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2024.11.11

「右利き、でも夜は左…」白洲次郎のチャーミングな素顔とエピソード

20世紀の激動の日本を、風のように駆け抜けて生きた白洲次郎さん。ここではプライベートな場面で見せる、魅力的な素顔をご紹介します。

野球が好き

プロ野球の贔屓(ひいき)のチームは大洋ホエールズだった。晩年、ポルシェをはじめ数々所有する愛車でドライブに行くときは、この大洋ホエールズのキャップを被り、赤いグローブで出かけた。友人の小林秀雄たちと一緒に、〝文壇野球〟に出場したことも。

大洋漁業の社外重役であったからか、大洋ファンだった次郎。

「右利き、でも夜は左…」

入院したとき、看護師さんに注射のため利き腕を尋ねられて、「右利きです。でも夜は左…」と答えた次郎。酒飲みの人のことを「左利き」と言うジョークでしたが、看護師さんは意味がわからずに、スルーされてしまったそう。ほぼ毎日、晩酌(ばんしゃく)は欠かさなかった。

ゴルフはPlay Fast

ゴルフはハンディキャップ4まで行き、80歳近くまでプレイを楽しんだ。晩年は大正時代創立の名門・軽井沢ゴルフ倶楽部(クラブ)の理事長を務めた。メンバーは平等でマナーに厳しく、コースでは「プレイ ファスト」を徹底。従業員にもよく声をかけて皆から慕われた。

左/何よりもスコッチを愛した。親友のロビンから贈られたウイスキー〝ブラック・ボトル〟と、ウイスキーボトルから自作した緑色のグラス。右/軽井沢ゴルフ倶楽部でプレーを早くさせる啓蒙のため、次郎が文字を書いてTシャツを作成。そのときのメモ。

農作業も大工仕事も

次郎は、畑仕事や大工仕事など体を動かしてものをつくることが好きだった。三本足の椅子などときどき失敗作もあったが、調理用のヘラ、サラダサーバー、靴べらなどは上手につくって、白洲家の家事を担っていた娘の桂子さんは大変重宝したという。

家ではどてら

鶴川の家では夏は浴衣(ゆかた)、冬はその上に黄八丈(きはちじょう)のどてらを羽織(はお)って過ごすのが次郎の定番だった。英国紳士のイメージからは意外であるが、家族にとっては日常の姿。自宅やリゾート以外では、外出時は必ずスーツを着用していた。

左/次郎が農作業のときに着用していたカーキ色のつなぎ。これに長靴を合わせるスタイルが定番だった。中/次郎作の竹の靴べら。長野の「みなとや旅館」のご主人や放送作家・作詞家の永六輔(えいろくすけ)さんにも褒ほめられた。右/黄色、樺(かば)色、黒色の草木染めの糸で織られた八丈島に伝わる絹織物「黄八丈」。どてらに仕立てたのはなんとも贅沢!

喧嘩は機先がすべて

次郎の喧嘩っ早さは生涯変わらなかった。娘の桂子さんの運転で車の助手席に乗っていたとき、たまたま隣に停まった車の若者たちが、懐中電灯で桂子さんを照らしてからかった。次郎はすぐさま飛び出して若者二人を車から引き摺(ず)り出して謝らせ、桂子さんに「喧嘩は機先がすべてだ」と言ったというエピソードも。

永遠の〝オイリーボーイ〟

中学生のときに父親に買ってもらったペイジ・グレンブルック、イギリスではブガッティとベントレーの2台を所有し、友人たちから、無類の車好きとして〝オイリーボーイ〟と呼ばれた次郎。その後も、さまざまな自動車遍歴を経て、ポルシェが最後の愛車になった。プライベートでは80歳になるまで、1968年製のポルシェ911Sを運転した。

ベレー帽を被り、貴公子のようにスタイリッシュな装いで船遊び。

白洲次郎、正子の面影を訪ねることができる「旧白洲邸 武相荘」
住所:東京都町田市能ヶ谷7-3-2
電話:ミュージアム042-735-5732 レストラン042-708-8633 ショップ042-736-6478
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休み:月曜(祝休日は開館)、夏季・冬季休館あり
メール:info@buaiso.com
公式サイト:https://buaiso.com/
※レストラン、ショップゾーンは入場無料 ※団体での訪問は、あらかじめ予約のこと


協力/牧山圭男、牧山桂子 写真提供/旧白洲邸 武相壮 撮影/篠原宏明 構成/高橋亜弥子、吉川 純(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2024年6・7月号)』の転載です。
出典・参考文献/『プリンシプルのない日本』白洲次郎、『風の男 白洲次郎』青柳恵介、『白洲家の日々 娘婿が見た次郎と正子』牧山圭男、『次郎と正子 娘が語る素顔の白洲家』牧山桂子(以上新潮文庫)、『白洲次郎の流儀』(新潮社)、『白洲次郎』(平凡社)、『白洲次郎 一流の条件』(宝島社)

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和樂web編集部

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