/この演目の主人公)を演じたのですが、まだ大勢のお客様の前で公演をしたことがなくて。ぜひ、今回挑戦してみよう、という話になりました。

給湯流:それは楽しみです。

寝音曲 あらすじ
ご主人様に急に呼び出されたので何かと思ったら、昨日部屋で謡っていたのを聞かれてしまい、声が良いから今この場で謡えと言われた太郎冠者(※1)。いや、この先も事あるごとに謡わされるのは嫌だなーと思って、あれこれ条件を出しても主人がすべて準備してきて対応力が半端ない!!お酒も飲ませてもらい、ご主人様の膝枕で、いよいよ謡わなければならない状況です。とにかく短い曲をさらっと一曲。 はい、おしまい、と思ったら次は長い曲をリクエストされて・・・。/「ふらっと狂言会」チラシより一部引用  ※1:この演目の太郎冠者は、召使い。

野村:「寝音曲」、見どころの1つは、膝枕ですね。召使いが主人の膝の上で寝ている場面があります。すると主人が召使の頭をぐーっと上げてちょっと変化が起きる、といった流れになるのですが……。

寝音曲/稽古会での様子

野村:僕が初めて主人役をやったとき、召使い役を祖父が演じていました。

給湯流:人間国宝であるお爺さまが召使い役で、フレッシュな万之丞さんが主人役とは、立場が逆転している感じですね(笑)。

野村:本来は主人が主導で、召使いを起こすというストーリーです。ですが、僕が初めて主人を演じた時は、祖父・召使い役のほうが「このタイミングで起き上がっていくのだ」とリードして稽古してきた。そのような裏事情を、お客さんに見えないようにするのが大変でした(笑)。

給湯流:たしかに。寝ている召使いのほうが、自ら起き上がっているように見えたら、変です(笑)。

ウチョウテンのみなさん、和樂web編集長と記念撮影

野村:そのあと、僕は「寝音曲」で何度か主人役をやってきました。だから今回の「寝音曲」は、あらすじ通り主人役の僕がリードして、寝ている召使いを起こすことができそうです。

給湯流:膝枕のシーンを楽しみに、鑑賞いたします!

野村:「骨皮」という曲も、当日やります。こちらは二番目の弟、眞之介が初めてシテ(主役)を務めます。落語にもなった面白い狂言。勘違いやすれ違いが笑いを巻き起こすストーリーです。こちらもぜひご覧ください。

給湯流:どちらも楽しみです! 

取材・文/給湯流茶道

ウチョウテン

大人気の洋食屋さん。看板メニューのハンバーグのほか、万之丞さんはメンチカツもお気に入り。

東京都豊島区南池袋2-36-10 SoHo103

ふらっと狂言会♭3

万蔵家三兄弟を中心とした、ふらっと気軽に楽しめる敷居もフラットな狂言会。
2024年4月29日(月祝)11:00開演
国立能楽堂

万蔵家三兄弟を中心とした若手がメインとなって企画し、狂言を若い世代の方々にも気軽に楽しんでもらおうと、さまざまな趣向を凝らしています。今回は特別に東村先生のイラストを中心としたオリジナルステッカーを来場者全員にランダムでプレゼント! 全7種を予定しており、販売もします。

【番組】
解説 万之丞、拳之介
狂言「寝音曲」 小笠原弘晃 万之丞
休憩
狂言「骨皮」 眞之介 石井康太 拳之介 小笠原弘晃 河野佑紀

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野村万之丞

野村万之丞 (のむら まんのじょう)1996年11月28日生まれ、東京都出身。本名、虎之介。祖父は初世野村萬(人間国宝・文化勲章受章)、父は九世野村万蔵(万蔵家九代目当主)。3歳の時「靱猿」で初舞台を踏む。修業の節目となる大曲や秘曲のうち「奈須与市語」「三番叟」「釣狐」「金岡」をすでに披く。2021年より一般の方が狂言を習える「風之会」を開設。狂言以外にも、専門学校舞台芸術学院、桜美林大学、日本体育大学の講師を務め、2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」では明治天皇役で出演するなど、幅広く活動。
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