華やかな舞台を支えるこだわりのルーティン

「歌舞伎の魅力は華やかさ」と語る玉三郎さん。その華麗な舞台を彩る絢爛豪華な衣装は、軽いものでも10kg、重いものだと40kgにも及ぶといいます。実際には非常に過酷な舞台を支えるのは、特別な秘訣ではなく、極めてシンプルで規則正しい生活なのだそうです。
これまで大きな病気をしたことがないという玉三郎さんが実践するのは、「身体にいい食べ物を食べて、よく眠ること」。口に入れるものはなるべく有機栽培のシンプルなものにこだわり、特に自家製の小松菜ジュースは毎朝欠かさず愛飲しているのだとか。パインやキウイで味を調えるものの、「みなさんには飲みにくいかもしれませんね」と、笑顔を覗かせました。
また、健康的な生活に欠かせない習慣として「昼寝」を挙げた玉三郎さん。電気を消して布団に入り、30分ほどしっかり休むことで、目覚めた後は頭がスッとクリアになり、気にしていたことも気にならなくなるほどなのだそう。たとえ休日でも、朝食の後には昼寝を日課とし、なるべく規則正しくリズムを崩さないようにする、とプロフェッショナルな自己管理を徹底されています。
舞台に刻む「積み重ねた時間」と「継続」の精神
式の後半では、今年を振り返って印象に残った言葉として、「継続」の文字を披露されました。特段、一年の抱負を掲げることはないとしつつ「今日を大事に生きることを継続したい」と、これまで一瞬一瞬をかみしめるように、大切に積み重ねてこられたことを明かされました。
また、華やかな女形を演じる上で大切にしていることについても「今まで生きてきた時間と空間、それを通じて何を感じてきたかが蓄積されて役に出てくる」と語ります。それゆえ、若い世代に向けたメッセージとして、「今はPCや携帯でさまざまな事が見られますけれど、現実の中に入って学んでいくこと、自然の中で過ごしたり、また実際に人と会って学ぶことが大切だと思います」と、五感を刺激する実体験の重要性を強調されていました。
玉三郎さんがまとう圧倒的な華やかさは、日々の地道な努力による健やかな身体と、人生全てを舞台に昇華させる「継続の美学」によって支えられていることが垣間見えた贈賞式となりました。
12月26日発売の『和樂』本誌2・3月号では、坂東玉三郎さん大特集を掲載予定。
今回語られた健康にまつわる秘訣のほか、その揺るぎない「芸」と「美」の秘密をじっくりひもときますので、どうぞお楽しみに!
撮影/越野夕也

