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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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2017.05.24

デザイナーの先駆者、俵屋宗達。天才的な構成力と表現力を解剖!

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自由闊達な表現力と巧みに計算された構成力が生み出す美しき緊張感

1495511762「舞楽図屏風」宗達 二曲一双 重要文化財 醍醐寺蔵

「舞楽図屏風(ぶがくずびょうぶ)」です。宗達晩年の傑作といわれます。下の写真は日光山輪王寺(にっこうさんりんのうじ)に伝わる当時の舞楽の様子を描いた、これも「舞楽図」です。この絵のように舞楽のレパートリーを描いた屏風絵は今も多数残されており、舞楽は当時のポピュラーなモチーフでした。そこでこの宗達の「舞楽図屏風」です。何かお気づきになりませんか?WA4-90-006「舞楽図屏風」作者不詳 日光山輪王寺蔵

屏風に描かれている5組の登場人物。右隻(うせき)の向かって右、白い装束に杖を持つのが、「採桑老(さいそうろう)」、その左の雄雌2頭の龍が舞い踊る様子を表している「納蘇利(なそり)」、左隻の右下が「羅陵王(らりょうおう)」、その上が「環城楽(げんじょうらく)」、左端が大空に舞い遊ぶ鶴の姿を表す4人の舞い「崑崙八仙(ころばせ)」……。そうです、宗達の「舞楽図屏風」に描かれているこの5組の登場人物は、当時描かれていた舞楽図から、人物の姿形をそっくりそのまま抜き出し、まったく同じ形に描いたものなのです。

スクリーンショット 2017-08-10 12.48.05写真右が宗達の描いた「納蘇利」、左がそれまでにあった舞楽図の中の「納蘇利」。まったく同じ姿形をしていることがよくわかる。

天才的な構図力

しかしどうでしょう、宗達の「舞楽図屏風」の金箔地には一種の緊張感といいますか、それまでの舞楽図にはない、生き生きとした舞い手たちの躍動感が満ち満ちています。宗達は、この「舞楽図屏風」で、新しい舞楽の姿形を表すのではなく、今まであるモチーフを構成しなおすことで、独自の世界観をつくりあげようとしたのではないでしょうか。

よく見ると、もとの図では横に並んで描かれている「納蘇利」が、ここでは縦に長く配置され細部の図様も微妙に変えられています。こうすることで宗達は、二曲一双の屏風内にひとつの相似形を生み出し、さらにそれぞれの人物の視線や動きが呼応するよう位置関係を決め、その結果、全体であたかもひとつの曲が演じられているかのようなつながりを生み出しているのです。そして左右の両端にわざと隠すように描かれている松の幹と大太鼓(だだいこ)の計算しつくされた大胆な配置。この二物によって金箔地の中に、さらに心地よい緊張感を生み出すことに成功しているのです。

スクリーンショット 2017-08-10 12.51.52写真右が宗達の「環城楽」で左がもともとの舞楽図。こちらは多少フォルムに違いがあるが、これは宗達が、絵の中での配置を考え、手を入れた部分と思われる。

宗達が形態の魔術師と呼ばれる所以がここにあります。一見、もとの図様から抜き出してきただけの人物の姿形に込められた、宗達の計算されつくした演出。宗達の奔放で自由闊達なデザイン力が、存分に発揮された魅力的な1枚がこの「舞楽図屏風」なのです。