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2017.03.03

河鍋暁斎の描く動物はキモかわいい!?徹底解説

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卓越した筆技から繰り出される愛すべき動物たちの姿

暁斎の動物画の特徴は、ひとえに擬人化の妙と、奇抜なアングルや有り得ない姿態にもかかわらず、驚くほどリアルで自然に見える、卓越した描写力にあると言えるでしょう。常日ごろから、写生の技を磨くことに専心し、動物たちの仕草や瞬間的に見せる愛らしい表情をすべて完璧に脳裏に焼き付けていたという河鍋暁斎。だからこそ彼は、有り得ないはずの姿態の動物たちの姿を、愛らしくもユーモアたっぷりに描き出すことができたのです。そこには、独特の感性に裏打ちされた鋭い観察力と、ありとあらゆる技を体得していた暁斎ならではの、圧倒的な画力が秘められています。暁斎の「きもかわ」絵画のすべてが動物画の中にはあるのです。

戯画の源泉『鳥獣人物戯画』に勝るとも劣らない暁斎のユーモア

平安時代の国宝『鳥獣人物戯画』(高山寺)は、至高の絵巻にしてマンガの原点。狩野派の中には、この傑作の模写を実践した絵師もいたことから(狩野探幽など)、一時、狩野派の絵師についた暁斎もまた、この絵から動物画の基礎を学び取ったのかもしれない。暁斎の描く「鳥獣戯画」には、鋭利な視線とユーモアが込められ、得も言われぬ可笑しみが込められている。

DMA-TBM000715『鳥獣戯画 鼠曳く瓜に乗る猫』一面 紙本着色 37.7×52.5㎝ 明治12(1879)年ごろ 大英博物館(アンダソン旧蔵)©The Trustees of the British Museum c/o DNPartcom

即興で描いた水墨画にも洒脱なユーモアが満載

もとは50枚ほどの絵を集めた、暁斎の画帖の中の1点といわれる作品。恐らくは、客の求めに応じて宴の席などで即興で描いたものと思われる。その証拠に象の首の辺りには畳の目の跡がついている。大きな象が、小さな狸に戯れついているようで、なんとも微笑ましい一枚。

DMA-P03-04-3 1『象とたぬき』一面 紙本淡彩 19.6×17.5㎝ 明治3(1870)年以前 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection,London Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

蛙に人力車を引かせる!?奇想天外な発想力も天下一品!

蓮の葉でできた人力車の上で、煙草を吹かす2匹の蛙は、見事なまでに車上でふんぞり返っている。動物を擬人化することで、人間社会のある種の縮図を描き出そうとしていた暁斎の真骨頂とも言える作品。電柱が蓮の茎と花になっているのも面白い。

DMA-P03-04-2 G0511『町の蛙たち』一幅 紙本淡彩 127.5×48.0㎝ 明治4~22(1871~89)年 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection,London Photo:立命館大学アート・リサーチセンター