日本美術を見る楽しみから、買う楽しみへと橋渡しする「加島美術」
日本美術への興味が深まると、鑑賞するだけでなく、身近に置いて楽しみたいという気持ちもめばえてきます。そんな美術好きが抱く夢をかなえてくれる存在が、ギャラリーのような空間をもつ「加島美術」です。
鈴木其一『月下雪檜図』絹本着色 99.0×35.0㎝/183.0×47.0㎝ 1,800,000円
曾我蕭白・画、太室宗宸・賛『水墨山水図』紙本水墨 130.0×52.0㎝/210.0×67.0㎝ 4,300,000円
※ここに掲載した作品画像はすべて第20回「美祭―BISAI―」に出品されたものです。取り扱いが終了している場合もあります。
日本美術に対する興味や愛情をかきたてる新感覚の日本美術ギャラリー
古美術を取り扱う店は、おいそれと初心者を寄せ付けないようなイメージがありますが、東京・京橋にある「加島美術」はそんな先入観を一蹴。クラシカルで瀟洒(しょうしゃ)な建物は従来の古美術店のイメージとは大きく異なり、ガラス越しに店内の様子が見えて、非常に入りやすい雰囲気です。
1階はコンクリートの壁面やパーテーションで仕切られたモダンなギャラリーのようで、2階には京都の名だたる数寄屋大工と左官が手がけた茶室があり、古材を効果的に配し、経年変化を楽しむために壁の内部には鉄が塗りこめられているなど、細部にいたるまでこだわりが詰まっています。
この空間をつくり上げたのが、店主の加島林衛(かしましげよし)さん。新しい日本美術との付き合い方を幅広い層に提案している、初心者にとってありがたく心強い存在です。
「もともと父の代から古美術商を始めたという背景がありまして、私は京都の古美術商で修業してから跡を継ぎました。それから、美術品を買っていただく空間を考えたときに、これまでと同じ形態では、お客様のニーズに合わなくなるのではないかと思ったのです。作品を紹介することとそのよさを理解していただくこと。床の間だけでなく、洋室に飾ることを想定した提案。それらを考えてでき上がったのが、このギャラリー空間でした」
伊藤若冲『墨梅図』紙本水墨 31.0×27.0㎝/114.0×38.0㎝ 3,500,000円
円山應挙『昼皃鯉之図』絹本着色 村田香谷箱書 8,000,000円
貴重な美術作品の価格を明示!
古画と呼ばれる仏画、江戸時代の絵画や書といった古美術から、国内外の現代美術、立体作品までと幅広く取り扱い、それぞれの作品に提示されている作者名や題名の下にはなんと、価格を明示。これは日本美術において、革新的なことです。
「古美術商ならではの、密室で相対し内々に紹介する接客には確かに利点があります。ですが、現代では、より多くのお客様に訪れてもらい、日本美術を知ってもらうために、情報を適度に開示したほうがいいと思うのです。たとえば、伊藤若冲の作品の価格がわかると、それをもとにして他の作品を見ていくうちに適正価格がわかってくるはずです。高額になるものもありますが、日本美術を購入する際の勉強の一助になればと」
有名な巨匠の作品は7桁を超えますが、これから注目すべき絵師なら気軽に手の出せる値段。それがわかるのも面白さのひとつです。しかも、現金決済のみではなく、クレジットカードも利用でき、これまでよりも一歩も二歩も、日本美術が身近に感じられてきます。
現代的空間の中に日本美術を取り入れて、暮らしや心を豊かに
店内を眺めると、様々な壁に軸装や額装された日本美術がよくなじんでいて、ところどころに配された立体作品や現代作家の作品も取り合わせにも目を奪われてしまいます。
「日本文化には床の間という建築様式がありますが、そのルーツである中国にはありません。欧米も同様で、現在の日本でも床の間は珍しくなっています。そこで、壁面に飾っていただくために、このような展示にしたのです。もしも掛軸の下の部分に空きができたなら、李朝の棚を置いたりすると、インテリアとともに楽しむことにもつながるでしょう。現代の住空間の中に日本美術を取り入れ、暮らしや心に豊かさを感じていただきたい……。その思いをこの空間で表現しました」
日本美術を見て楽しむから買って楽しむたもに心がけておくべきこと
「それぞれの段階に応じて、好みや希望を汲み取り、誠実に対応してくれる店を選ぶことが第一です。稀代の蒐集家たちはみな、信頼のおける美術商とともにコレクションを広げていったものです。店との出合い、人との出会いを大切にして、何度も足を運んで相談をする。買うという行為に、このステップは欠かせません」
