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2021.09.01

尾形光琳の流水紋がぐるっと360度!漆×琳派×彦十蒔絵で誕生した「KORIN飯椀」で食せよお米

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「日本人にとって『食』とは……」そんな思いを込めた飯椀が誕生しました。超絶技巧で知られる輪島の漆芸集団「彦十蒔絵(ひこじゅうまきえ)」の技術と、琳派を代表する絵師・尾形光琳(おがたこうりん)を彷彿させる華やかな文様が融合した日常生活で使える「KORIN飯椀」。2021年9月1日より販売開始します。日本が誇る装飾美を、あなたの食卓にもいかがでしょう。

「ごはんを食べる」を改めて考える飯椀

「お椀は漆器を知る、最も身近な存在ですが、汁椀ではなく、飯椀をつくったところがこだわりです」そう語るのは「彦十蒔絵」代表の若宮隆志さん。輪島という土地柄もあり、お米に対して強い思いを抱いています。輪島には“あえのこと”という、田の神様を自宅に招いておもてなしをする伝統の祭礼(ユネスコの無形文化遺産)があるほど、お米を大切にしてきた地域なのだとか。

彦十蒔絵代表・若宮隆志さん

「お米は日本人にとって特別な存在です。神事にも使われますし、かつてはお金の代わりでもあった。私も子どものころは、ひと粒の米も無駄にしてはならないと、繰り返し教わったものです」その情熱が込められたのが、この「KORIN飯椀」。機能的にも漆の椀は保温性、吸湿性に優れ、ごはんの熱が逃げにくく、水分も調整してくれるのだとか。おひつをイメージすると、納得がいきます。「茶碗より軽いのも手にしやすいですし、お茶漬けなどをかき込む際は、口当たりも優しい。茶碗を使っている人が多いと思いますが、この機会に、漆のお椀も試していただきたいですね」。

KORIN飯椀は2色展開。左が黒漆の文様が入った本朱のお椀、右が白漆の文様が入った黒のお椀。

椀の外側に360度描かれている印象的な文様は、これまでも若宮さんが幾度となくテーマにしてきた流水紋。尾形光琳が生み出したところから、光琳紋と呼ばれることも。「お米と水は、密接な関係にあります。いい水がなければ、おいしいお米は育ちません。そういう意味では、ごはんに対して水の柄というのは、とても自然に受け入れられるものなんですね」。

まるで植物の蔓のように、生き生きと描かれた流水紋も、漆によるものです。黒には白漆を、本朱には黒漆に松煙を蒔き、マットな仕上げに。試作を繰り返してたどり着いた、上塗りとの組み合わせはモダンで独創的です。また黒の椀の内側は、「うるみ」という、本朱とは違う墨がかった赤を使い、黒漆と調和させました。漆を通して、日本人にとっての米を、食を考えたい。そんな「彦十蒔絵」のメッセージが、この飯椀には込められているのです。

日本人を魅了する光琳の「流水紋」とは?

若宮さん曰く、流水紋が優れているのは「目に見えないものが、図案化されている点」にあるのだとか。光琳が放つ、そのアヴァンギャルドな発想に、日本人は惹かれ続けてきたのかもしれません。実際に、グラフィカルで洗練度の高い流水紋は、現代の私たちから見ても、とても大胆でモダンな印象。

その後活躍する酒井抱一といった琳派の絵師たちや、工芸品を手がける職人たちに大きな影響を与え、着物や屛風など、あらゆる生活用品のデザインとして採用されてきたのも、うなずけます。

唐織 淡茶地流水桐菊桜牡丹丸模様(子方)江戸時代 東京国立博物館 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp

京都の高級呉服店の次男として生まれた尾形光琳は、経済的に恵まれ、若いときから華やかな生活をしていました。幼いころより能楽や茶道などに親しみ、派手なことが好きで、社交的な性格だったと言われる光琳。時代の先端をゆく暮らしを送っていたからこそ、粋とは何かを熟知し、絵師になってからも、その美的センスを発揮。見事な造形美を生み出しました。作品は絵だけに限らず、硯箱やかるた、ときには弟の尾形乾山がつくる陶芸に絵付けをするなど、活躍は多岐に渡ります。

琳派は、絵を極めるだけでなく、意匠への貢献度も高いのが特徴。数百年も前から、暮らしの中の美を彩り、光琳もまた、数々の図案を生み出してきました。しかし彼が、人生をかけて探求したのは、この流水紋といえるかもしれません。それを証明するかのように、彼の最晩年の傑作で、国宝に指定されている『紅白梅図屛風』には、その到達点ともいえる、力強く、緊張感を帯びた流水紋が描かれています。流水は、古くから時間の流れのたとえとしても使われてきましたが、光琳の絵師としての生涯も、この流水紋のように流麗だったのです。

KORIN飯椀を手がけた「彦十蒔絵」とは?

え、これが漆芸なの!? 初めて「彦十蒔絵」の作品を見た人は、誰もがそう思うことでしょう。一見では漆器であることに気づけないものがたくさんあり、作風は幅広く、あまりにユニーク。見る側も「はて、漆芸とはいったい……?」と、混乱してしまうほど。でもそれが、このチーム最大の魅力なのです。

左/曜変天目椀(2020)。右/苫舟 日本橋(2019)。

上記の写真は「彦十蒔絵」が手がけた作品の一部ですが、どれも通常の漆器とは趣が違います。特に『曜変天目椀』(椀、が「木へん」なのに注目!)。あの曜変天目を蒔絵で再現したという、知らなければ、 ほとんど見分けがつかない傑作です!

実際に手にすると、漆器らしい軽さを感じるのですが、この質感を漆芸で再現できることも驚きですし、してみようと思いついた若宮さんに脱帽。かわいいひよこちゃんは(チキンラーメンには卵を入れるのが定番だから)エッグスタンドですし、苫舟(とまぶね)も香合に。

『和樂』そして日清食品とのコラボで製作された、ひよこちゃんのエッグスタンド。頭を外して卵を入れる。

どれも道具なのは、アートといえどベースは輪島塗という、実用を大切にする工芸のこだわりの表れだとか。さらにこれほどバリエーション豊かな作品をつくれるのは、「彦十蒔絵」が、さまざまな職人が分業制で製作をしているからに、ほかなりません。

可能な限りの技術を駆使しながら「彦十蒔絵」が目ざすのは、漆を通して、日本人としてのメッセージを発信すること。漆器は何千年もの間、 日本人の生活と大きく関わってきた道具であり、先人の思いや知恵が込められたもの。そこに現代の感覚を織り交ぜアップデートし、技術を絶やすことなく、次世代へとつないでいきたいと考えています。だから完成されたものは、どこかユーモラスなものばかり。生真面目にならず、 軽やかに伝えることで、「彦十蒔絵」 は、漆芸の未来を明るく照らしているのです。

KORIN飯椀を食卓に!

そんな奇跡のチーム「彦十蒔絵」の技術と尾形光琳の美的センスが融合した贅沢な「KORIN飯椀」。日常生活に取り入れ、『食』について改めて考えてみませんか?

KORIN飯椀の製作過程や商品の詳細は、こちらの記事でご覧いただけます!
職人の技術がギュッと詰まった贅沢な「KORIN飯椀」。その製作過程がすごいぞ!