京都・伏見において、天然の染料を使った古代染(こだいぞめ)を行う「染司(そめのつかさ)よしおか」。5代目の吉岡幸雄(よしおかさちお)さんは、日本の伝統色の研究者としても知られ、平安時代の王朝貴族の衣装「襲」についても、深く調査されていました。
なかでも古典文学の傑作『源氏物語』に描かれた、四季折々の色彩に惹(ひ)かれ、染色で再現したプロジェクトは、吉岡さんの半生をかけて達成された偉業。
この美しい色彩を、もっと身近に知ってもらえるよう、実際の著述をもとに、日常使いできるコレクション「Color of Genji」をコラボレーションしました。
その第1弾として、シルクのストールと、麻のあづま袋を発表します。
1000年の時を超えて蘇(よみが)える『源氏物語』の色の世界を、お楽しみください。
あでやかな色彩が織りなす『源氏物語』の世界。この目で確かめてみたい……!
今回再現したのは、『源氏物語』第22帖「玉鬘(たまかずら)」の衣配(きぬくばり)のシーンに登場する襲の色。
染司よしおか『源氏物語』を色で読み解いた「染司よしおか」の偉業とは?
襲(かさね)とは何か、ご存じでしょうか。
平安時代中期ごろに生まれた、幾重にも重ねて身につけた貴族たちの衣装のこと。いわゆる「十二単(じゅうにひとえ)」もそのひとつです。
「染司よしおか」は、植物など天然の材料を使い、昔ながらの技法で染色をする、江戸時代から続く工房。その5代目であった吉岡幸雄さんは、染色家としての活動の傍ら、日本の伝統色の研究にも取り組んでいらっしゃいました。奈良東大寺、法隆寺などに伝わる天平時代の衣装を、植物染料によって完全再現した大プロジェクトは、現在でも多くの人に知られています。
そんな吉岡さんが魅了されていたのが、平安王朝の襲の色。染色家として、かつての染師たちがどのような仕事をしていたかを、古典文学を読んで研究されたそうです。特に『源氏物語』に出てくる、臨場感あふれる豊かな色の表現に触れ、当時の人々の色彩感覚に驚嘆したとか。四季が織りなす麗しい風景を衣装の色で表現する、紫式部の見事な描写に感銘を受け、染色法や素材などを探究。全54帖のなかに描かれている368もの「源氏の色」染色、発表し、それをまとめたのが2008年の著書『源氏物語の色辞典』です。
『源氏物語』は架空の物語。しかしながら紫式部が、実際に目にした風景から生み出した表現力と、吉岡さんの功績により、現代においても私たちは、平安時代の色を目の当たりにすることができるのです。そう考えると、なんとロマンにあふれた研究なのでしょうか……!
今回「染司よしおか」との取り組み「Color of Genji」では、『源氏物語』第22帖「玉鬘」に登場する「衣配(きぬくばり)」の場面に記された4人の襲衣装をモチーフに、ストールとあづま袋を製作しました。衣配りとは、位の高い男性が、新年のために女君(おんなぎみ)たちに晴れ着を配る習わしのこと。紫の上、明石(あかし)の姫君、玉鬘、花散里(はなちるさと)に贈られた襲の色を、現代的に再解釈しています。
平安の色と色が重なり合う美しい様を、普段の生活に取り入れるなんて、とてもしゃれていませんか。
そして天然染めとは思えない、鮮やかさにも注目。日本人の色彩に対する審美眼が、いにしえよりいかに優れていたのか。それは、感動すら覚えるほどなのです。
美しいグラデーションと羽衣のような透け感が魅力 シルクストール
透け感のある正絹(しょうけん)を使って、紫の上と、明石の姫君の襲をイメージしたストールをつくりました。適度なボリュームはありながら、軽やかな風合いなので、一年中活躍させることができます。
紫の上は紫と赤、明石の姫君は桃色と赤の組み合わせですが、こだわったのは染める分量と場所。白い部分を中心から少しずらすことで、首にくるりと巻いたときに、2色がほどよいバランスで重なるのです。
素材が透けるので、色同士が混ざり合って見えるのも、天然染めの新しい楽しみ方といえそうです。
紫の上
紅梅(こうばい)のいと紋(もん)浮きたる葡萄染(えびぞめ)の御小袿(こうちぎ)
今様色(いまやういろ)のいとすぐれたるとはかの御料
–紫の上
明石の姫君
桜の細長に、
艶つややかなる搔練(かいねり)とり添へては
姫君の御料(れう)なり
–明石の姫君
人気のエコバッグをビビッドな襲で表現 リネンあづま袋
鮮やかな色彩が印象的! レジ袋の有料化に伴い、今や必須となったエコバッグですが、こんなあづま袋を持って出かけたら、気分も高まるのではないでしょうか。
こちらは、玉鬘と花散里の襲の色を、それぞれ麻の布に染め、縫い合わせています。取っ手の部分は自分で結ぶので、ほどいてたためば、かさばらないのも優秀です。これほどに鮮明な色が、天然染めで叶うのも意外ですが、平安時代の配色がモダンであったことも、驚きです。
玉鬘
曇(くも)りなく赤きに、
山吹の花の細長は、
かの西の対に
–玉鬘
花散里
浅縹(あさはなだ)の海賦(かいふ)の織物、
織りざまなまめきたれど
にほひやかならぬに、
いと濃き搔練(かいねり)具(ぐ)して夏の御
–花散里
あでやかな色彩が心浮き立つ 「Color of Genji」コレクションをおさらい
平安時代に衣装として身につけていた色の組み合わせを、日常使いに!
新年、そして来る春の気持ちを汲んだ明るいカラートーンはいつもの着こなしを盛り上げてくれそうです。
Color of Genji 正絹ストール
商品番号 29202-001-01 明石の姫君(桃×赤)
商品番号 29202-001-02 紫の上(紫×赤)
各¥24,200(税込)
約70×180㎝、約25g。絹100%。洗濯はデリケート衣料用中性洗剤で手洗い。絞らずに干してください。アイロンは中温で当て布をしてください。日本製。
※色の出方やサイズ、重量に若干の個体差が生じます
紫の上
明石の姫君
Color of Genji あづま袋
商品番号 29202-002-01 玉鬘(黄×茜)
商品番号 29202-002-02 花散里(水色×桃)
各¥13,200(税込)
約縦30(バッグ本体の中身が入るところまでの高さ)×横40㎝、約75g。麻100%。マチなし。洗濯はデリケート衣料用中性洗剤で手洗い。絞らずに干してください。アイロンは中温で当て布をしてください。日本製。
※色の出方やサイズ、重量に若干の個体差が生じます
花散里
玉鬘
染司よしおか
そめのつかさよしおか/江戸時代から続く染屋で、天然の材料を使い、昔ながらの染色方法にこだわる。当主は6代目の吉岡更紗(さらさ)さん。
【京都店】京都市東山区西之町206-1
☎075・525・2580
https://www.sachio-yoshioka.com