マティスを好んだ2代目主人・竹次郎が生んだ色と形|末富のこなし「山道」
「こなし(こしあんに薄力粉などを混ぜて蒸し、練り上げた生地)」をあんに重ねて棒状にし、手で押して山の稜線(りょうせん)を描く「山道(やまみち)」。春と秋、同じ銘で色を変える京菓子の定番も、末富の手にかかれば目にも楽しい。「棹薯蕷」とともに2代目主人の考案品で、2代目は画家・マティスに私淑(ししゅく)していたとか。自由な色と形が新鮮!
「秋の山道」、「春の山道」
「秋の山道」
赤や黄色に染まる遠山にも、足元に広がる紅葉のじゅうたんにも見える。口どけのいいこなし生地も美味。
「春の山道」
春を告げる、よもぎの爽やかな香り。よもぎ入りの生地の静かな緑と淡い桜色は春霞をまとったかのよう。
初物を口にする喜びが丸く長く続きます|末富の「棹薯蕷」
丹波産のつくね芋を主体にした「薯蕷(じょうよ)」は京菓子で最も品位が高く、末富はこの「薯蕷」が評判の店。棹(さお)薯蕷は薯蕷生地であんを包んだロール状の棹物で、あんの中に秋は栗、冬は白小豆、初春は大納言小豆といずれも初物が入ります。円という単純な形のなかに、季節の巡りと実りの喜びが込められています。
「春の雪」、「木枯らし」、「山土産」

「山土産」
主役は丹波から届いたばかりの新栗の蜜煮とこれも新物のつくね芋。山からの贈り物に感謝を込めて。
「木枯らし」
師走はとれたての蕎麦(そば)の実と備中白小豆(びっちゅうしろあずき)が大のごちそう。蕎麦風味の薯蕷がしみじみと美味。
「春の雪」
降り積もる雪の中で咲く梅に見立てた大納言小豆の蜜煮。愛らしさに笑みがこぼれる。
【この手から美味が生まれます】看板の薯蕷菓子は、手を使ってもっちりと仕上げる
ふんわりとふくれて、つややか。
この店が得意とする「薯蕷」の菓子は、「丹波産のその年のいちばんいいつくね芋を使うこと」と4代目主人・山口祥二さんは教えてくれましたが、そこからは秘密。
ポツリとつぶやくには、「芋は目の細かいおろし金ですることから」そして「芋の粘りを出すために加える薯蕷粉(米粉の一種)は、少しずつ手で混ぜ込む」そう。
「作業場にほとんど機械がないでしょう」という説明が、答えに近いのかも。
日々それなりの数の生菓子をつくる人気店でも、職人の手の勘が頼りです。
家訓である「夢と楽しさの世界」は、京菓子の魅力そのもの。
銘は古典的であるのに対して、色と形はモダンで斬新。菓子のもつ情景に広がりがあり、心も弾みます。

蒸したての薯蕷生地を素早くあんに巻きつけます。アツっ!


「和菓子に合うコーヒーの味もあるんですよ」

●末富(すえとみ)
住所:京都府京都市下京区松原通室町東入ル
電話:075-351-0808
営業時間:9時~17時
休み:日曜・祝日
公式サイト:https://www.kyoto-suetomi.com/
※価格は税込、2026年9月現在のものです。
※この特集でご紹介した菓子のうち、特に明記のないものは通年販売になります。

