19世紀末のアール・ヌーヴォーを代表する芸術家、アルフォンス・ミュシャ。優美な女性と華やかで装飾的なモチーフは誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。日本美術好きとしては、当時ヨーロッパで流行していた「ジャポニスム(日本趣味)」の影響も見逃せないポイントです…が、ここでは書籍「ミュシャ: 華麗なるアール・ヌーヴォーの世界」に掲載されているミュシャのおしゃれアイテムをご紹介します。
ミュシャと言えばポスター作品が有名です。彼の名を世に知らしめるきっかけとなった劇場ポスターは、大女優サラ・ベルナールの品格と華やかさを見事に表現し、パリの市民は大熱狂。最初に張り出されたポスターはすぐにはぎ取られてしまったため、追加で刷り直されたという逸話も残っています。現在は美術館で額やケースに入れられ鑑賞されていますが、当時はより身近にミュシャの作品に接することができたのです。以降、ミュシャは次々と傑作を発表し、それまで消耗品に過ぎなかったポスターを芸術作品にまで高めました。
ミュシャが作っていた意外なアイテム
売れっ子となったミュシャの作品は、ポスターだけにとどまりません。幅広い活動の中では、このようなものも残っています。
1.おしゃれな女性の必需品
これ、何か分かりますか?
ヒントはこのポスターです。
ボトルから液体をハンカチにかけていますね。実はこれ「スプレー式香水」なんです!ボトルから直接ハンカチにスプレーして使うので手を濡らしたり汚したりしないのが、当時としては画期的な新商品だったそう。今も香水瓶のデザインは凝ったものが多いですが、こんなおしゃれなパッケージのものがあったら即買い決定です。
2.思わずパケ買いしたくなる食品
次はこちら。花に囲まれた女性が描かれた、持ち手つきの容器。一体何を入れるための容器でしょうか。よく見ると女性は片手にお菓子皿を抱え、もう片方の手を別のお皿に伸ばしています。そう、これはビスケットの容器です。こんなおしゃれなビスケット入れがあったら、これまた即買い決定ですね。
グラフィックデザイナーとしてのミュシャ
ミュシャはただ商品と人物画を優雅に描いただけではありません。
こちらのクッキーの缶ケースにご注目ください。
よく見ると、どのパッケージでも着飾った紳士熟女がグラスを片手にクッキーをかじっています。
ずばりこれはシャンパンやマデラ酒などアルコール飲料風味のクッキー。これらのクッキーが子どものおやつだけではなく、上流階級の大人のテイストにマッチすることをアピールしたいというクライアントの希望に、ミュシャはおしゃれなパケージデザインで応えています。
一方、ノンアルコールのクッキーには若い女性2人が描かれています。
巧みなイメージ戦略に、ミュシャのグラフィックデザイナーとしての本領が発揮されています。
広告ポスターという芸術
改めて本書のポスター作品を見返すと、ワイングラスやビールジョッキを持っていたり、自転車のハンドルを握っていたり、商品の魅力がしっかりとアピールされていることに気がつきます。華やかな女性ばかりに目が向きがちですが、広告美術としての巧みさという視点から鑑賞するとまた違う面白さがあります。
作品の奥深さと活動の幅広さに、観る度に新しい発見があるミュシャの世界。「ミュシャ 華麗なるアール・ヌーヴォーの世界」で何度でもミュシャの世界に浸ってください!
書籍「ミュシャ: 華麗なるアール・ヌーヴォーの世界」
アール・ヌーヴォー時代の代表作(ポスター、装飾パネル、パッケージ、彫刻、宝飾など)を中心に、グラフィックなビジュアルでミュシャの魅力を余すところなく紹介した一冊です
定価:本体2400円+税
仕様:オールカラー 128ページ B5判
監修:ミュシャ財団
刊:小学館
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