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2025.08.04

北斎が描いた“滝の絶景”、今も岐阜・栃木で見られるって知ってた? 【浮世絵と見比べる絶景タイムトリップ・諸国瀧廻り編】

あらゆる画題を精力的に描き、国内外のアーティストに刺激を与えた天才絵師・葛飾北斎の真骨頂のひとつが風景画。目にした景色をそのまま描くのではなく、1点にフォーカスしたり、構図を変えたりして、より魅力的な風景画として仕上げました。〝北斎の絶景画〟と今も残る〝リアル絶景〟の共演、第二弾は『諸国瀧廻り』で比べてみましょう。

東海一の名瀑はマイナスイオンたっぷりのパワースポット
②【阿弥陀ヶ滝】岐阜県郡上市

天文年間(1532~1555年)、滝行中の僧の前に阿弥陀如来(あみだにょらい)が現れたことから命名された阿弥陀ヶ滝(あみだがたき)。
日本の滝100選だけでなく、岐阜県名水50選にも指定されています。

落差60mという東海地方随一の名瀑は、駐車場から歩いて数10分で到着。
滝壺近くまで遊歩道になっているので、轟音(ごうおん)とともに落ちる水の迫力は写真以上です。
山道を歩くので足元の準備はしっかりと。

岩場や水流、流れ落ちる滝の水をかっこよくデザイン化!

各地の名瀑を描いた8枚の揃物(そろいもの)『諸国瀧廻り』。この阿弥陀ヶ滝は、円形に切り取って墨流しのような表現でデザイン化させた滝口と、落下する水の勢いの対比が、絵図としての絶景をつくりあげている。滝の緊張感と、見物人のリラックスした様子の対比も見事。『諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ滝(しょこくたきめぐり きそじのおくあみだがたき)』葛飾北斎 大判錦絵 文政10(1827)年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art. Henry L. Phillips Collection, Bequest of Henry L. Phillips, 1939

本来の滝の姿は森閑とした自然のなかにあった

長良川(ながらがわ)の源流のひとつ、前谷川(まえたにがわ)上流に位置する阿弥陀ヶ滝。富士山、立山と並んで日本三霊山に数えられる白山(はくさん)を開山した僧によって、奈良時代に発見された。観光名所だが、現在も白山の修験道(滝行)の地として信仰されている。

阿弥陀ヶ滝・絶景スポット

阿弥陀ヶ滝遊歩道 岐阜県郡上市白鳥町前谷 東海北陸自動車道「白鳥IC」より約21㎞

阿弥陀ヶ滝・立ち寄り情報

「並んででも食べたい名水でいただく流しそうめん」 阿弥陀ヶ滝の名水でいただく流しそうめんの「阿弥陀ヶ滝荘」。滝へ向かう山道口で営業するのは、湧きっぱなしの冷水を使用することで麺のおいしさを際立たせるため。麺は三重県桑名産の希少な「二見の糸」を使用。

北斎がまるで生き物のように描いた上下2段に落ちる名瀑
③【霧降滝】栃木県日光市

男体山(なんたいさん)の麓、霧降川にそそぐ霧降滝(きりふりのたき)は江戸時代、日光東照宮への参詣の道すがら訪れる人が多かったそう。
現在は森の中に位置するため観瀑台(かんばくだい)からの見学が一般的ですが、落差も水量も十分。
特に紅葉の時期は、真っ赤に染まった森と滝とのコントラストが見事です。

上流には「霧降隠れ三滝」として知られる丁子滝(ちょうじたき)、玉簾(たますだれ)の滝、マックラ滝も。
こちらは登山道を歩く準備が必要です。

いやはや、北斎の絵はド迫力ですな~

諸国瀧廻り全8図の中でも、特に北斎の独自性が感じられるのが本作。岩盤を伝いながら勢いよく流れる滝の様子を未知の生命体のように描き、実際に霧降滝を見て制作したのだろうと思わせる躍動感に満ちている。72歳のころに日光まで旅をしたという記録も残る。『諸国瀧廻り 下野黒髪山きりふりの滝(しもつけくろかみやまきりふりのたき)』葛飾北斎 大判錦絵 天保3(1832)年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art. Henry L. Phillips Collection, Bequest of Henry L. Phillips, 1939

北斎が描いたとおりの不思議な景観!

華厳(けごん)の滝、裏見(うらみ)ノ滝とともに日光三名瀑に数えられる、霧降滝。上下2段のうち下段の岩を、霧状の飛沫(しぶき)を上げながら水が伝う。観光見物なら100m以上離れた観瀑台から。木々の葉が減る秋から冬のほうがよく見える。写真/とちぎ旅ネット

霧降滝・絶景スポット

霧降の滝観瀑台 栃木県日光市所野 日光宇都宮道路「日光IC」より約17㎞

霧降滝・立ち寄り情報

「霧降滝や日光連山の絶景と地産の美味!」 北に霧降滝、西に日光連山を望む霧降高原の「山のレストラン」。スペシャリテはとちぎ和牛のローストビーフで、農家直送の野菜をふんだんに使った料理がいただける。

公園内を歩いて30分、森林浴からの瀑布観賞で癒やしMAX!
④【養老の滝】岐阜県養老郡

岐阜、愛知、三重にまたがる濃尾(のうび)平野の西方に立つ養老山地の麓(ふもと)、山林道の先に出現する養老の滝(ようろうのたき)。
日本百名瀑に数えられ、いにしえより文人墨客(ぶんじんぼっかく)を魅了してきました。

一帯は公園として整備され、ロッジやテントエリア、バーベキューやパターゴルフなどの施設もあり、名瀑観賞だけでないお楽しみが満載。
公園内の養老神社には、養老孝子(ようろうこうし)伝説に語られる菊水の泉が残ります。

うひゃ~こりゃ絶景! わざわざ来たかいがあった

落差30m幅4mの名瀑をぐんと縮め、より迫力のある姿に改変。滝壺から勢いよく上がる飛沫も絶景を盛り上げる。中央部分の墨だけの表現との緩急も見事。滝を見上げる旅人からも、簡素な小屋のなかで休憩する旅人からも、楽しげな話し声が聞こえてくるようだ。『諸国瀧廻り 美濃ノ国養老の滝(しょこくたきめぐり みののくにようろうのたき)』葛飾北斎 大判錦絵 天保3(1832)年ごろ メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art. Henry L. Phillips Collection, Bequest of Henry L. Phillips, 1939

滝つぼのそばに行って仰ぎ見てみたい!

木曽川水系に属する、落差30m、幅4mの養老の滝。公園として整備された一角にあり、駐車場から徒歩約30分、養老鉄道「養老駅」から徒歩50分と、比較的行きやすい。北斎が描いたように滝壺付近から観賞できる。

養老の滝・絶景スポット

養老公園 岐阜県養老郡養老町高林1298-2 名神高速道路西宮線「養老IC」より約6㎞

養老の滝・立ち寄り情報

「鎌倉初期の美しい十一面千手観音像にもご対面!」 孝子伝説の主人公、源丞内(げんじょうない)ゆかりの「養老寺」は、不老長寿にご利益があるとされる古刹。天平時代(729~749年)には七堂伽藍(しちどうがらん)も整ったが、織田信長によって焼失し、慶長12(1607)年に再建された。本尊の十一面千手観音像(重文)は宝物殿で拝観可能。

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天才絵師・北斎が描いた七里ヶ浜は今? 【浮世絵と見比べる絶景タイムトリップ・神奈川編】

撮影/篠原宏明(阿弥陀ヶ滝) 構成/小竹智子、鈴木智恵(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。

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和樂web編集部

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