「バレリーナ クリップ」に秘められた
メゾンの物語と比類なきサヴォアフェール
「ヴァン クリーフ&アーペル」と舞踏芸術との出合いは、1920年代まで遡ります。メゾンの創業一族で、エステル・アーペルの末弟にあたるルイ・アーペルは、バレエをこよなく愛し、甥のクロード・アーペルを伴ってはよくパリ・オペラ座を訪れていました。
’39年、ニューヨーク進出を成功させたクロードは、叔父からバレエへの情熱を受け継ぎ、それをクリエイションに反映させていきます。そして’41年、初の「バレリーナ クリップ」が誕生。優美なポーズ、衣装の美しさは、見る者の心を瞬く間にとらえ、多くの作品が生み出されました。それらは同時期に生まれた「フェアリー クリップ」とともにメゾンのシグネチャーに…。第二次世界大戦下の暗い世にあって、夢と希望の象徴であり続けました。
ジュエリーとバレエの共通点は、精巧な技術によって優雅さを追求することにあります。アトリエはバレリーナたちの動きを入念に観察し、マンドール(黄金の手)と呼ばれる熟練の職人の手でそれを具現化していきました。制作にあたり重要な役割を果たしたのが、卓越したモデリング技術です。ワックスから削り出されたバレリーナのモチーフは、躍動感さえ覚えさせるものでした。それが鋳造されてメタルパーツとなり、彫金や石留め職人のもとへ。伝統のサヴォアフェールを駆使することで、比類なきジュエリーとなるのです。
2007年、メゾンは「バレリーナ クリップ」のハイジュエリーコレクション「バレエ プレシュー」を発表。今回、このコレクションの名のもとにクラシックバレエの名作や伝説のバレリーナへのオマージュというべき新作が加わりました。より詩情豊かに、表現力を高めた「バレリーナ クリップ」は、誕生から80年以上の歳月を経た今も、舞踏芸術への飽くなき探究心によって進化を続けているのです。
撮影/戸田嘉昭