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2026.11.03

京都・末富の「こなし」「棹薯蕷」に宿る、職人わざとマティス愛!【京の和菓子帖2026】

「京菓子」には、四季の風景、花鳥風月や京の風俗が織り込まれ、そこにゆかしい菓銘がつきます。「京菓子」を知ることは、京の文化を知ること。【京の和菓子帖2026】特集で、高名な銘菓とそれを生み出す職人わざを見せていただいた4軒の名店のうち、今回は「こなし」と「棹薯蕷(さおじょうよ)」の味わいと姿の美しさに定評のある「末富」にうかがいました。

マティスを好んだ2代目主人・竹次郎が生んだ色と形|末富のこなし「山道」

「こなし(こしあんに薄力粉などを混ぜて蒸し、練り上げた生地)」をあんに重ねて棒状にし、手で押して山の稜線(りょうせん)を描く「山道(やまみち)」。春と秋、同じ銘で色を変える京菓子の定番も、末富の手にかかれば目にも楽しい。「棹薯蕷」とともに2代目主人の考案品で、2代目は画家・マティスに私淑(ししゅく)していたとか。自由な色と形が新鮮!

「秋の山道」、「春の山道」

上:「秋の山道」は10月下旬から11月半ばごろまでの販売。下:「春の山道」は4月上旬から4月末ぐらいまでの販売。各550円。要予約で1本(約10個)5,400円も販売。

「秋の山道」 
赤や黄色に染まる遠山にも、足元に広がる紅葉のじゅうたんにも見える。口どけのいいこなし生地も美味。
「春の山道」
春を告げる、よもぎの爽やかな香り。よもぎ入りの生地の静かな緑と淡い桜色は春霞をまとったかのよう。

初物を口にする喜びが丸く長く続きます|末富の「棹薯蕷」

丹波産のつくね芋を主体にした「薯蕷(じょうよ)」は京菓子で最も品位が高く、末富はこの「薯蕷」が評判の店。棹(さお)薯蕷は薯蕷生地であんを包んだロール状の棹物で、あんの中に秋は栗、冬は白小豆、初春は大納言小豆といずれも初物が入ります。円という単純な形のなかに、季節の巡りと実りの喜びが込められています。

「春の雪」、「木枯らし」、「山土産」

右:「山土産(やまづと)」734円は9月下旬の販売。上:「木枯らし」648円は12月の販売。下:「春の雪」648円は2月ごろからの販売。販売期間は約1か月間。要予約で1本(約10個)も販売。

「山土産」 
主役は丹波から届いたばかりの新栗の蜜煮とこれも新物のつくね芋。山からの贈り物に感謝を込めて。
「木枯らし」
師走はとれたての蕎麦(そば)の実と備中白小豆(びっちゅうしろあずき)が大のごちそう。蕎麦風味の薯蕷がしみじみと美味。
「春の雪」
降り積もる雪の中で咲く梅に見立てた大納言小豆の蜜煮。愛らしさに笑みがこぼれる。

【この手から美味が生まれます】看板の薯蕷菓子は、手を使ってもっちりと仕上げる

ふんわりとふくれて、つややか。
この店が得意とする「薯蕷」の菓子は、「丹波産のその年のいちばんいいつくね芋を使うこと」と4代目主人・山口祥二さんは教えてくれましたが、そこからは秘密。

ポツリとつぶやくには、「芋は目の細かいおろし金ですることから」そして「芋の粘りを出すために加える薯蕷粉(米粉の一種)は、少しずつ手で混ぜ込む」そう。
「作業場にほとんど機械がないでしょう」という説明が、答えに近いのかも。
日々それなりの数の生菓子をつくる人気店でも、職人の手の勘が頼りです。

家訓である「夢と楽しさの世界」は、京菓子の魅力そのもの。
銘は古典的であるのに対して、色と形はモダンで斬新。菓子のもつ情景に広がりがあり、心も弾みます。

棹薯蕷の生地を蒸す。2代目主人・山口竹次郎考案の棹薯蕷は、長く円満を祈る婚礼菓子としても知られる。

蒸したての薯蕷生地を素早くあんに巻きつけます。アツっ!

棹薯蕷「山土産」の製作。薯蕷の皮が温かいうちにあんを芯にして巻き、なじませる。熟練の職人は当然ながら1回で巻く(撮影のために手袋を外しています)。

左/店頭では4代目主人が吟味したコーヒーも販売。時代が求める菓子提案にも積極的。右/戦後、洋画家・池田遙邨(いけだようそん)と“末富ブルー”の包み紙を生み出した2代目に捧げる「竹次郎の缶」5,400円。包み紙の図柄を模したふやきせんべいと打ち物が入る。

「和菓子に合うコーヒーの味もあるんですよ」

4代目主人・山口祥二さん。

●末富(すえとみ)

住所:京都府京都市下京区松原通室町東入ル
電話:075-351-0808 
営業時間:9時~17時
休み:日曜・祝日
公式サイト:https://www.kyoto-suetomi.com/

※本記事は雑誌『和樂(2026年10・11月号)』の転載です。
※価格は税込、2026年9月現在のものです。
※この特集でご紹介した菓子のうち、特に明記のないものは通年販売になります。
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和樂web編集部


撮影/伊藤 信 構成/藤田 優、古里典子(和樂)
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