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2026.11.06

京都・塩芳軒「黒糖きんとん」が別格といわれる理由!極上のくちどけを生む職人わざ。【京の和菓子帖2026】

「京菓子」には、四季の風景、花鳥風月や京の風俗が織り込まれ、そこにゆかしい菓銘がつきます。「京菓子」を知ることは、京の文化を知ること。高名な銘菓とそれを生み出す職人わざを見せていただいた名店4軒のうち、今回ご紹介するのは、品質を最重要視する「塩芳軒」の黒糖風味の「きんとん」。別格と称されるその美味の秘密をうかがうと、京都の菓子職人の矜持が感じられました。

黒糖きんとんのおいしさに定評あり!
塩芳軒のきんとん「大島」

「大島(おおしま)」とは黒糖風味のあんを指し、産地のひとつである奄美大島に由来。こくのある甘みが冬のごちそうとされていますが、塩芳軒では好評を得て夏季以外は大島のきんとんを取りそろえるように。だからこそ、季節で装いと銘が替わるのを追いかける楽しみも。黒一色を自在に操る5代目主人のセンスが光ります。

「初霜」、「夜桜」、「大島」

右上:「大島」は夏季を除き通年販売中。左下:「初霜」に替わるのは10月末ぐらいから11月にかけて。中:「夜桜」は3月から4月頭ぐらいまで。生菓子1個480円~。

「大島」
黒糖風味のそぼろあんの中は白あん。菓子切りを入れたときに目に映る黒と白のコントラストもお楽しみ。
「夜桜」
大島のあんを夜に見立てると桜に浮かれる春の夜の情景が立ち上る。ごく細かな桜色のあんが奥ゆかしい。
「初霜」
霜に見立てたのは「氷餅(こおりもち)」。さらに季節が進めば、みじん粉を散らして雪景色も生まれます。

【この手から美味が生まれます】
手をかけすぎないのが生菓子のおいしさ。きんとんもしかり

あん玉にあんのそぼろをつけたきんとんは、今は “映える和菓子”として人気。
ところが5代目主人・高家啓太(たかやけいた)さんは「きんとんは極力、手を加えない。シンプルな表現が一番」と考えます。
「きんとんは空気を抱かせる」のがコツで、籐(とう)製の「とおし」でできたざっくりしたそぼろを、“編むように”手でまとわせます。
この立体感があってこそ、「大島」の無彩色の堂々たる佇まいが際立ちます。

この店の黒糖風味のきんとんが別格と称される理由は、黒糖の風味づけ以前の段階で、あんの製造法にあるよう。
「ほかの店と比べると、その倍は目の細かなとおしを使います。そのため口の中で味の広がりが違うのでは」。
茶の湯の聖地・西陣で、一目置かれる店ならではの答えがありました。

きんとんのそぼろは手のひらの最初のひと押しが肝心なんです

そぼろあんの硬さはあんの炊き方、太さはとおしの選びで決まるが、口どけはそぼろの長さにあり! あんを押し出す際の手の力に集中する。

そぼろあんを芯のあん玉につける回数も、多くて5回。ふわっと空気を含ませた箸の運びは迷いがない。

左/明治中期の創業時から茶席菓子を専門に続いてきた店。和三盆糖100%だけを使った打ち物菓子もこの店が最初。右/生菓子は常時8種ほど店頭に並ぶ。1個480円~。「菓子の景色に流れる時間まで感じてもらいたい」との思いで銘をつける。

「和菓子には銘があるのがいいですね」

5代目主人・高家啓太さん。

●塩芳軒(しおよしけん)

住所:京都府京都市上京区黒門通中立売上ル飛弾殿町180
電話:075-441-0803 
営業時間:9時~17時30分
休み:日曜・祝日・月1回水曜(不定)
公式サイト:https://www.kyogashi.com/
※高家啓太さんの【高】は「はしごだか」が正式表記です。

※本記事は雑誌『和樂(2026年10・11月号)』の転載です。
※価格は税込、2026年9月現在のものです。
※この特集でご紹介した菓子のうち、特に明記のないものは通年販売になります。
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和樂web編集部


撮影/伊藤 信 構成/藤田 優、古里典子(和樂) 
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