Craft
2019.11.07

使いやすくておしゃれな長財布なら、safuji(サフジ)の革財布がおすすめな理由

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素材やデザインはもちろん、もう少し小さければ、もうひとつスペースがあれば、と機能にもこだわってしまうのが財布ではないでしょうか?できるだけシンプルなデザインで、小さく薄く軽く、お札も小銭もカードもまとめたい、長財布派の私にとってすべてを兼ね備えた財布を選ぶのは至難の業。そんなときに多くの作り手と付き合いのある友人の長財布を見せてもらい、シンプルでコンパクト、使いやすさに驚きました。それが革小物ブランド「safuji(サフジ)」との出会いです。東京でものづくりをする人たちを追いかけている「東京の手仕事」では、今回は革小物の作り手を取り上げます。財布の誕生秘話から、ブランドの原点、ものづくりへの想いまでを、「safuji」を手掛ける沢藤勉さん・加奈子さん夫妻におうかがいしました。

全国から人が訪れる、東京郊外にある革小物店

駅前からのんびりとした雰囲気が漂う町、東京・東小金井。JR東小金井駅に隣接した商業施設アトリエテンポに革小物を手掛ける「safuji」があります。デザインから製作、店での接客などを、沢藤勉さんと妻・加奈子さん、スタッフ数名で行っています。

沢藤勉さんと加奈子さんが立ち上げたブランド「safuji」。ブランド名は、沢藤さんのニックネーム「サフジ」から。

小さな工房を併設する店は、長財布や小銭入れ、キーケース、またポシェットやトートバックなどsafujiアイテムが並びます。デザインや仕様はもちろんですが、まだ硬さが感じられる真新しいものから使い込んだ雰囲気のものまで、革が変化していくさまにも触れることができます。ほぼすべてのアイテムを見ることができるため、全国各地から革小物好きやsafujiファンが訪れます。

最新のアイテムは、ミニ折り財布/18,700円(税込)。お札を折りたたまずに入れることができるミニ折り財布。カードスペースや小銭入れスペースもアリ。スマホ決済アプリの普及で小銭入れが小さくてもよいと考える人が増えてきたため、小さく軽い折り財布は人気があるそう。

どの商品も注文を受けてから製作。そのためアイテムにもよりますが、注文から2、3カ月程度はかかるそうです。「注文が増えてきたこともありお待たせしてしまっています。長くても2、3カ月程度ではお渡しできるようにはしています」と妻の加奈子さん。

コンパクトでありつつ、使いやすさを追求した長財布

普通ならば、欲しいときにすぐに手に入れたい。でも多くのひとが待っても手に入れたいと思うのがsafujiの長財布。その魅力のひとつに、どの仕様の財布(長財布や折り畳み財布)も小さくて、薄くて、軽いことがあげられます。「safujiを検索すると、長財布、小さい、って出てくるんですよ」と、笑う加奈子さん。

「これは、きっと世界で一番小さな財布(笑)」と沢藤さんが見せてくれたキー付きミニ財布/10,450円(税込)。

「ここ数年ブームの三つ折り財布ですが、うちでは10年ほど前から作っています。お札はふたつ折りで入れて、小銭やカードも3枚は入ります」。

なかでも「ミニ長財布」のコンパクトさには、誰もが驚くと言います。一万円札がぴったりと入るサイズは、「縫い代が必要なミシンでは、縫うことができないんです」と沢藤さん。生産効率がよくないためメーカーでは、このサイズをつくることはほぼないそう。「でも長財布の1㎝の差を感じているひとって意外と多い。だったらサイズを小さくするために、ミシンではなくて手縫いにしたらいい。それが僕たちの考え方です」ときっぱり。手間ひまかけて労を惜しまず、アイデアや想いをカタチへと結実させてきました。

小さくて軽く、でも機能性に富んだミニ長財布/26,400円~30,800円(税込)。イタリア製の上質な革は使い込むほどに美しい風合いに。サイズ約:縦9.5×横17×厚み最大2.2㎝

またサイズはもちろん、使いやすさにも徹底的にこだわります。「お札の出し入れしやすさ、小銭が見えやすく落ちにくい工夫、必要なカードポケットなど、使いやすさを考えて細かい部分を作り込んでいます」と、沢藤さん。使いやすさにこだわるのは、あわてん坊なご自身のためでもあったとか。「僕自身が支払い時に焦ってしまうタイプなので、お札や小銭がいくら入っているかパッとみてわかり、サッと取り出しやすい財布を作りたかった」と言います。

財布を開けると小銭がひと目でわかる。「お金を出すときももたもたせずに小銭をだせるから財布も太らない」。ホックやジッパーはなくフラップ(蓋)でカバーする小銭入れ。

さらに使い込むほどに表情が変わる上質な革、男女や年代を問わず持ちやすいデザインなども愛される理由です。コンパクトな仕様や機能性、デザインの美しさにもこだわり、ファンを広げてきました。

ブランドの原点は、革への興味と強い憧れ

すべては革への興味からはじまったと、沢藤さん。使い込むほどに変わっていく姉の革バックがきっかけで、革小物に注目するようになった高校時代。「革ってすごいな、きれいだなって素材そのものに強く惹かれました。当時はものづくりにさほど興味がなかったんですが、自己流で革の財布やポシェットを作って満足していました」。大学の後輩だった加奈子さんは、お手製のポシェットやキーケースなどをプレゼントしてもらったそう。「昔も今も、いい革に触れているときの夫は本当に楽しそう。『この革で何を作ろうか』とワクワクしているのが伝わってくる」と加奈子さん。

