今や、世界的な人気を博している浮世絵。日本各地でも浮世絵の展覧会が開催され、外国人観光客で沸く姿を目にすることも、あたりまえのようになってきました。また東京オリンピックの時期に合わせて、2020年の夏には上野にある東京都美術館での大きな浮世絵展が開催予定。それにともない日本のアートの魅力を全世界に発信するプロジェクト「UKIYOE 2020」が発足するなど、そのムーブメントはとどまることを知りません。
こんなの見たことない…! 写楽の傑作を立体化
そんな浮世絵ブームを盛り上げるべく、和樂ではまさかの立体化に挑戦してみました! 名づけて「招き写楽」!! モチーフは、謎多き浮世絵師・東洲斎写楽の傑作『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』です。
東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」
日本を代表する伝統工芸「江戸木目込人形」の名店、「柿沼人形」と和樂のコラボレーションで誕生しました。
江戸木目込人形とは?
江戸木目込人形について簡単に説明しますと、江戸時代に、京都で発祥した人形の制作技法が、江戸に伝わり発展したもの。ひな人形や五月人形がその代表格と言えますが、人形の型に深さ1~2㎜の筋を彫り、その溝にのりを入れ、布をヘラで押し込みながら決め込むことで、美しい人形がつくられていきます。だから名前も「木目込(きめこみ)」。型の制作から木目込加工まで、すべての工程が職人の手で行われる、実は大変繊細な技術を要する人形なのです。
柿沼人形ってどんなところ?
今回人形を制作した「柿沼人形」は、日本有数の木目込人形の名店。1950年の創業以来、優れた技術と様式美を守りつつも、革新的な作品を生み出すことにも積極的です。なかでも「招き猫」は、2015年に発表された柿沼人形のベストセラー。日本伝統のラッキーモチーフを木目込で表現することで、国内はもちろん海外からの評価も高く、パリの「メゾン・エ・オブジェ」、フランクフルトの「アンビエンテ」といった見本市で、大きな反響を得ています。
柿沼人形×和樂で制作したオリジナルの招き猫は全部で13種類もあります! 詳しくはこちら
現在でも、銀座や日本橋の有名百貨店で外国人観光客のお土産として喜ばれるなど、世界中から注目されていますが、それがとうとう今回、写楽の傑作として登場したのです!
「招き写楽」を360°見せます!
写楽の作風に感じられる勢いや艶っぽさはそのままに、そこに招き猫のチャーミングな表情が加わって、唯一無二の存在感を放ちます。「人形」という特性を生かした、衣装の立体感も見どころ。かつて写楽の傑作を、こんなに迫力満点で表現したものがあったでしょうか…。
FRONT:隈取りまで忠実に再現!
実際の大首絵を参考にした、こだわりの表情。通常の招き猫より目を細くし、鋭い眼光に。隈取りも忠実に再現しました。
SIDE:久留米絣のシブさに注目!
着物の縞柄部分には、本格的な久留米絣を使用。右手を上げる招き猫は、金運を上げるといわれています。
BACK:男の哀愁を感じませんか?
浮世絵をモチーフにしているため、後ろ姿は完全に想像。哀愁漂う男の背中を表現しました。家紋は和紙でできています。
この「招き写楽」を見ていると、木目込人形のみならず、日本の伝統工芸というジャンルに、大いなる未来と可能性を感じずにはいられません。
「招き写楽」ができるまで
1.粘土で原型をつくる
まずは粘土で原型を制作。最初は頭部分も忠実に再現していましたが、「もっと招き猫らしさを残したほうが」と修正し、現在の猫のかたちになりました。
2.型で石こうをつくる
粘土の型を再び石こうで作製し、それを元にシリコン型を完成。型ができたらウレタン液を流し、木目込人形の素地にしていきます。
3.着物を選ぶ
実際の浮世絵でも印象的な縞の着物には、雰囲気の近い久留米絣を採用。福岡の「下川織物」によるものです。
4.布を決め込む
素地に布を決め込んでいきます。筋に合わせて布がゆがまないよう、手の加減で調整していくのが職人ならではの技。
5.最後の仕上げ
頭、腕、胴体と、3つのパーツをつくってから、最後にはめ込む作業を行います。通常より手が込んだつくりになりました。
「招き写楽」の完成!!
職人技×浮世絵で実現した、写楽の傑作大首絵の立体化。「招き写楽」をお家に迎えて、空前の浮世絵ブームの波に乗ってみませんか??