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2016.12.12

絵師・岩佐又兵衛とは何者?最高傑作と源氏絵と共に解説

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2017年は、岩佐又兵衛(いわさまたべえ)が江戸に出てからちょうど380年にあたる年。そんな記念すべき年ということで、又兵衛とは何者なのかを紐解いてみます。

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そもそも岩佐又兵衛とは?その人生

又兵衛は桃山時代から江戸時代初期に活躍をした絵師ですが、そのお父さんはなんと戦国武将!!あの織田信長の家臣でもあった荒木村重の子として天正6年に摂津国(現在の兵庫)に生まれます。戦国武将の子どもなのになぜ、戦とはほど遠い絵師になったのでしょうか?その理由も父、村重にありました。織田信長に重用されていたはずの村重はなぜか信長に反逆を企てます。その理由は諸説があり今でも定かではありませんが、その謀反のせいで又兵衛は逃げることを余儀なくされ、文学や絵によって生計をたてることになってしまったようなのです。信長と何があったかはわかりませんが、子どもからしたら困ったちゃんな父親ですね。

岩佐又兵衛絵巻の最高傑作「山中常盤物語絵巻」がすごい

江戸時代初期に活躍し、数々の名作を残した謎の絵師、岩佐又兵衛。その最高傑作とされるのが「山中常盤物語絵巻(やまなかときわものがたりえまき)」。展示総延長は70mを超えるという、大迫力の展示です。
DMA-P8_MOA伝 岩佐又兵衛勝以『山中常盤物語絵巻』(部分) 江戸時代・17世紀 紙本著色 12巻 34.1×全長15031.0㎝ 重要文化財 MOA美術館蔵
生気あふれる力強い作風で、自然や風俗を巧みに、凄惨な場面は胸が痛くなるほど鮮烈に描かれた、波乱万丈の義経伝説。精緻(せいち)なディテールもじっくりと鑑賞できます。併せて重要文化財や重要美術品の又兵衛作品を展示。水墨画、物語絵、歌仙絵と、奇想の絵師の変幻自在の筆力に驚嘆です。

岩佐又兵衛の源氏絵もすごい

『源氏絵』なんとなく聞いたことあるけど…

源氏絵とは『源氏物語』を題材とした絵画のことです。源氏物語絵巻の印象から絵巻のイメージが強いのですが、源氏絵が描かれたのは絵巻だけではなく冊子から掛け軸、大きいものだと屏風まであるのだとか。驚きです。屏風の源氏絵なんて迫力満点間違いなしですね!

源氏物語って結局どんな話なの?

源氏物語とは平成中期に成立した大長編物語。作者は紫式部で全54帖にもおよぶその文字数は約100万文字と言われています。そんな物語は主人公の光源氏が誕生したところから死後まで。約70年余りの出来事が描かれています。幼いころから美貌と才能に恵まれた光源氏はたくさんの女性と恋に落ちます。切ない話や笑える話、ちょっと引いてしまう話まで…。そんな源氏物語の色々な場面を又兵衛は作品の中で繊細に描いています。

又兵衛の源氏絵のすごいところ!

『源氏物語 野々宮図』は年上の六条御息所との別れの場面。しかし又兵衛が描いたのは別れ際ではなく、都の中心から駆けつけやっとの思いで鳥居の前で会うことができたという場面です。他にも春の宴で出会った朧月夜との出会いの場面である『花宴図』。こちらも近づいてくる朧月夜を源氏が目にする場面ではなく、そこから少しだけ時間を進めた情景。又兵衛は標準的な場面を注意深く避けて独特の緊張感を生み出すこと、主人公にクローズアップして新鮮な臨場感を与えることを得意とし、このような源氏絵を描くのは又兵衛だけだと言われています。

源氏物語を読んでみませんか?

出光美術館での展覧会は終了してしまいましたが、これを機に源氏物語を読んでみるのはいかがでしょうか?源氏物語の原文はとても難しく読むのには気が引けてしまうという方は、小説家林真理子さんが現代的アレンジを加えることによって誕生した”小説版源氏物語”がおすすめです!

本来登場人物のひとりにすぎず、又兵衛の野々宮図にも登場する六条御息所の”ひとり語り”という革新的手法を用いることによって、世界的古典文学の名作が、現代人にとってリアルに楽しめる、光源氏を巡る性愛の一大活劇となっています。

六条御息所 源氏がたり

六条御息所 源氏がたり 上
六条御息所 源氏がたり 下

著/林真理子

定価本体/670円+税
発売日/2016/9/6
判型/頁文庫判/400頁