2018年3月31日(土)まで、根津美術館で「企画展 香合百花繚乱」が開催中です。
「香合」とは、茶の湯の道具の1つで、お香を入れる蓋付きの容器のこと。お香には、炭の匂いを和らげたり、空間や心身を浄化する役割があります。それを入れる容器である香合は、お茶の世界ではなくてはならない存在なのです。
さらに、手のひらにおさまるサイズ感や、植物や動物、楽器などをかたどったバラエティー豊かな形など、その愛らしい見た目から、茶道具のなかでも特に人気が高いのです。
本展覧会では、そんな香合を166点展示。日本で香合が使用され始めてから、どのような変化をとげてきたのか。その流れをみていくことができます。
初期の香合は「布袋」モチーフが人気!
仏教とともに、日本にお香が渡ってきたのは6世紀頃。貴重なお香を入れる容器もまた、貴重な唐物、つまりはインポートの漆器でした。この頃人気を得ていたのが、中国の伝説的な仏僧・布袋がモチーフとなった香合。立っている姿があしらわれた「立布袋」と、座っている姿の「居布袋」がありますが、特に「立布袋」が人気でした。本展では、荷物を置き、伸びをする姿がとてもユニークな「立布袋」を鑑賞することができます。
「堆朱布袋香合」木胎漆塗 中国・明時代 15〜16世紀 根津美術館蔵
多様な変化をとげる香合
茶の湯の流行に合わせて、香合も様々な種類が生まれます。黄瀬戸や志野など、国内で作られたやきもの。白粉箱やお歯黒箱など、化粧道具であった日本の漆器を、香合として使用するようになったもの。さらに、中国から螺鈿、染付、青磁など新しい技法のものがもたらされ、国産にも、御室焼の色絵、楽焼などが登場します。素材も形も、種類豊富な茶道具に変化をしていきました。
可愛い香合ギャラリー
ここからは、ぜひ注目していただきたい、可愛い香合をご紹介していきます!
可愛い口にご注目!
漳州窯「交趾大亀香合」中国・明時代 17世紀 根津美術館蔵
本展覧会のポスターやチラシで、センターに使用されている亀モチーフの香合。上を見上げた顔にまん丸の目、ばってんの口がなんとも可愛らしく、癒される作品です。
人だったの!?
伝表千家七代如心斎天然宗左作「赤楽曳舟香合」施釉陶器 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
この赤楽曳舟香合は、舟をひっぱっている人の形なのだとか…。そういわれると、笠をかぶった人に見えてきます。丸まった背中から、一生懸命舟を引く姿が想像できませんか?
天を仰ぐキュートな寿老人
正木「黄瀬戸寿老香合」施釉陶器 日本・江戸時代19世紀 根津美術館蔵
江戸時代に国内で制作された黄瀬戸。手を合わせて天を仰ぐ寿老人がユニークです。
どっちが可愛い?
左/漳州窯「交趾大獅子香合」施釉陶器 中国・明時代 17世紀 根津美術館蔵 右/偕楽園「交趾写獅子香合」施釉陶器 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
左の獅子は、17世紀中国で作られた施釉陶器です。この作品を写したやきものが、19世紀日本で制作されました。それが、右の淡いブルーの獅子です。江戸時代中期から後期にかけては、このように写しのやきものが多くつくられました。
ミニチュアサイズの香合!
青磁や染付、螺鈿などの小さな香合。人差し指と親指でつまめてしまうほどのミニチュアサイズです。籠や箱などに詰めて持ち運ぶ、野点用の茶道具セットに好まれるそう。
この他にも、たくさんの可愛らしい香合が展示されています。茶席を華やかに彩ってきた愛らしい香合の姿を、根津美術館でぜひご堪能ください!
企画展 香合百花繚乱
会期/2018年2月22日〜3月31日
会場/根津美術館
公式サイト
なぜ床の間に「香合」が飾られているの?茶の湯編集担当のイツコが、香合のサイドストーリーをご紹介しています。展覧会に行く前に、こちらもぜひチェックを!