日本美術に親しむために、美術商が果たす役割とは
「美術商を人間の動脈と静脈にたとえると、日本美術の魅力を伝えて販売するのが動脈。ほうぼうに埋もれているものやコンディションのよくないものを見つけ出し、よみがえらせることが静脈。この両方をバランスよく保つことが大切なことだと考えています」
そのために新たに開いた加島美術では、ほかにも様々な趣向が。
「併設している茶室でお茶とともに楽しんでもらったり、解説の場を設けたりして、表面的な美しさだけではなく、もっと奥に踏み込んで、理解を深めていきたいと思っています」
古の名絵師から現代美術の作家にいたるまでの、加島さんをはじめとした目利きのスタッフによる鑑賞ポイントにエピソードを交えたお話は、美術館では味わえないこと。すぐ間近で作品を見ることができる上、購入に関する的確なアドバイスもあって、安心できることはこの上ありません。
左/徳川慶喜『心聲』絹本 松平忠和箱書 100.0×31.0㎝/180.0×43.0㎝ 1,200,000円 中/林十江『虎独風直図』紙本淡彩 松下英磨箱書 130.0×66.0㎝/222.0×85.0㎝ 8,000,000円 右/司馬江漢『紫陽花文鳥図』絹本着色 100.0×30.0㎝/192.0×43.0㎝ 18,000,000円
加島美術の春秋の恒例となっている展示即売会「美祭―BISAI―」は必見!
加島美術では、第20回を迎える「美祭―BISAI―」が2016年10月22日(土)~11月3日(木・祝)の期間、開催されました。
ここに掲載した作品をはじめとして、店内には古画から現代のものまで、美術館の展覧会にも貸し出されるようなものを含め、400点を超える作品が一堂に。それが、美術館のようなガラス越しではなく直に見ることができて、日本美術を買う楽しみまで堪能できるのですから、「美祭―BISAI―」の注目度は高まるばかり。
また、確かな情報はもとより、実際に作品を飾った空間の提案や著名人との対談、物故作家の特集、職人紹介や数寄者のコラムなど、出品作の写真のみならず読み物としても楽しめるという目録の評判が高く、事前に用意しておいて、この機会に日本美術の楽しみ方をさらに進めてみたいものです。この目録は加島美術へ電話やファックス、ホームページで申し込み可能。無料ですが、在庫に限りがあるので申し込みはお早めに。
日本美術が人生を豊かにしてくれるものだとするならば、加島美術はそのサポート役となり、現代に即した提案をしながら、日本美術への理解を深め、購入する。そんな夢の実現も、ここでなら実現できそうです。
熊谷守一『裸婦』板0号 油彩 額装 東美鑑定証書 22.0×15.0㎝/48.0×41.0㎝ 12,000,000円
小杉放菴『ブルターニュ風景』キャンバス12号 油彩 額装 東美鑑定証書 46.0×61.0㎝/71.0×86.0㎝ 5,000,000円
加島美術
東京都中央区京橋3-3-2
営業時間/10時~18時 定休日/日曜・祝日
メール✉ info@kashima-arts.co.jp
ホームページ
「美祭―BISAI―」のご案内
会期/2016年10月22日(土)~11月3日(木・祝) 10時~18時 ※会期は終了しました
【特別企画1】10周年・目録20号を記念した、10万円、20万円、100万円、200万円の特別価格作品を提供。出品作品(一部) 伊東深水、森祖仙、竹内栖鳳、正岡子規など
【特別企画2】チャリティー入札会を開催。円山應挙『旭鶴図』、勝海舟『一言』、鏑木清方『杜若』などが出品予定。
http://www.pal-shop.jp/user_data/waraku_bisai.php
【特別企画3】来場者全員にオリジナルクリアファイルを、作品を購入した方にはオリジナル手ぬぐいを進呈。
【特別企画4】10月29日(土)18時から会場にて、「日本美術をいかに楽しむか―見る楽しみ・買う楽しみ―」をテーマにしたトークイベントを開催!(加島美術社長・加島林衛×『和樂』編集長・高木史郎) ※抽選で30名を無料招待します。加島美術へ電話かFAX、メール、もしくはホームページより、10月22日(土)までにお申込みください。
イメージ写真/篠原宏明