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2024.01.10

震災からの復興を導いた「町全体でひとつの宿」のコンセプト。「西村屋本館」その2【〝おもてなし〟を体感できる至高の湯宿】

至高の温泉地と湯宿をご紹介する全13回シリーズ、第5回は「西村屋本館」その2をお送りします。

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1400年もの歴史を誇り、
今も大人気の兵庫県・城崎温泉

左/昭和中期の町並み。震災後に植栽した柳も育ち、町がほぼ全焼したとは思えないのどかな姿に。現在も豊岡市の景観計画で「城崎温泉景観形成重点地区」とされ、この景色が守られている。右/北但馬(きたたじま)地震後の再構築で、住民も旅行者も安心して過ごせる町に。7時から営業している外湯もあり、朝食前にひと風呂、も可能。

飛鳥(あすか)時代の舒明(じょめい)天皇の御代(629~641年)、コウノトリが湯に浸かって足の傷を癒やしたのが兵庫県・城崎(きのさき)温泉の始まり、というのが「鴻(こう)の湯の伝説」です。また、道智上人(どうちしょうにん)が難病に苦しむ城崎の人々のため千日間お経を唱えたところ、霊湯が湧いて病が治ったのが始まりという説も。こちらは養老4(720)年のことといいますから、いずれにしても1300年以上前のお話です。
嘉永4(1851)年の「諸国温泉功能鑑」という番付によると、西の大関・関脇・小結に、有馬・城崎・道後温泉が(横綱不在)。外湯と宿が立ち並び、江戸時代にはすでに温泉街としてにぎわっていた証です。

左/城崎温泉駅前に掲げられたコウノトリのオブジェ。右/日本海まで約4㎞という城崎では、12月から3月まではこんな雪景色になることも(御所の湯)。

〝共存共栄〟で震災からの復興!
温泉街の情緒を受け継ぐ「西村屋本館」

しかし、大正14(1925)年5月23日11時9分ごろ、マグニチュード6.8の地震が円山川(まるやまがわ)の河口付近で発生。城崎は焼け野原と化しましたが、幸いにも源泉に大きな被害は出ませんでした。そこで町民を奮い立たせ城崎を復興へと導いたのが、当時町長を務めていた「西村屋」の4代目、西村佐兵衛(さへえ)です。
町のシンボルでもあった大谿川は水害に備えて嵩(かさ)上げし、大八車の行き交いがやっとだった湯の里通りは車社会を見越して道幅を広げるなど、町を再構築しました。その際に掲げたのが「町全体でひとつの宿」というコンセプト。駅が玄関、通りは廊下、旅館が客室で外湯が大浴場、土産物屋が売店……。こうして町一丸となっての共存・共栄という理念が、たぐいまれな温泉街をつくりあげたのです。

左/旅館名を刻印した下駄も駅前に。城崎には80もの旅館が営業。右/京都御所を彷彿(ほうふつ)とさせるのは、後白河(ごしらかわ)天皇の姉君が入浴されたことを名前の由来とする「御所の湯」。唐破風(からはふ)門構えの「まんだら湯」や歌舞伎座を模した「一の湯」など、外湯のたたずまいも城崎温泉の見どころ。

【湯宿DATA】

西村屋本館(にしむらやほんかん)
住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島469
電話:0796-32-2211
宿泊料金:2名1室利用時1名48,830円~(1泊2食付)
アクセス:JR山陰本線「城崎温泉駅」より徒歩約15分(旅館組合運営の無料送迎バスあり)
公式サイト:https://www.nishimuraya.ne.jp/honkan/


撮影/篠原宏明 構成/小竹智子
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示の宿泊料金は税金・サービス料込みの金額です。別途入湯税や、入浴料などがかかる場合があります。また、連休や年末年始など、特別料金が設定されている場合もあります。
※お出かけの際には宿のホームページなどで最新情報をご確認ください。 

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和樂web編集部

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