使い込んだ愛用の道具がずらり。「使いやすいようにと、カスタマイズした道具も多いです」。

大学卒業後は革職人の道へ。「今のブランドとはまったく違う、ぶ厚くて大きいバイカーズウォレットを手掛けていました。でも革の加工法や道具扱いについて学ぶことはすごく楽しかったですね」。数年を経て、取引先の企画生産を任されるように。今につながるナチュラルな革小物のデザインや製造を手掛けるようになりました。

食肉の副産物である「革」。命あるものから生まれた素材だから、できるだけ無駄なく使うように心掛けている。最近、床革(とこがわ)でつくりはじめたコースター。カップやグラスだけでなく、花瓶や人形にを置いてもおさまりがいい。

つくりたいものに向き合い、妥協をせずにものづくりする日々

独立を考え始めたころ、今のsafujiにつながる出来事が起こります。ふたりの結婚式の引き出物にと、手掛けた革のクラッチバック。そのバッグを見たギャラリー店主が「展示会をやってみない?」と声をかけてくれたのです。バックを中心に10型ほど出品して、初の展示会を開いたところ大盛況。作り手としての自信と使い手へと届ける道筋が見えたそう。ギャラリー店主は、作り手として活動することを強く勧めてくれました。「今でもお付き合いがありますがsafujiの恩人のひとりです。独立後は請負を中心にと考えていましたが、作り手としてやっていく気持ちが固まってきました」。

「パッと見ただけでわからない工夫やこだわりが多いので必ずきちんと説明しています」。メーカー時代から営業もこなしていたこともあって説明上手な沢藤さん。

今年で独立して10年。地元の手仕事市から作り手が憧れる「クラフトフェアまつもと」まで、今秋には松屋銀座の「手仕事直売所」にも出店するなど、活動の幅を広げています。また2014年には、集合型施設アトリエテンポに工房兼店を構えました。当初は請負仕事をこなしていたものの、店を構えたころからはsafujiのものづくりだけに集中できるように。「作りたいものだけに向き合えるからこそ、妥協をせずにものづくりをしていきたい」と、話します。

独立をきっかけに、沢藤さんのサポートをはじめた加奈子さんだが、今では立派な革職人。夫婦でものづくりをすることについて沢藤さんは、「一番信頼ができるひとと仕事ができるのは安心ですよ」と、照れ笑いしつつ。

時に刺激になり、時に心安らげる、作り手仲間の存在

作り手仲間との時間も大事している沢藤さん。アトリエテンポに集う5人の作り手たちは、もともと手作り市で知り合った仲間たち。世代も似通っていて、家族ぐるみのお付き合いだそう。「ペットアイテムショップのオーナー、靴職人、料理人、イラストレーターなど、作っているものや扱っている商品などは異なりますが、とても仲がいいですよ。時には刺激になり、時にはほっとする。そんな仲間がいてくれることで支えられていることって多いです」。沢藤家のふたりの子どもたちも学校帰りに立ち寄って、店主たちに相手をしてもらうことも多いそうです。

5つのお店が入っているアトリエテンポ。作り手同士の仲の良さが自然と伝わってくる心地いい空間。

お金を扱う心遣いや美しい所作、日本ならではの視点を取り込む

沢藤夫妻と話していると、今までお会いしてきた多くの作り手と同じように“日本に暮らすなかで生まれたもの”ということを強く感じます。特に意識はしていないと言いながらも、「海外の展示会では、お札の収まりがいい、小銭がひと目でわかるなどは、あまりピンとこないようで。そこは日本ならではの視点なのかもしれませんね」と沢藤さん。

あしらいに使う小さな金具も、大きさや質感を伝えて彫金作家にオーダーしたもの。「以前はありものを使っていましたが、ちょっと目立つように思えてきて」。常に工夫を重ねてよりよい道具へ。

お札がきれいに収まり小銭を出すときもたもたしないなど、お金を扱う心遣いや所作の美しさをも、ごく自然に機能として取り込む。日本に暮らす私たちがsafujiの財布に惹かれるのは、当然なのかもしれません。そして温かみはあるけどもシンプルで、シンプルだけどちょっと遊びが効いていて、ナチュラルな風合いなのに都会的。使い手とともに、うつり、変わり、育つ、そんな革小物がsafujiには揃っています。

ずらりと並ぶ革小物たち。店ではほぼすべてのアイテムが揃っている。

店舗情報

住所: 東京都東小金井市梶野町5‐10‐58
コミュニティステーション東小金井
電話:042-316-3972
営業時間:11:00~19 :00
定休日:火・水曜
http://safuji.com/

safujiの展示会情報

会場:浦和マルシェ/伊勢丹浦和店 
日程:12月4日(水)*safujiの出店日
住所:埼玉県さいたま市浦和区高砂1-15-1
電話:048-834-1111
https://www.isetan.mistore.jp/urawa.html

会場:CLASKA Gallery & Shop “DO” たまプラーザ店
日程:12月6日(金)~15日(日)
住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-7 東急百貨店たまプラーザ店 2F
電話:045-903-2082
https://do.claska.com/shop/tamaplaza/

書いた人

和樂江戸部部長(部員数ゼロ?)。江戸な老舗と道具で現代とつなぐ「江戸な日用品」(平凡社)を出版したことがきっかけとなり、老舗や職人、東京の手仕事や道具や菓子などを追求中。相撲、寄席、和菓子、酒場がご贔屓。茶道初心者。著書の台湾版が出たため台湾に留学をしたものの、中国語で江戸愛を語るにはまだ遠い。