京都観光最大の目玉・清水寺。その非公開の塔頭寺院「成就院」と「経堂」で今、世界的に注目を集める現代美術のアーティスト桑田卓郎の作品展「日々(にちにち)」が開催されています。
伝統×現代アート@清水寺
毎日たくさんの参拝者でにぎわう清水寺界隈でも、春秋の一般公開を除いては非公開の塔頭「成就院」は、静寂とともに日本美をたたえています。
そこで開催中の「日々」展は、2012年からスタートした「FEEL KIYOMIZUDERA」プロジェクトの一環。あらゆる垣根を越えた前衛的な表現をもとにして、百年先、千年先の仏教寺院のあり方を模索し、これまで写真展や音楽イベントが行われてきました。
今回クローズアップする作家・桑田卓郎は、伝統的な陶芸の技術に、大胆な造形やポップな色使いで、現代的な感覚を加えた作品を創造。その作品のかずかずは、「一度見ると忘れられない」圧倒的な個性と存在感を放っています。
江戸時代初期に建てられた「成就院」大広間には、金やプラチナ、色とりどりの釉薬と創造性豊かな造形で表現された作品が並んでいます。
その奥には、国の名勝に指定される借景式庭園「月の庭」が広がり、伝統と前衛が混在する実験的なアート空間でありながら、寺院ならではの、じっくり作品に向き合える落ち着いた雰囲気に包まれています。
梅花皮(かいらぎ)や石爆(いしはぜ)といった陶芸の技術に基づきながら、ビビッドやメタリックな配色などで独特の姿を与えられた作品のもつ「視覚言語」。その評価は世界的に高まっています。
「制作するということは、今を生きているこの現実の中で、出会いや別れ、時に何もわからず衝動に駆られ無心になること、様々なことを感じた過程が形に現れて行く行為」(桑田)。
この言葉は、手を合わせる行為だけではなく、表現でも、仕事でも、遊びでも、何かに一心に尽くし、次第に無心へと研ぎ澄まされていく過程が、仏教が理想とする「祈り」であるという考えと合致。そして変化の激しい現代において、何を表現しどう生きるのかに向かい合うことにも通じます。
「グローバルに多くの情報が飛び交う世の中だからこそ、実際に何かに触れ、何かを感じるものでありたい」という作家の思いと、芸術創造の場であった清水寺とが結び付いた、新しい瞬間や可能性と出合える「日々」。
伝統的な日本美の中で現代アート作品が鑑賞できるこの機会に、「現在進行形の寺院・清水寺」の新しい魅力と、まだだれも見たことのない「祈りのカタチ」と出合ってみませんか?
桑田卓郎
1981年、広島県生まれ。2001年、京都嵯峨芸術大学短期大学部を卒業後、2002年、陶芸家・財満進に師事。2007年、多治見市陶磁器意匠研究所を修了し、現在は岐阜県土岐市に工房を構える。日本国内のほか、ニューヨーク、ブリュッセル、ロンドンなど世界各地で展覧会を開催、また主なグループ展に「バブルラップ」(熊本市現代美術館、2018)、「村上隆のスーパーフラット現代陶芸考」(十和田市現代美術館、青森、2017)、「Japanese Kōgei | Future Forward」(the Museum of Arts and Design、ニューヨーク、2015)、「工芸未来派」(金沢21世紀術館、2012)。作品はルベル・コレクション、パームスプリングス美術館、金沢21世紀美術館、ミシガン大学美術館などに収蔵。2018年、OEWE Craft Prize 2018の特別賞を受賞。
桑田卓郎展「日々」
開催日時:2019年8月3日(土)~8月25日(日)
開催時間:10時~17時(会期中無休)
会場:音羽山清水寺(経堂と成就院の2会場) 京都市東山区清水1-294
観覧料:経堂無料/成就院は別途特別拝観料(大人600円/小・中学生300円)
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